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O plus E誌 2019年1・2月号掲載
 
 
アクアマン』
(ワーナー・ブラザース映画 )
      (C) 2018 Warner Bros. Ent. TM & (C) DC Comics
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月8日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2019年1月9日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  水陸両用のヒーローだが,豪華な海中の描写に注目  
  同じく「マン」が付くが,ジャンルは全く違う。既にDCコミックスのオールスター映画『ジャスティス・リーグ』(17年12月号)に登場していたスーパーヒーローを単独主演で取り上げた作品である。目下,世界中で大ヒット中であることが漏れ聞こえて来ている。
 先にオールスター作品で顔見せをしておいて,後からじっくり個別に売り込む作戦は,『ワンダーウーマン』(17年9月号)と同様だ。マーベル・コミックも『ブラックパンサー』(18年Web専用#1)で同じ手口を使っている。知名度が低いヒーローの場合は,このやり方が最適なのだろう。
 順序がそうでなくても, 『マイティ・ソー』(11年7月号)『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11年10月号)『アントマン』(15年10月号)等々も,初の単独ヒーロー映画は出来が良かった。それだけ力が入っているとも言えるし,少々尺が長くなっても,背景や世界観から語り始め,超能力を得たスーパーヒーロー誕生を描く部分が充実していて,心地よい。
 前作で紹介されているように「アクアマン」ことアーサー・カリーは海底王国アトランティスの王であり,海中生物と意思疎通ができ,陸上ではスーパーヒーローとして活躍する(写真1)。本作はその前日譚で,彼が王位に就くまでの物語である。「ワンダーウーマン」は女性だけのアマゾン族の王女,「ソー」は神々の国アスガルドの皇子,「ブラックパンサー」はアフリカの小国ワカンダの国王であるから,やんごとなき身分の大安売りだ。単独でも超能力を発揮するが,類い稀なる危機に自国から援軍を呼び寄せるのに好都合な設定なのだろう。
 
 
 
 
 
写真1 アトランティスも王は海中生物を自在に操れる
 
 
  主演はジェイソン・モモアで,パートナーのメラを演じるアンバー・ハードと共に,勿論,前作からの続投である。監督はジェームズ・ワン。『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15年5月号)を成功させたように,もはや得意のホラー分野に留まらず,エンタメ大作なら何でもこなせる実力を備えている。
 アクアマンが水陸両用なのには理由がある。陸上人の父トム(テムエラ・モリソン)と海底人のアトランナ女王(ニコール・キッドマン)の間に生まれた混血児だからだ。もう50歳を超えているというのに,N・キッドマンは驚くほど美しい。一方,それにしては冴えない灯台守の父だと思ったが,20年間毎朝桟橋で妻を待ち続けたシーンのために選んだ男優のようだ。
 敵役はアーサーの異父弟のオーム王で,監督が『死霊館』シリーズで起用するパトリック・ウィルソンが演じている。アーサーとオームの確執は,『マイティ・ソー』のソーとロキの関係を思い出す。我が国の中大兄皇子(天智天皇)と大海人皇子(天武天皇)を初め,洋の東西を問わず,皇子間の後継争いは格好の物語ネタである。
 以下,充実したCG/VFXに関するコメントである。
 ■ 映画全体を「海底バトル・エンターテイメント」と呼び,「美しい海底と超絶アクション」をウリにするだけのことはある。看板に偽りはなく,全編の8割近くが海中/海底のシーンだった。そのほぼすべてが「Dry for wet」なる技法で描かれている。水中で演技し,それを水中カメラで撮影するのではなく,通常のセットで撮影した映像に,VFX技術で水中に見せる加工を施すやり方である。この5年間で飛躍的に進歩し,水の透過度や揺らぎ,水上から差す光線,水中エレメントの動き等を調整できるパワフルなツールが開発されている。写真2はその産物で,この種のシーンが続々と登場する。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 海中でのこんなCGシーンはまだ序の口
 
 
   ■ ツールを使えば海中に見せるのは難しくないが,美術班にかなりの人数が投入され,美しい光景をデザインしている(写真3)。魚人王国,甲殻王国など,7つもの海底王国の外観を描き分けた上に,各王国内の個性的なクリーチャーや武器等も創り出した(写真4)。CG/VFXの主担当は老舗ILMだが,膨大な作業のため,Scanline VFX, MPC, Virtuos, Method Studios, Digital Domain, Rodeo FX, Prime Focus等,多数社が参加している。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 海底王国の光景が美しい。光線の描写も絶品。
 
 
 
 
 
 
 
写真4 7つ王国の描き分けに注目。何しろ凄いVFX作業量だ。
 
 
   ■ バトルシーンは,3回に分かれていた。まずは海底のステージでの,アーサーとオームの1対1の戦いだ(写真5)。これは,まだ小手調べの競技レベルだった。2つ目は,海辺の町での攻防(写真6)で,このシーケンスはカメラワークがユニークだ。こうなると,終盤のラストバトルは当然海中がメインとなり,多数の王国が入り乱れることが予想できる。その予想に違わず,ラスト20分,クライマックスの海中バトルをたっぷり堪能できる。この分量にはもう満腹で,満足だ。  
 
 
 
 
写真5 第1ラウンドは,水中ステージでの2人の対決
 
 
 
 
 
写真6 海辺の町での攻防はカメラワークが見もの
(C) 2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM & (C) DC Comics
 
    
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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