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O plus E誌 2000年12月号掲載
 
 
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『ホワット・ライズ・ビニース』
(20世紀フォックス映画
&ドリームワークス映画)
 
(c)2000 TWENTIETH CENTURY FOX
       
      (20世紀フォックス試写室 00/10/20)  
         
     
  R・ゼメキスの作ったヒチコック映画  
   ロバート・ゼメキス監督といえば,『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)でアカデミー賞の作品賞・監督賞を得たが,『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを始め,『ロジャー・ラビット』(88)『永遠に美しく…』(92)などSFX史に輝く作品を残している。『コンタクト』(97)以来監督作品がなかったため,この時評欄でも触れる機会がなかった。
 そのハイテク通のR・ゼメキスが,『シックス・センス』並みの怖〜いスリラー,ヒチコックを彷彿とさせるサイコ・サスペンスを撮ったという。主演は,ハリソン・フォード,ミシェル・ファイファーの2大スター競演。VFXスーパバイザは『タイタニック』のロブ・レガート,特殊メイクアップはスタン・ウィンストン・スタジオとくれば,本欄の愛読者は凄い死者か霊のメイクや特殊効果を期待するだろう。
 この映画の米国公開は7月21日。多分に『シックス・センス』の2匹目のドジョウを狙った宣伝作戦だったが,同じように息の長いロングランで配収1億5千万ドルの大ヒットとなった。
 映画の作りは,なるほどヒチコックを意識し過ぎるくらいに意識している。音楽からカメラワークまでヒチコック・ファンへのサービスに溢れている。前半の隣家の夫妻への疑惑は明らかに『裏窓』,後半のバスタブやシャワーカーテンは誰が見ても『サイコ』へのオマージュだ。それなら,ゼメキス監督もどこかにこっそり登場していたのだろうか?
 視覚効果の主担当はSony Pictures Imageworks社。ソニー系のコロンビア映画,トライスター映画以外の作品まで手掛けるとは,SPI社も業界の大勢力になってきた証しだろう。いかにもそれと分かる死者の顔へのモーフィング以外は,目の肥えたファンも気がつかないかも知れない。「風が吹くような自然な」視覚効果というだけあって,ゼメキス&レガート組は見事な特撮を見せてくれる。M・ファイファー演じる主人公クレアの視点での水面,鏡,ガラスへの映り込みと視覚効果の組み合わせが秀逸だ。まずヒチコック流の演出を楽しんでから,2度目にこのVFXを味わうことをお勧めする。
 
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静かな合成技術での挑戦
噂の割には,ちっとも怖くなかったなぁ。
写真 鏡に写った映像を水面にディジタル合成
(c)2000 TWENTIETH CENTURY FOX
そうですか? 相当怖いほうですよ。
怖がらせるツボを心得た演出だから,それを見抜いてしまえば,そんなに怖くないんです。私はSFXばかり注視していたせいもありますが…(笑)。
何が出て来るのか,見えない恐怖がありますよ。
題からしてそうですね。でも,こういう映画はカタカナでなく,いい邦題をつけて欲しいなぁ。
恥ずかしながら聞きますと,「ビニース」って何でしたっけ?
"beneath"は「下に,下方に」で,"below"の古い表現です。「下に横たわるもの」ですから,「何かが潜んでいるよ」ってところでしょう。
じゃ「死者の棲む家」とか「ひそむ悪霊」とか…。ハハハ,そんな題じゃダサイですね(笑)。
鏡の使い方も恐ろしさを演出していましたが,特撮だと分かりましたか?
そのままじゃカメラが映ってしまうので変だなと思いましたが,途中から気にならなくなりました。
長いアームを使って撮った場面もあるのでしょうが,かなりの比率でディジタル合成されていると思います(写真)。
ガラスへの映り込みもそうなら,実に自然な使い方ですね。
ゼメキスの映画ファンへの挑戦であり,プレゼントですよ。スピルバーグの弟分だけあって,映画をよく研究しています。キャスティングもそうでしょう。
ハリソン・フォードの知的な教授役ははまり過ぎで,ミシェル・ファイファーもぴったりでした。
役作りだけなら,ジョディ・フォスター,レネ・ルッソ,デミ・ムーア…でもよかったけれど,金髪の上にヒチコック好みを選んだのでしょう。
確かに金髪女性が何人も出て来て,この映画では重要な役割を果たしてますね。
といった観点からも楽しめる映画です。
   
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