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O plus E誌 2015年3月号掲載
 
 
ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2014 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月20日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2015年2月6日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  少し淋しく,そして楽しい,娯楽度全開の完結編  
  シリーズ3作目で,完結編である。米国NY市の自然史博物館の夜間警備員が主人公で,夜になると展示物が動き出すという楽しい設定がウリである。勿論CG/VFXは満載だから,これが最終章とは淋しい限りだ。2作目では,ワシントンD.C.のスミソニアン博物館が舞台であったから,本作はどこに行くのかが楽しみだった。
 米国内の小粒なミュージアムでは完結編に相応しくないので,海外に出てパワーアップするに違いない。ルーブルやヴァチカンは美術館が主なので,博物館となるとロンドンの大英博物館か台湾の故宮博物院でないと格が合わない。前作の評(09年8月号)で既に,「次作はどうする? 海を渡り,大英博物館にでも行くしかないか」と書いているが,大当たりで,その通りになった。
 単に舞台をロンドンに移すのではなく,しっかりと自然史博物館とのリンクがつけられている。本作では,展示物に命を吹き込むエジプト王の黄金の石板に異変が生じ,魔法のパワーが消えかけている。それでは大事な仲間たちが動けなくなる一大事だが,秘密を解く鍵が大英博物館にあることを突き止め,主要登場人物たちがロンドンに乗り込むという設定である(展示物が英国に出向いている間,展示室はどうなっていたのだろう?)。
 クリス・コロンバス製作,ショーン・レヴィ監督,主演のラリー役ベン・スティラーのトリオは不動だ。B・スティラーにとっては,最大の当たり役だろう。自ら製作・監督した『LIFE! 』(14年3月号)の生真面目な演技よりも,明らかに本シリーズの方が乗っている。そして,お馴染みの展示物キャラたち(米国大統領,ガンマン,先住民の少女,ローマ皇帝,エジプト王,騎馬遊牧民の王)も健在だ。新登場組では,父ファラオ役のベン・キングズレー,円卓の騎士役でイケメン男優のダン・スティーヴンスらが加わっている。
 何よりも気になったのは,セオドア・“テディ”・ルーズベルト大統領役のロビン・ウィリアムズだ(写真1)。昨年8月にこの世を去り,これが遺作である。何枚かのスチル写真を観ると,無表情で生気のない顔であった。元々が展示品の蝋人形という設定だが,そのせいだけなのか? 実際の出演はごく一部で,残りはCGで描き足したためかとも思ったが,登場場面も多く,すべて本人が演じ切ったようだ。それでも,全展示物が命を失う覚悟を語る下りで,胸にじんとくるものがあった。ただし,そのままの結末では収まらず,その後にある楽しいオマケが本シリーズの面目躍如たるところだ。
 
 
 
 
 
写真1 元々が蝋人形の大統領役で,フル出演(右)
 
 
  以下,当欄の視点からの見どころである。
 ■ CG/VFXの主担当は,前2作のRhythm & Huesから,英国のMPCに変わっている。副担当は米国Digital Domain社で,Method Studios, Cinesite等も参加している。前作では,多数の展示物をCG化して登場させ,やりたい放題で収拾がつかない感があった。その反省からか,見せ場となるシーンが整理され,そこに注力されていることに好感が持てる。まずは,自然史博物館でプラネタリウム完成を祝っての夜間パーティの光景だ。空間ホログラムを想定したビジュアルが素晴らしい(写真2)。この会場に,命を得たTレックス,マンモス,ダチョウ等が CGで描き込まれている。そのバランスが絶妙だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 空間ホログラム投影を想定しての新型プラネタリウム。好い出来だ。
 
 
  ■ 大英博物館では,恐竜トリケラトプスに追われるシーン(写真3)や,九頭の大蛇ソウリュウ(相柳)と戦う場面(写真4)が,CG/VFXの活躍の場である。黄金のガルーダ,トラファルガー広場のライオン(写真5),ポンペイ火山の爆発(写真6)等も印象に残るシーンだ。エッシャーのだまし絵に迷い込むなどは,アイディア賞ものである。
 
 
 
 
 
写真3 こちらはTレックスでなく,トリケラトプス
 
 
 
 
 
写真4 人面蛇身で九つの頭をもつ竜のソウリュウ
 
 
 
 
 
写真5 トラファルガー広場から動き出したライオン。三越の彫像もこれがモデルとか。
 
 
 
 
 
 
 
写真6 ミニチュアの2人が遭遇する火山爆発と溶岩も見ものの一つ
 
 
  ■ テディ・ルーズベルト大統領と並んで気になった存在は,ノドジロオマキザルのデクスターだ。前2作にも登場していたが,本作では出演場面が大幅に増えている。本物の猿だとしか見えない場面もあれば,どう考えてもCGで描くしかない姿も多々登場する(写真7)。十字懸垂する登場場面などは,その典型だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真7 小型猿のデクスターが大活躍。上はどう見ても本物だが,他はCGか? 実物か?
(C) 2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
 
 
  ■ 本当にこれで完結なのだろうか? 石板は大英博物館に残ったが,何らかの理由をつけ,これを世界各地に持ち出せば,いくらでも続編は作れる。R・ウィリアムズ亡き後,NY自然史博物館に拘る必要もない。じっくりアイディアを溜め込んで,続編を作って欲しい。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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