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O plus E誌 2011年10月号掲載
 
 
 
 
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
(パラマウント映画)
 
 
      (C) 2010 MVLFFLLC. TM & (C) 2010 Marvel Entertainment, LLC and its subsidiaries.

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [10月14日より丸の内ルーブル他全国ロードショー公開予定]   2011年9月8日 GAGA試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  アメコミ最初のヒーローは,超人過ぎず好感がもてる  
  今月は話題作がどっさりのため,ページオーバーしてしまったが,もう1本行こう。その残る1本にも候補は4作品もあった。匂いまで登場させるという4Dの『スパイキッズ4D』,Cinefex誌ご推奨の『プリースト』に,メイン欄でもう少し邦画も取り上げるべく『はやぶさ/HAYABUSA』も候補だったが,CG/VFXの質や映画としての完成度を考えると,このアメコミ・ヒーロー映画を登場させることになってしまった。
 またアメコミものかと馬鹿にするなかれ。“キャプテン・アメリカ”は,マーベル・コミックが誇る「世界最初のヒーロー」であり,「“スパイダーマン”,“X-MEN”,“アイアンマン”,“マイティ・ソー”。すべてのヒーローは,“キャプテン・アメリカ”から始まった」そうである。実際,米国の興行成績では,本年公開の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』『マイティ・ソー』(ともに11年7月号) を上回っている。ただし,日本での知名度は今イチで,筆者自身も名前を耳にした程度で,どんなキャラなのか,外見も能力も知らなかった。コミックでのルックスを見ると,星条旗をモチーフにしたコスチュームである(写真1)。名前とも併せて,アメリカそのものの出で立ちで,五輪入場式の選手団だって,ここまではやらないだろうと感じるほどだ。
 
   
 
写真1 いかにもアメリカらしいコスチュームの配色
 
   
  時代は第二次世界大戦下の1941年,アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツの欧州各地に侵攻し,勢力拡大を図っていた頃である。1人の愛国心の強い,虚弱体質の青年が,秘密の「スーパーソルジャー計画」に志願し,肉体改造実験により超人兵士に生まれ変わって,正義の戦いに臨むという設定だ。これは物語設定だけのことかと思ったら,実際のこのヒーローがコミックに登場したのが1941年3月のことであり,政治的利用され,国威掲揚,志願兵募集に利用されたらしい。さすがに戦後はそうした役割はなくなり,マーベル・コミックの原点たるヒーローとして,他のヒーローとも競演し,数々の作品に登場しているとのことだ。
 TVアニメとしては何度か登場し,実写映画は生誕50周年記念で1990年『キャプテン・アメリカ ?帝国の野望』が製作されたが,ビデオ販売に留まり,本格的な劇場用大作映画としては本作が最初とのことだ。
 監督は,『ミクロキッズ』(89)『遠い空の向こうに』(99)のジョー・ジョンストン。前作『ウルフマン』(10年4月号)は,VFXや特殊メイクの見どころは多かったが,作品評価としては芳しくなかった。その名誉挽回もあってか,本作は緊迫感溢れる快適なテンポで進行し,かつCG/VFX的にも見応えのある作品だった。
 最大のポイントは,内気でひ弱な青年スティーブ・ロジャースが,アースキン博士の秘密実験で肉体改造され,屈強なキャプテン・アメリカに生まれ変わる方法だ(写真2)。この主役に抜擢されたのは『ファンタスティック・フォー』シリーズのクリス・エヴァンス。軍服姿だとリチャード・ギアを思い出す柔和な顔だが,上半身裸だと結構逞しい。では,血清投与前の痩身の彼はというと,別の小柄な俳優が演じ,C・エヴァンスの顔を画像処理で細くして,首から上をすげ替えたそうだ。一方,敵役のシュミットは『マトリックス』シリーズのヒューゴ・ウィービングが演じ,怪人レッド・スカルへの変身は,長時間の特殊メイクを施した顔から鼻だけデジタル的に除去して達成されている(写真3)
 
   
 
 

写真2 見事な筋肉マンに変身。実は,右が本人で,CGで細い顔の左を作った。

   
 
 

写真3 ヒューゴ・ウィービングは連日3時間のメイクの上,デジタル技術で鼻を削った

   
   他にもVFX利用シーンは多々あるが,70年前の町並みや実験室内をレトロなタッチでリアルに描いているのが嬉しい(写真4)。主担当は英国VFX界の雄,Double Negative社で,昔の町の光景をデジタル技術で描くのはお手のものである。キャプテン・アメリカが超硬金属製のシールドを手にして闘うアクション・シーンがテンポ良く,星条旗模様の盾が実にカッコイイ。これは,身を守る際に手にする場合は実物だろうし,フリスビーのように投げつける場合は,当然CGのはずだ。それがどこで切り替わっているのかは全く判らなかった。  
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写真4 何ともレトロなタッチの実験室セットが嬉しい.火花は勿論CGで描き加えた。
(C) 2010 MVLFFLLC. TM & (C) 2010 Marvel Entertainment, LLC and its subsidiaries. All rights reserved.
 
   
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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