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O plus E 2018年Webページ専用記事#2
 
 
アベンジャーズ/
インフィニティ・ウォー』
(マーベル・スタジオズ/
ウォル ト・ディズニー・ジャパン配給 )
      (C) Marvel Studios 2018
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月27日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2018年4月27日 TOHOシネマズ なんば(IMAX 3D)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  MCU 10周年記念に相応しいボリュームとスペクタクル  
  もう当欄の読者にはお馴染みのマーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) 作品の第19作で,オールスター映画の『アベンジャーズ』の3作目に当たる。MCUとしては『アイアンマン』(08年10月号)以来10周年目というので,製作ペースが上がり,広報宣伝にも気合いが入っている。第18作『ブラックパンサー』(18年Web専用#1)からまだ2ヶ月しか経っていないのに,この超大作を世界ほぼ同時公開で送り出している。さらに,第20作『アントマン&ワスプ』が約3ヶ月後(日本公開は4ヶ月後)に控えているという,驚くべき企画・製作能力だ。
 当欄では,一体何を語ろうか。これだけのハイペースでも,クオリティが全く落ちないことは,過去の作品から予想できる。10周年記念となれば,脚本も美術も一段とパワーアップしているはずだ。CG/VFXは最新技術を数え切れないほどふんだんに使っていることも確実だから,一々分析し,解説できないほどのボリュームに違いない。となると,「相変わらずサービス精神たっぷりで,充実している」と確認するだけだろうか。この手の娯楽大作に対して,小難しい,ひねくれた単館系映画好きの映画評論家たちは,酷評しないまでも,平凡な評点しかつけないと予測できる。VFX映画時評欄としては,単なる応援では能がないので,独自視点で何か語ることにしよう。
 本作を楽しむためには,誰と誰が登場するのか,観賞前に頭に入れておいた方がいいだろう。最近急増しているMCUファンの若者達は,半年前からネット上でこの予想合戦をやっていたそうだ。アイアンマン(ロバート・ダウニーJr.),キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス),ソー(クリス・ヘムズワース),ハルク(マーク・ラファロ)の4大ヒーローが欠かせないことは誰でも分かる。個別の主演作はないが,前2作で上記4人と6人チームを構成していた2人,ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)とホークアイ(ジェレミー・レナー)の内,本作ではホークアイが登場しない。これは,どうしたことか? スケジュールが合わなかったのだろうか? 何やら意図的な不参加で,次回作で重要な役割を果たすための伏線という気もする。
 前回集結した準オールスターの『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)以降に単独主演作があったドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)とブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)が参加することは公約通りだ。同作で配給網の壁を越えてサプライズ登場したスパイダーマン(トム・ホランド)も,本作で正規のアベンジャーズ・メンバーとなる。まだ先かと思っていたが,『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(GotG)』シリーズのチーム7人組が宇宙船込みで丸ごと合流する。中でも,前作で大人から赤ん坊の木になったグルートは,少年の木にまで戻っている。
 その他,ソーの弟ロキ,ブラックパンサーの妹シュリ,キャプテンの友人のウィンター・ソルジャーやファルコン,過去のMCU作品に何度も登場しているワンダとヴィジョンらもしっかりと出番がある。まさにオールスターだ。単独主演作もある主要ヒーローでは,アントマンだけがいない。これは上述の『アントマン&ワスプ』がすぐに控えているためだろう。スーパーパワーの持ち主ではないが,筆者が大好きなスターク社長の愛人ミス・ポッツ(グウィネス・パルトロウ)も出して欲しいなと思ったら,少しではあるが,顔を見せてくれた(既に結婚しているという設定だから,スターク社長夫人と呼ぶべきか)。これは嬉しかった。かく左様に,ファンサービスがしっかりしている。
 これだけのヒーロー達と戦うには,相当強力なパワーがある敵でないと釣り合わない。最凶最悪のラスボスであるサノスを演じるのは,ジョシュ・ブローリンだ(写真1)。かなりの悪漢と思わせる見事なメイクで,体躯もハルクと同じくらいの大きさがあり,いかにも強そうだ。6つのインフィニティ・ストーンを集め,全宇宙の生命の半分を消滅させるというから,スケールが大きい。
 
 
 
 
 
写真1 最凶最悪の敵サノス。左手の光る石を6個集めて指をパチンと慣らすと,宇宙生命の半分が消滅する。
 
 
  監督は,第9作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14年5月号)と第13作『シビル・ウォー…』にも起用されたアンソニー&ルッソ兄弟だ。既にMCUのヒーロー大作を2度も経験済みであり,当欄は前者の時から,その手腕を褒めていた。他の劇場用映画の監督経験はたった3作品だというのに,余程こうした大作が性に合うのだろう。
 以下,当欄の視点での感想と解説である。
 ■ オープニングは地球上ではなく,宇宙空間から始まる。まるでSWシリーズかSTシリーズかと思わせる威容だ。ソーとロキがタイタン人に捕まっていて,早くもサノスが登場し,ストーンを集める企みを明らかにする。巨大化したハルクが助けにくるが,敵わない。子供でも分かる単純明快さだが,CG/VFXのレベルがゲーム画面とは格段に違うので,幼稚には見えない。場面は地球上に移り,アイアンマンとドクター・ストレンジが出会うが,こちらもストーンを願う敵の攻撃を受ける(写真2)。主要ヒーローを1人ずつ登場させながら,得意技を思い出させる演出が実に上手い。テンポも速過ぎず,オールスター映画のお手本のような作り方だ。
 
