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O plus E 2018年Webページ専用記事#4
 
 
ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
(パラマウント映画/ 東和ピクチャーズ配給 )
      (C) 2018 Paramount Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月3日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2018年7月24日 TOHOシネマズなんば[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  シリーズ6作目も絶好調,娯楽大作の面目躍如  
  人気TV番組『スパイ大作戦』を映画化し,1996年に始まったシリーズも,これが6作目だ。3作目以降の公開間隔が4.5年,3.5年,3年と1作毎に縮まっているが,内容も充実の一途であるから大歓迎である。
 例によって,イーサン・ハント役のトム・クルーズが危険なスタントシーンをすべて自ら生身で演じるというのがウリだ。4作目『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(12年1月号) ではドバイの超高層ビルの外壁につかまり,5作目『…ローグ・ネイション』(15年9月号)では離陸中の軍用機に駆け上がり,時速400kmで飛行中の機体外部の扉にぶら下がった。本作では,高度7620mからスカイダイビングするらしい。加えて,飛行中のヘリに飛び乗り,自ら操縦して,かつてない派手なヘリ・チェイスを見せてくれるという。
 公開前も公開後も,雑誌上もネット上も,その情報で溢れている。もはや当欄で何を語ろうかと躊躇するほどだ。前作に引き続き,シリーズ最高傑作との呼び声が高い。前作で「筆者はそうは思わない。前作も秀作であったゆえ,同率首位だと評価しておきたい」と書いたが,今回も3作同率首位だとしておこう。アクションでは本作が最高だが,プロット,小道具,侵入シーンの緊迫感では前2作の方が上だからだ。アクション・シーンのバラエティでは,本シリーズだけでなく,これまでに観た実写映画の中で最高の出来映えだと評価しておこう(CGアニメでは,本作と同時期に公開中の 『インクレディブル・ファミリー』(18年7・8月号)が最高だ)。
 監督・脚本は,クリストファー・マッカリーが前作から続投している。即ち,高評価だった前作の充実度がそのまま移行していると考えて良い。ちなみに,本シリーズ第4作で初の実写作品のメガホンをとったのがブラッド・バード監督で,お得意のCGアニメに戻って作ったのが『インクレディブル・ファミリー』である。偶然にも,目下,両監督の最新作が本邦の劇場でしのぎを削っている訳だ。
 定番の「例によって,君もしくは君のメンバーが捕らえられ,或いは殺されても当局は一切関知しないから,そのつもりで」の秘密指令とお馴染みのテーマ曲で始まると,ワクワクしてくる。4作目からチームプレイが強調されていように,ベンジー(サイモン・ペッグ)とルーサー(ヴィング・レイムス)は本作にもしっかり登場するものの,前2作に出演したブラント ( ジェレミー・レナー)の姿が見えない。『ウインド・リバー』(2018年7・8月号)の主演や『アベンジャーズ』シリーズ次回作でスケジュールが合わなかったためだろう。
 その代わりに,前作でイーサンを翻弄したMI6の女性エージェントのイルサ(レベッカ・ファーガソン)が,事実上IMFチームの一員として活躍する。前作のラストで,CIA長官からIMF長官に転じることを宣言していたアラン・ハンリー(アレック・ボールドウィン)がしっかり理解ある上司として再登場する。他の重要な登場人物は,監視役のCIAエージェントのウォーカーで,現在のスーパーマン俳優のヘンリー・カヴィルが演じている。ずばり言って,スーパーマンよりも髭面のこちらの方が似合っている。
 イルサ以外のヒロイン達といえば,謎の女ホワイト・ウィドウ役のヴァネッサ・カービー。売り出し中の英国女優で,なかなかの美形だ。そして,驚きの再登場は第3作目『M:i:III』(06年7月号)に出演した元妻ジュリア(ミッシェル・モナハン)だ。イーサンと共にいると危険が迫るという理由で,死んだことにして2人は別れ,今は医師の新しい夫と暮しているという設定である。M・モナハンは,少し野暮に見えることがある女優だが,本作ではなかなか魅力的であり,R・ファーガソンにも似ている。しばし見分けが着かなかったが,2人が似ているのは,イーサンの好みが変わっていなかったということだろうか。
 さてさて,本稿の残りは,セールスポイントのアクション・シーンを順を追って振り返ることにしよう。
 ■ まずは,ヘイロージャンプ(高高度降下低高度開傘)と呼ばれるパラシュート降下シーンだ。トムはスカイダイビングの練習を始め,毎日10数回は飛んだという。シナリオ上さほど必要性はなく,映像もCG描写でいいじゃないかと思うのだが,7620mの高度から主演男優自身が飛んだという事実が大事なのだろう。本人が飛んだのは本当だとしても,5ヶ月もかけて設置したという風洞装置の画像(写真1)を見せられると,全部が本物か,一部はここで撮影し,合成したのではないかと思ってしまう。実態は分からないが,多分,降下中のカメラ撮影も含めたトレーニング用で,映画中の映像はすべて本物だろう。ただし,この降下シーンが堪能できるかと言えば,思ったよりも短かかった。それゆえに,余計に本物感が増す。
 
