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O plus E誌 2016年11月号掲載
 
 
インフェルノ』
(コロンビア映画 /SPE配給)
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月28日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2016年10月12日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  シリーズ3作目も世界文化遺産を巡る贅沢な展開  
  この秋の話題作で,本作もシリーズ3作目だ。米国人作家ダン・ブラウンは,2003年に出版した「ダ・ヴィンチ・コード」が世界的大ベストセラーとなり,一躍その名前が知れ渡った。原作は,宗教象徴学が専門のハーバード大学ロバート・ラングドンを主人公としたシリーズの4作目だが,映画としては『ダ・ヴィンチ・コード』(06年6&7月号) 『天使と悪魔』(09年6月号)に続く3作目である。1つとばした「ロスト・シンボル」もいずれ映画化されるだろう。前作との間がだいぶ空いたが,本作が先に製作されることは早くから伝わっていた。当初は2015年12月の公開予定であったが,『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)との競合を避け,公開時期をこの秋まで遅らせたという。
 監督ロン・ハワード,主演トム・ハンクスの組み合わせは3作とも同じである。同監督作は『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』(16)が,トム・ハンクスは主演作『ハドソン川の奇跡』(16年10月号)が,共にほんの1ヶ月前に公開されたばかりである。最初はその早撮りぶりに驚いたが,上記の興行上の事情からすると,本作を先に撮り終えていたのだろうと思われる。毎度,欧州の世界遺産を外からも内からもじっくり見せてくれる贅沢なシリーズゆえ,時間をかけて製作されたことだろう。本作はイタリアのフィレンツェに始まり,謎解きとともに,ヴェネツィア,イスタンブールの名所を巡る期待通りの展開である。
 前作同様デヴィッド・コープが脚本担当だが,音楽のハンス・ジマーの他,撮影,編集のスタッフ陣はシリーズ3作のすべてを担当しているので,クオリティは保証付きと言える。ヒロインは,主人公と謎解きの行動を共にする美しい女医のシエナで,『博士と彼女のセオリー』(14)のフェリシティ・ジョーンズが演じている。この役は,少し聡明そうに見える女優なら誰でもいい。むしろ助演陣に『最強のふたり』(11)のオマール・シー,『めぐり逢わせのお弁当』(13)のイルファン・カーン等,国際色豊かなキャスティングが嬉しい。WHO事務局長エリザベス・シンスキー役はデンマーク人女優のシセ・バベット・クヌッセンだが,原作にはない思いがけない役柄として描かれているとだけ言っておこう。
 表題の「The Inferno」は,ダンテの「神曲 地獄篇」を指している。欧米人といえども,余程の教養人でなければ読破していないので,謎解きの鍵としては格好の題材である。その一方で,地球人口の爆発を危惧して,生化学者が仕掛けた計画には最新の遺伝子工学の知識が盛り込まれている。筆者は,例によって,原作を半分以上読んでから試写会に臨んだが,後半は映画独自の解釈で物語が進行することに少し驚いた。小説と映画は別物で構わないのだが,世界人口を抑制する原作のプロットも捨て難い面白さがある。一読をお勧めしたい。
 以下,当欄の視点での見どころと評価である。
 ■ 文化・芸術・宗教に関する蘊蓄を最大限に傾けたシリーズゆえ,文化遺産をたっぷり見せてくれるのが楽しみだ。町中が美術遺産の塊りと言えるフィレンツェの名所を散々巡った後,ヴェネツィアのサン・マルコ広場と大聖堂,さらにはイスタンブールのアヤソフィア博物館とその地下宮殿へと舞台を移す。市中風景や建物外観は当然ロケでの撮影だが,内部は大型美術セットか本物の撮影が許可されたのか区別がつかない(写真1)。ピッティ宮殿からヴェッキオ橋上部を経て大聖堂へと至る「ヴァザーリ回廊」を主人公たちが駆け抜けるが,この回廊の一部は一般公開されているだけあって,現場での撮影が許されたようだ(写真2)
 
 
 
 
 
 
 
写真1 見事な美術セット,それとも本物の宮殿内?
 
 
 
 
 
写真2 メディチ家のヴァザーリ回廊での撮影風景
 
 
  ■ 確実にCG/VFXと言えるのは,映画冒頭に登場するヴェッキオ宮殿の塔からの墜落シーン(写真3),ラングドンの夢に登場する爆発シーン(写真4),そして彼の幻覚中で見られる「地獄絵図」中の様々なおぞましい描写である。CG/VFXは,前作同様Double Negativeほぼ1社の担当だ。
 
 
 
 
 
写真3 冒頭シーケンスでの塔からの落下。勿論,VFXの産物。
 
 
 
 
 
写真4 ラングドン教授の悪夢に登場する爆発シーン
 
 
  ■ 中盤はヴェッキオ宮殿内の「五百人広間」の天井裏空間で,終盤はアヤソフィア地下水槽で,アクション・シーンが展開する。天井裏の梁をつたっての攻防や天井を破っての人間の落下は,さすがにVFXの産物だろう。地下水槽はブダペストのスタジオ内にセットを組んだようだが,天井裏も地下水槽も空間を広く見せるのには,CG/VFXで加工しているものと思われる。    
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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