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O plus E誌 2019年1・2月号掲載
 
 
メリー・ポピンズ リターンズ』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2018 Disney Enterprises, Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [2月1日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2018年12月6日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  E・ブラント演じる魔法使いは,演技も歌も合格点  
  半世紀以上経って,スーパーナニーの魔法使いが帰って来た。前作『メリー・ポピンズ』(64)は,アカデミー賞13部門にノミネート,5部門(主演女優賞,編集賞,作曲賞,主題歌賞,視覚効果賞)受賞の極上ミュージカルだった。舞台ミュージカルの人気女優だったジュリー・アンドリュースは,映画初出演で数々の主演女優賞に輝き,翌年の『サウンド・オブ・ミュージック』(65)も大ヒットして,一躍大スターの仲間入りを果たした。
 さらに言えば,原作は女流作家パメラ・L・トラヴァース作の英国の児童文学で,1934年から1988年までかけて出版されている。映画化権を熱望するウォルト・ディズニーに対して中々首を縦に振らず,頑固で偏屈な原作者であった裏話が『ウォルト・ディズニーの約束』(14年4月号)で描かれていた。これは記憶に新しい。
 本作はリメイクではなく,前作の20年後を描いた続編であり,まさに主人公のメリー・ポピンズが雲の上からリターンして来る(写真1)。原作シリーズは,前作の映画化後も続いていたので,その続編3冊分のエピソードも本作に盛り込まれているようだ。
 
 
 
 
 
写真1 凧に乗って戻ってきたメリー・ポピンズ
 
 
  20年後の1930年代は,大恐慌直後の暗い時代だ(写真2)。少年だったバンクス家の長男マイケルは既に30代で,3人の子供がいる。ロンドンでビジネスマンになっていることも含め,この辺りの設定は『プーと大人になった僕』(18年9・10月号)に酷似している。時代が10年違うだけだ。妻に先立たれたシングル・ファーザーで,経済難から,自宅も人手に渡ろうとしている。そこに懐かしのメリー・ポピンズが空から舞い降りてきて,バンクス家の窮状を救うという筋立てである。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 大恐慌時代の暗いロンドンを見事に再現
 
 
   監督は,『シカゴ』(03年4月号) のロブ・マーシャル。なるほど,ミュージカル映画にはぴったりの起用だ。問題は主演女優で,余りにJ・アンドリュースのイメージが強いだけに,誰がなっても違和感があると予想されたが,選ばれたのはエミリー・ブラント。最近,戦うタフな女性の役柄が多いので余計に心配したが,全くの杞憂だった。見事に新しいメリー・ポピンズになり切っている。前作より少し濃い色のユニオンジャック・カラーの衣装がよく似合う。演技も歌も合格点だ。
 マイケル役は007シリーズでQ役に抜擢されたベン・ウィショー,姉のジェーン役にはエミリー・モーティマーが配されている。前作でのメリー相棒のバートは登場しないが,その助手だったジャックが街頭点灯夫として登場し,米国のミュージカル・スター,リン=マニュエル・ミランダが演じている。作曲家でラッパーでもある彼の起用は大正解だ。J・アンドリュースのカメオ出演を期待したが,これは当人が固辞したようだ。その一方で,贅沢にも,従姉の魔女役でメリル・ストリープ,銀行家の悪役でコリン・ファースといった大物俳優が顔を見せる。さらに,91歳(撮影当時)の老女優アンジェラ・ランズベリーが風船売りで登場し,歌まで披露する。
 以下,当欄の視点での論評と感想である。
 ■ まず1930年代のロンドンが暗く陰鬱な時代を表すトーンで描かれる。とりわけ夜のシーンの描写が幻惑的で素晴らしい。当時のクルマや衣装はほぼ完璧に再現されている。ロンドン市内の随所でロケしたようだが,それをどの程度VFX加工しているのか,全く見分けられない。英国のVFXスタジオにとっては容易い仕事だ。
 ■ 傘と鞄がシンボルのメリーは,今回は凧に乗って降りてくる。バンクス家に着くと,そこからはお得意の魔法の数々だ。バスタブにイルカを登場させ(写真3),底から水中へと移動する(写真4)など,ワクワクさせてくれる。勿論,前作時には実現できなかったCG/VFXの産物である。その一方で,壺を回転させると次々と出て来る花は2Dアニメ調の描写であり(写真5),そこから2Dワールドへと移行する(写真6)。前作の特殊効果を意識させる意図的な演出で,嬉しいお遊びだ。
 
 
 
 
 
写真3 メリー・ポピンズの魔法でバスタブからイルカが登場
 
 
 
 
 
写真4 バスタブの底を抜けると海の中。子供たちも大喜び。
 
 
 
 
 
写真5 壺から出て鳥のように舞う花は2Dアニメ調で表現
 
 
 
 
 
写真6 馬も馬車もいかにもディズニー・アニメ風のタッチ
 
 
   ■ 大恐慌の時代であるが,途中からリッチな気分にさせてくれる。美術セットが素晴らしい。ジェーンの衣装はカラフルで,マイケルのベストも可愛い。一件落着の後,皆が風船につかまって空を舞うシーンが印象的で,幸せを感じるシーンだ。それを確認し,メリー・ポピンズはいつもの姿で空へと帰って行く(写真7)  
 
 
 
 
写真7 満開の桜の中を空に帰って行くラストシーン
(C) 2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
 
    
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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