 
 
 
 
写真2 アイアンマンとドクター・ストレンジは出会った早々に敵と戦う
 
 
  ■ ヒーロー達の出会いや集結が楽しい(写真3)。かなり痩せた上に髭を生やし,いつもの超合金製の楯を持っていないので,一瞬キャップテン・アメリカだと分かりにくいが,セリフで補っている。ソーとGotGのスター・ロード(クリス・プラット)の感じが似ているが,そのこともネタにしているのは,見間違えないようとの配慮だろう。ソーとGotGのロケット(アライグマ)が意気投合するのも,意外で面白い(写真4)。随所に軽口の応酬があって和む。バトルばかりじゃ疲れるから,緩急の付け方にも工夫している。
 
 
 
 
 
写真3 約半数がワカンダ国に集結。すっかりイメチェンのキャプテン・アメリカ(中央)の腕にも注目。
 
 
 
 
 
写真4 ソーとアライグマのロケットが意気投合とは意外だった。右は少年の大きさになったグールド。
 
 
  ■ もう1つ点検するのが楽しいのは,ヒーロー達の武器や小物類だ。アイアンマン・スーツは1作ごとに進化しているが,デザイン的には余り変えようがないためか,着脱に凝っている。以前から友人のローディは色違いのスーツでウォーマシンに変身するが,本作ではスパイダーマンやハルクも,スターク社長開発のパワードスーツの恩恵を受けている(写真5)。キャプテン・アメリカの看板である楯は,前腕に着けて変形できるものになっている。一方,本作のソーは魔法のハンマー「ムジョルニア」を失っているが,終盤新たに鋳造された際には,ハンマー状ではなく,鎌の形をしている。という風に,ファンを楽しませることに徹している。
 
 
 
 
 
写真5 何と,このでかいスーツの中はハルク
 
 
  ■ 特筆すべきは,3D版の出来の良さだ。公開初日の夜に『パシフィック・リム:アップライジング』(18年Web専用#2)と同じシアターでIMAX 3D版を観たが,本作の方が圧倒的に3D効果が高かった。IMAXスクリーンが元々明るいせいか,眼鏡をかけても余り暗く感じない。大半は人物を焦点面にして奥に視差をつけているが,所々で飛び出し感を強調する。そのバランスが絶妙だ。敵であるタイタン人の宇宙船はドーナツ状だが,まさに3D効果を演出するのに最適である(写真6)。終盤,タイタン星への着陸の際に激突し,大破するシーンが絶品だ。ドクター・ストレンジの顔面に鋭利な針状の物体が迫るシーンも3Dを意識してデザインされたものだろう(写真7)。2D→3D変換の主担当は業界最大手のStereo D社だが,VFX大手のDouble Negative (DNEG)が3D変換部門を新設し,参加している。
 
 
 
 
 
写真6 タイタン人のドーナツ状の宇宙船とスパイダーマン。眼下にマンハッタンが見える。
 
 
 
 
 
写真7 ドクター・ストレンジに迫る鋭利な針も3D効果は抜群
 
 
  ■ 終盤のバトルは予想通りボリュームたっぷりだった。単独作品でこれが延々と続くと嫌になるのだが,本作はそう感じさせない。戦いの場が2ヶ所に分かれ,交互に登場するのでしつこく感じない。一方はアスガルド星からタイタン星に移動し,もう一方は地球上でワカンダ国の広々とした草原で敵の大軍と戦う(写真8)。多数のヒーローが得意技を繰り出し,一進一退するので,1:1の長々としたバトルほど飽きないと言える。CG/VFXの出番が山のようにあるスペクタクルであることは言うまでもない。エンドロールには,プレビズ担当から先に登場するのが最近のやり方だ。プレビズ専業の最大手Third Floorの他に,Digital Domainがプレビズと本編VFXの両方を手がけている。CG/VFXは,ILM, Virtuos, Weta Digital, Method Studios, DNEG, Framestore, Cinesite, Legacy Effects, RISE Visual Effects Studios, Cantina, lola VFX, Base FX等々の社名が延々と続き,参加アーティスト数は過去最大ではないかと感じた。いずれも,過去のMCUに参加してきたスタジオであるから,そのデジタル資産も最大限に活用されていることだろう。
 
 
 
 
 
写真8 クライマックス・バトルの半分はワカンダ国での戦い。
画面左で飛翔しているのはファルコン。
(C) Marvel Studios 2018
 
 
  ■ 映画賞とは無縁の娯楽大作で,VFX映画史に残る存在ではないが,MCU 10周年記念作として,当欄は最高点のを与えよう。誇大広告でなく,しっかり入場料分の見応えがあり,ファンサービスに徹していて,顧客満足度は高いという意味での評価だ。その一方で,クライマックス・バトルの後の,このエンディングは予想できなかったという声も少なくない。そうか,そんな予想できないか? 筆者はこうなるだろうと予測していた。未見の読者のために結末は伏せておくが,ヒントは『シビル・ウォー…』紹介本文中で,この兄弟監督が次に何を担当するかに言及しているとだけ言っておこう。  
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