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O plus E誌 2015年10月号掲載
 
 
アントマン』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) Marvel 2015
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月19日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2015年8月4日&27日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新ヒーロー映画は,ミニチュア目線の映像が魅力的  
  また魅力的なアメコミ・ヒーロー映画が登場した。またまたマーベル・スタジオズ製作,ディズニー配給網経由で公開されるSF映画である。過去数年間,このブランドでの一連のVFX多用実写作品には当たり外れはなく,いずれも極めて満足度が高いことは,もう何度も述べた。後年,娯楽映画に一時代を築いたと称されることだろう。何しろ,ネタはマーベル・コミックスの中にいくらでもある。企画の容易さは,週刊少年ジャンプ連載の人気コミックを実写映画化する邦画界も同様だが,作品群のクオリティ,国際競争力がまるで違う。
 本作の主人公「アントマン」は,体長1.5cmの「蟻男」だが,本作を観るまで知らなかった。ごく一部の熱烈マーベル・ファンなら知っているのだろうが,一般的日本人には馴染みのないキャラである。元々さほどの有名キャラではないらしく,映画としても最初から『アベンジャーズ』シリーズへの合流が予定されている。そうでありながら,この初登場は魅力的で,ワクワクするSFアクション・コメディに仕上がっていた。
 発端は1989年,天才科学者のハンク・ピム博士(マイケル・ダグラス)は,彼自身が発見した重要な「ピム粒子」の実用化計画で,愛弟子のダレン・クロス(コリー・ストール)らと対立し,自らが創設したピム・テック社を去るところから物語は始まる。そして現在,そのピム粒子を使った「アントマン」に変身する候補に選ばれたのは,何とコソ泥のスコット・ラング(ポール・ラッド)だった。てっきり,『スパイダーマン』のようにDNAの突然変異か何かで,身体異変が生じ,蟻のサイズに変身できる能力が備わるのかと思ったのだが,見事に違っていた。超能力者になれる訳ではなかった。博士が開発したスーツを着用して初めて,蟻のサイズに変身でき,跳んだり撥ねたりの運動能力も強化される。『アイアンマン』に似た想定だが,空を自在に飛べたり,宇宙まで飛び出せるほどのパワーはない。着用できるスーツもたった1着だけだ。
 監督・脚本は,当初エドガー・ライトが予定されていたが,マーベル社と意見が合わずに降板し,『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(09年4月号)のペイトン・リードが急遽選ばれた。上記の他の出演者では,ヒロインはピム博士の娘ホープ・ヴァン・ダインで,エヴァンジェリン・リリーが配されている。『ホビット』シリーズでは,エルフのタウリエル役を演じてブレイクしたが,本作ではクールなリケ女役で,別の魅力を見せている。スーパーヒーロー映画では,主演の男女にスポットライトが当たるのが普通だが,本作ではピム博士役のM・ダグラスが実に渋く,好い味を出していた。
 以下は,当欄の視点からの見どころである。
 ■ ミニサイズのキャラたちが活躍する映画としては,『スモール・ソルジャーズ』(00年1月号)や『ミクロキッズ』(89)を思い出す。アントマンのスーツ姿は,前者のソルジャー達の印象そのものだ。ただし,運動能力が全く違う。変身して最初のワクワク感は,バスタブのシーンで得られる(写真1)。よく出来たシーケンスだ。縮小されて,草むらを疾走するシーン(写真2)は,後者の場面を思い出す。当然,同じディズニーのこの人気作品を意識して作られている。上記のシーンは,本作ではほぼフルCGでの描画だろうが,かつてのミニチュア撮影での接写レンズの味を出している。ミニチュア目線でのカメラ移動を多用しているのも,ワクワク感を倍加させてくれる。試写会は2D上映しかなかったが,本作は是非3Dで観て欲しい作品だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 バスタブのシーケンスで,大きさを実感する
 
 
 
 
 
 
 
写真2 接写レンズを想定した画作りで魅了する
 
 
  ■ アントマンの相棒はクロオオアリの「アントニー」で,彼の背に乗ることで,空中移動できるようになる(写真3)。このアントニーの造形も,飛翔シーンも上出来である。一方,ビラン(悪役)は,ダレン・クロスが変身したイエロー・ジャケットである(写真4)。丁度,『スパイダーマン』における「グリーン・ゴブリン」に相当する役である。こちらは敵役として,あまりにステレオタイプ過ぎて,魅力がなかった。
 
 
 
 
 
写真3 相棒アントニーに乗り,空を自由に飛翔する
 
 
 
 
 
写真4 これが敵役のイエロー・ジャケット
 
 
  ■ 縮小後のアントマンは,蟻たちと会話でき,彼らを率いて敵と戦うことができる(写真5)。様々な蟻の造形にも時間とコストをかけ,丁寧に作られている。物語としては,金庫破りのシーンが楽しい。ピム・テック社の実験設備等もしっかりデザインされていて,『アイアンマン』のスターク工房に対応させた設定だ。終盤では,アントマンが子供部屋で機関車トーマスに追われるシーンが出色で,大いに笑える。ミニチュア目線と俯瞰視点の使い分けが上手く,その切り替えも職人技だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真5 クロオオアリ,弾丸アリ,火アリ…,大小様々なアリを率いて戦うことができる
(C) Marvel 2015
 
 
  ■ CG/VFXの主担当はDouble Negativeで,同社の実力が遺憾なく発揮されている。次項の『ダイバージェントNEO』に参加している数社との協働態勢もしっかりしている。驚いたのは,あの老舗のILMが4番目にクレジットされていたことだ。エンドロールに登場するポリゴンベースの映像も洒落ている。そこで流れるベンチャーズ風のエレキサウンド(Christophe Beck作で,曲名は「Tales To Astonish!」)にも痺れた。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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