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O plus E誌 2015年5月号掲載
 
 
ワイルド・スピード SKY MISSION』
(ユニバーサル映画/ 東宝東和配給 )
      (C) 2014 Universal Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月17日よりTOHOシネマズ日本橋他全国ロードショー公開中]   2015年4月7日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  史上最大級のカー・アクション+涙のエンディング  
  当欄にとって,今年上半期の最大の注目作であり,完成が待ち遠しかった一作だ。第1作からずっと見守り続けてきたシリーズだが,驚いたのは,6作目『…EURO MISSION』(13年7月号)の後,主演の1人ポール・ウォーカーが2013年11月末に急逝してしまったことだ。それも,自動車事故死である。友人のポルシェ・カレラに同乗し,時速160kmで街路樹に激突し,爆発炎上したというから,映画のような劇的な最期だ。
 その結果,2014年7月公開予定だった7作目は見直しを余儀なくされた。ポールの弟2人(ケイレブとコーディ)を起用することや,収録済みの登場場面で辻褄が合うよう,台本を書き直すといった報道も見られた。
 監督は,3作目以降メガホンをとってきたジャスティン・リンから,ジェームズ・ワンに代わっている。『ソウ』シリーズや『死霊館』(13年11月号)等のホラーで名を成した豪州出身の監督だが,カー・アクションは未知数だった。それは全くの杞憂で,結論を先に言えば,340台の車と約200億円を投じた史上最大級のカー・アクション映画を見事に成功させている。
 主要登場人物は,ドム(ヴィン・ディーゼル),前作で復活した恋人のレティ(ミシェル・ロドリゲス)他,お馴染みの仲間達だが,強力な敵役として,弟を殺されたデッカード・ショウ役でジェイソン・ステイサムが新登場することは,前作の最後で予告済みである。
 さて,注目は,いかにブライアン(P・ウォーカー)の出番を終わらせるかである。途中で死なせるのか,何か理由をつけてミッションから離脱させるのか,それとも様々な細工を取り入れて,最後まで登場させるのか……。本作の宣伝やプレスシートを見ても,彼の遺作であることに触れていない。言論統制かと思えるほどの徹底ぶりだ。事故を知らない観客に,いつものようにチーム・メンバーとして活躍すると思わせるためなのか。若干のネタバレを許してもらうなら,クライマックスのバトルまでしっかり登場し続けると言っておこう。だとしても,それはCG/VFXでの加工なしに達成できなかったはずで,当欄の読者はそこに注意して観て頂きたい。
 ■ 大きく分けて3回,超弩級のカー・アクションがある。まず米捜査当局の依頼を受け,東欧アゼルバイジャンの山岳地帯を走る護送車に奇襲をかけるシーンで,米軍輸送機からオフロード仕様のクルマ5台を空中落下させる作戦だ。ここで「SKY MISSION」の意味が分かる。降下開始(写真1)から,空中での加速度がつく落下シーンはすべてCG表現だろうと思ったが,何と,本当に実車を空から落として撮影したという。地上近くでパラシュートが開き,無事着地した後のバトルも凄まじい(写真2)。どこまでが実車で,どこからがCGなのか,全く識別できない。年々カー・アクションは過激になり,新しい趣向が凝らされているが,その全てを上回る怒濤のアクションだ。このバトルの最後に,ブライアンが車中で戦うバスが制御を失い,横転し,崖の間際で停止する(写真3)。さすがにこちらはCG/VFXをフル活用したシーケンスだが,大きな見せ場である。
 
 
 
 
 
写真1 高度3千米から,本当にクルマを落下させた!
 
 
 
 
 
写真2 こちらはパラシュートでの着地シーン
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 崖際で横転した車両をつたっての脱出は,ジャンプして間一髪セーフ
 
 
  ■ 第2の見せ場は,UAEの首都アブダビでのカー・アクションだ。富豪のパーティーに潜入し,80階建ての高層ビルのペントハウスの金庫にある最高級車を奪い取る。その後が凄まじい。フロア内を高速疾走させ,ビル間をジャンプさせ,最後は地上まで落下させる(写真4)。さすがにこちらは実車の投下ではなく,CGだろう。本作のCG/VFXの主担当はWeta Digital,副担当はDigital Domainで,他にScanline VFX, Rodeo FX, MPC, Pixomondo, Lola VFX等も参加している。
 ■ ここまで熟視して来て,ブライアンの登場場面をどう細工しているのか,全く読み取れない。弟を起用といっても,ここまでそっくりな訳はない。収録済みの場面や過去の作品の映像を利用するため,脚本を書き換えたとしても,限界がある。恐らく弟2人をスタントに起用し,CGで描いた顔に,Facial Captureで取得した表情をつけ,P・ウォーカーらしく見せているのだろう(写真5)
 
 
 
 
 
写真4 高層ビルからの落下は,さすがに合成だろう
 
   
 
 
 
写真5 どれが本物で,どれがCGか,区別できるだろうか?(正解は,本ページの最後にあります) 
  (C) 2014 Universal Pictures
 
 
  ■ そして,デッカードとの最終決戦の場は,本シリーズの定番で,LAでのバトルだ。与えられたミッションはジュームズ・ボンドやイーサン・ハント並みに肥大化しても,カー・アクション映画の原点を大切にしているのが偉い。その条件下で,同じやるなら,徹底的にやらなきゃ損,損,とばかりに大アクションの連続で,ビルまで破壊してくれる。アゼルバイジャンでの攻防に勝るとも劣らない激しさの中,ドムとデッカードの肉弾ファイトも見応え十分だった。
 ■ そのすべてが終了した後,素晴らしいエンディングが待っていた。流れる曲の歌詞も意味ありげで,交わす言葉,山中で二手に分かれて行くクルマ……。観客一同,涙,涙で,これほど見事な終わり方は想像できなかった。それでこの後,本シリーズはどうなるのか? 恐らく,敵役であったデッカードが,ドムと意気投合した貴重な仲間として登場し続けると予想しておこう。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
 
  写真5の正解:左がCG合成したもので,他の2つは生前に撮影されたもの  
   
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