 
 
 
 
写真1 時速209キロの風が下から吹き出す風洞装置
 
 
  ■ 続いてパリ市内でのバイク疾走シーン。ヘルメットも着用せず,パリ市内を走りまわる(写真2)。素顔はさすがにトムも老けたな,もう50歳近いのかと思ったが,実年齢は56歳だった。それでこの生身のアクションは立派だ。凱旋門付近で走行車線を逆行するのは,どうやって撮ったのだろうかと思わせる。続いて,スポンサーのBMWの最新型車を使ってのカーチェイス・シーン。前半のバイク部分よりも,カーアクションとしてはこちらの方が良くできている。本人が運転しているとしても,他の車輌も全部本物なのか,一部はCGなのか? そうであっても不思議はないが,映像からだけでは区別はつかない。
 
 
 
 
 
写真2 ヘルメットなしでパリの街を疾走する。とても56歳には見えない。
 
 
  ■ 大きな話題はロンドン市中を駆け,ビルの屋上をつたうチェイスシーン。その途中で,ジャンプには成功したものの,この撮影でトム・クルーズが骨折したというからだ(写真3)。よくあるシーンと言えばそれまでだが,尺が長く,場面展開が目まぐるしく,スピード感がある。まだ走っているのか,50代のオッサンがバテないのかと思わせる(勿論,一気に走ったのではなく,複数カットを繋いであるに決まっているのだが)。テンポの良さの秘訣は,カメラワークの素晴らしさにある。しっかりプレビズして,事前にデザインしているからだろう。スピード感があるのは,一部コマ落としして,上映時の動きを早めているのかも知れない。たとえそうであっても,この一連のシーンが見応えあることに違いはない。
 
 
 
 
 
写真3 これが話題のジャンプシーン。
着地時に足首を骨折したがそのまま演技を続け,6週間後に復帰したという。
 
 
  ■ クライマックスは,ヘリでのバトル(写真4)とそれに続く断崖絶壁でのぶら下がりシーン(写真5)だ。舞台はインドとパキスタンとの国境にあるカシミール地方という想定だが,実際にはニュージーランドの南アルプス峡谷で撮影したようだ。2台のヘリのチェイスに13台ものヘリを使ったという。そもそもこんな多数機を同時に飛ばす飛行自体が危険らしい。峡谷内の過酷なチェイスは勿論過去最高の出来映えで,よくぞこんなシーケンスをデザインしたものだ。これもプレビズの効用だろう。さらに,ここまで見事な断崖をよくぞ探してきたなと感心する。ヘリの一部,いや全部がCGであっても,断崖もCG/VFXで描いていても不思議はないが,そうしないのが本シリーズの矜持なのだろう。それでも,さすがにヘリが断崖下に落下するシーンだけはCGだろうと思われる。CG/VFXの主担当はDNEGで,他にLola VFX,Bluebolt,One of Us, Blind等が参加している。それでも,他の大作よりは参加アーティスト数は少なめであった。  
 
 
 
 
写真4 ヘリに捕まり,操縦士を追い出して自ら操縦し,激しいバトルチェイスを繰り広げる。
 
 
 
 
 
写真5 こんな崖につかまって撮影したとは,畏れいる
(C) 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
 
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