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O plus E 2022年3・4月号掲載
 
 
アダム&アダム』
(Netflix)
      (C)2022 Netflix
 
  オフィシャルサイト [日本語]    
  [3月11日よりNetflixにて独占配信中]   2022年3月11日 Netflix映像配信を視聴
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)  
   
  高級感はないが,ネット配信で手軽に楽しめる軽快作  
  本号では欲張って,もう1本紹介しておこう。Netflixオリジナル作品のSFアクション映画で,別項の『 THE BATMAN―ザ・バットマン―』や『私ときどきレッサーパンダ』と同様,既に3月11日から公開(配信)されている。即ち,本稿を目にする読者が,いつでも何度でも本編を眺められるので,それを前提に当欄の視点で紹介しよう。
 監督は『ナイト ミュージアム』シリーズのショーン・レヴィ,主演はライアン・レイノルズとくると,これはそっくりヒット作『フリー・ガイ』(21年Web専用#4)のコンビである。といっても,『フリー・ガイ』の続編ではなく,ましてや『デッドプール』シリーズの1作でもない。このコンビ自体も,『フリー・ガイ』のヒットを受けて企画された訳ではなく,もっと以前から計画されていなくては,この時期の公開にはならない。
『フリー・ガイ』は「モブキャラ」と呼ばれる目立たない存在を表に出したゲーム感覚のヒーロー映画であった。本作にはゲーム要素はなく,SFアクションコメディに分類できる。ただし,スーパーヒーローのような超能力はなく,宇宙空間を旅するタイプのSFでもない。現在の世界を中心に,タイムトラベルで未来人と現代人が交錯するタイプのSF映画である。
 原題は『The Adam Project』だが,邦題が『アダム&アダム』で,近未来の2050年から2022年にやって来た戦闘機パイロットのアダムが,12歳の少年アダム(自分自身)と現代社会で出会い,2人で協力して未来を救う重大任務に挑むという筋立てだ。このことは,予告編だけで十分読み取れる。
 注目は共演者だ。まずは途中から登場する恋人のローラで,その登場の仕方自体が物語の重要ポイントだ。演じるのは,ゾーイ・サルダナ。MCUの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで緑色の戦士ガモーラを演じ,そのままチームごと『アベンジャーズ』シリーズ最終2作品にも登場した。そして,その少し前には新生『スター・トレック』シリーズ3作で,エンタープライズ号の乗務員ウフーラを演じている。本作の「ローラ」が韻を含むような役名なのは,意図的だろう。
 もう1人は,アダムの父親の時間旅行技術を発明した科学者のルイスだ。2022年には既に死んでいるから,当然過去に戻って再会するしかない。演じるのは,マーク・ラファロ。言うまでもなく,「アベンジャーズ」のブルース・バナー=超人ハルク役であり,MCUには(カメオ出演も含め)計7作品に登場している。即ち,SF&ヒーロー映画に欠かせない2人を起用している。
 結論を先に言えば,ネット配信映画に相応しい,軽快なSF映画だった。『THE BATMAN…』のような映画館で気合いを入れて観る重々しいヒーロー映画ではなく,気楽にお気に入りシーンを何度でも反復視聴できる「カウチポテト映画」である。SF映画史に残る訳でなく,映画祭とも無縁だが,そうと割り切った娯楽映画だ。
 以下,当欄の視点からの論評と感想である。
 ■ 冒頭は2050年の世界で,戦闘機の乗った主人公アダム(写真1)が円筒形のタイムトンネルに突入するシーン(写真2)で始まり,2018年に行くつもりが,2022年に不時着する。負傷した彼が自宅に戻り,12歳の自分自身とのやりとりが絶品だ。タイムトラベルものの楽しさを満喫させてくれる。「『ターミネーター2』は見ていないのか?」とか,「マルチバースなんて,映画の見過ぎだ」なるセリフに笑ってしまう。前半でVFXは殆ど登場せず,冒頭シーケンス以外は,2人がボードに乗って空中浮揚するシーン(写真3)くらいだ。
 
 
 
 
 
写真1 主人公は未来世界の戦闘機パイロット
 
 
 
 
 
写真2 円筒形のタイムトンネルに突入して過去に
 
 
 
 
 
 
 

写真3 2人のアダムはボードに乗って空中浮揚し,待機していた機内に向かう

 
 
  ■ 中盤の見どころは,まずローラが参加しての敵との戦いだ。主人公が手にする「マグシル」なる武器は,誰がどう見ても「ライトセーバー」だ(写真4)。終盤のバトルでは,グリップ部から両側に光刃が出る,長さ2倍のタイプが登場する(写真5)。即ち,『スター・ウォーズ EP1』(99)でダース・モールが使っていたダブル=ブレード型のパロディだが,見事なファンサービスだ。中盤の戦いは,空中でのドッグファイトへと続く(写真6)。戦闘機のデザインや機能で特筆すべきものはないが,結構恰好いい。しっかりとCG/VFXを駆使して描かれている。
 
 
 
 
写真4 マグシルとやらは,誰が見てもライトセーバー
 
 
 
 
 
写真5 右は長さ2倍のダブル=ブレード・タイプ
 
 
 
 
 
 
 

写真6 2050年から追ってきた敵との空中チェイスが始まる

 
 
  ■ 2018年にタイムワープしてからの後半では,父ルイスと対面し,彼が開発した「磁性粒子加速器」とそのデータが入ったディスクを巡る戦いとなる。それらを収めた実験施設はかなり大きいが,当然,実物セットをVFXで増強したものだろう(写真7)。そこで繰り広げられるラストバトルは,まずまずの出来映えだが,長過ぎないのがいい。この施設内での一連の場面で注目すべきは,2050年からアダムを追ってきた敵のマヤの若き日の姿だ。キャサリン・キーナーが演じているが,2018年の彼女の顔は特殊メイクではなく,CG/VFXの産物かと思われる。本作のCG/VFXの主担当はScanline VFXで,他にはDNEG, Lola VFX, Digital Domain等が参加し,プレビズはProof社が担当している。ほぼ『フリー・ガイ』と同じ陣容である。
 
 
 
 
 
写真7 磁性粒子加速器が置かれた父ルイスの実験施設
(C)2022 Netflix
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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