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O plus E誌 2018年2月号掲載
 
 
グレイテスト・
ショーマン』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月16日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2017年7月7日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ウルヴァリン卒業後の第1作に相応しい歌劇  
  『LOGAN/ローガン』(17年6月号)を最後に『X-MEN』シリーズの当たり役ウルヴァリンを卒業したヒュー・ジャックマンのために作られたミュージカル映画だ。まさに新生ジャックマンの門出に相応しい華麗な転身である。といっても,『レ・ミゼラブル』(13年1月号)で歌唱力は披露済みであるし,元々オーストラリア時代からミュージカルの舞台に登場している。米国に渡ってからもブロードウェイの舞台に何度も出演し,トニー賞主演男優賞も受賞している。転身でなく,むしろ原点帰りと言うべきかも知れない。
 彼が最も輝いて見えたのは,2009年のアカデミー賞授賞式で司会進行役を務めた時であった。単なるアメコミのヒーローの男優ではなく,歌って踊れる類い稀なるエンターテイナー,ショーマンだと世界中の誰もが感じたはずである。その授賞式をプロデュースしたローレンス・マークとビル・コンドンが,H・ジャックマンの姿から,19世紀の偉大なる興行師P・T・バーナムを思い出し,彼を描くミュージカルを企画したという。
 監督は,本作が長編映画デビューとなるマイケル・グレイシー。H・ジャックマンと同じ豪州出身で,ミュージック・ビデオやCM制作で数々の賞を得てきた人物だそうだ。なるほど,外連味たっぷりの本作の監督には,劇映画出身よりも彼の経歴の方が適している。
 ヒロインは2人いる。幼なじみの妻チャリティ役に『マリリン 7日間の恋』(12年4月号)のミシェル・ウィリアムズ,スウェーデン人の美形の歌姫ジェニー・リンド役に『ライフ』(17年7月号)のレベッカ・ファーガソンが配されている。助演陣では,バーナムの相棒の青年フィリップ役のザック・エフロンと,空中ブランコ芸人のアン役のゼンデイヤのカップルの恋物語も,このミュージカルの重要なピースとなっている。
 もっと重要なのは楽曲担当だ。昨年『ラ・ラ・ランド』(17年3月号)でアカデミー賞主題歌賞を獲得したベンジ・パセックとジャスティン・ポールが,全9曲を作り上げた。楽曲以外のスコアは,ジョン・デプニーが担当している。脚本担当のビル・コンドンは『シカゴ』(03年4月号) 『ドリームガールズ』(07年2月号)を成功させているが,映画のタッチとしては,『ムーラン・ルージュ』(01年11月号)に近いと感じた。ミュージカル映画としての完成度は高く,いずれ舞台化されるのではないかと想像する。
 以下,当欄の視点での感想と評価である。
 ■ 冒頭シーケンスは,大音響の"The Greatest Show"のコーラスと華麗なショーの場面から始まる。衣装のカラフルさ,カメラワークの目まぐるしさも,曲に負けていない。どこまでが実写なのか,識別できない。空中ブランコも一部は本物かも知れないが,高く舞い上がるシーンは当然VFXの産物だろう(写真1)。一瞬にしてショーマンのバーナム以外の登場人物が消え,少年時代の彼の姿へと遷移する。なるほど,CM風の演出だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 ゼンデイヤ(上)はすべて自分で演じたというが,他はどこまでが本物か?
 
 
  ■ 時代は19世紀半ばで,ニューヨークに設けた劇場での興行の模様が描かれる。ロンドンに比べて,この時代が描かれることは少ないが,少し誇張気味に当時の街を再現している(写真2)。劇場の内装もしかりで,バーナムが意図した大衆のための娯楽ショーを,CG/VFXを縦横に駆使して活写している。放火で劇場が燃えた後は,大型テント内でのショーとなるが,象やライオンまでが登場する等,さらに派手さが増している(写真3)
 
 
 
 
 
写真2 舞台となる19世紀のNYの街は少し作り物風
 
 
 
 
 
 
 
写真3 再開した興行は絢爛豪華で,象まで登場する
(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
 
  ■ ミニチュアも多用されていたようだ。炎上する劇場のシーンは,ミニチュアとCGの合成だろう。少し驚いたのは,Web上で公開されているBrainstorm Digital社のメイキング映像だ。妻の実家への訪問等,余りにも平凡なシーンにVFXが多用されている。ということは,派手なサーカス・ショーは当然CG/VFX技術の産物だろう。主担当はMPC,副担当は最近進境著しいRodeo FXで,他にRaynault VFX, Lola VFX, Soho VFX, Shade FX等々,多数のスタジオが参加している。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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