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O plus E誌 2015年6月号掲載
 
 
トゥモローランド』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2015 Disney Enterprise,inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月6日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2015年5月11日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  既視感に溢れ,夢を感じさせる未来都市空間  
  SFジャンルでは,この夏,VFX史に残るシリーズの新作『ターミネーター:新起動/ジェニシス』『ジュラシック・ワールド』が公開される。絶好調のディズニーは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で迎え撃つ。年末には『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』も控えていて当欄は大忙しだが,ディズニー映画配給網での公開というのは,SWファンには少し違和感がある。今年,筆者がディズニー・ブランドで最も期待していたのは,先月の『シンデレラ』でなく,本作である。
 言うまでもなく, 「トゥモローランド」はディズニーランドにあるエリア名であり,「アドベンチャーランド」「ウエスタンランド」「ファンタジーランド」と並ぶ「テーマランド」だ。「スペースマウンテン」や「キャプテンEO」があるエリアと言えば,思い出す読者も多いことだろう。かつて,「カリブの海賊」「ホーンテッドマンション」等のアトラクションを映画化し,特に前者は大成功を収めた。今度はテーマランド全体が対象となれば,スケールも大きくなり,ディズニーらしい「未来の国」を見せてくれることと期待した。
 IMDbに上がっていた予告編を見ただけで,もうワクワクだった。ピンバッジに触れた少女が小麦畑にワープしてしまい(写真1),さらにその向こうにある未来の国へと導かれる(写真2)。この光景には既視感がある。この種の未来都市は数々のSF映画で観て来たはずだが,何かが違う。筆者らの世代が,子供の頃に夢見た21世紀の光景であり,手塚治虫の漫画で描かれていた世界だ。さらに思い出せば,フロリダのWalt Disney WorldにあるEPCOTを観た第一印象に近いと感じた。
 
 
 
 
 
写真1 いきなり小麦畑に。奥に見える建物に注目。
 
 
 
 
 
写真2 近づいてみると,あっと驚く未来都市!
 
 
  この印象は正しかった。別の予告編や参考資料では,本作の「トゥモローランド」とは,「ウォルト・ディズニーが遺した最大の謎,最高のプロジェクト」「〈すべてが可能になる〉理想の世界」だとして,EPCOT計画に言及されていた。彼が夢見たEPCOT (Experimental Prototype Community of Tomorrow)とは,商業施設の周りに科学者たちが住む職住一体空間である。現実のEPCOTは科学技術が拓く未来を描いたテーマパークに過ぎないが,筆者が訪問したDisney Imagineering社の社屋は,EPCOTの敷地内でパークの外側にあり,建物近くの扉を開けるとテーマパーク世界が広がっていた(さすがに,社員たちはそこに住んでいなかったが)。
 さて,本作の監督は『Mr. インクレディブル』(04年12月号) 『レミーのおいしいレストラン』(07年8月号)のブラッド・バード。夢と未来を描くには適任だ。主演はジョージ・クルーニー,彼と行動を共にする17歳の少女ケイシー役にはブリット・ロバートソン,謎の美少女アテナ役にはラフィー・キャシディが抜擢されている。
 物語は1964年NY万国博覧会会場に,11歳の少年フランクが現れるところから始まる。ディズニーがこの万博に出展していたアトラクション「It's a Small World」(後にディズニーランドに移設)は,超ハイテク未来空間に繋がっていた。それから約半世紀後の現代,フランクとケイシーは,人類の未来を左右する大事件に巻き込まれる。くどい説明は無用で,後はこの冒険物語に没入すれば良いだけだ。以下,CG/VFXの見どころである。
 ■ 何と言っても,本作の肝は,未来都市空間のビジュアル・デザインに尽きる。映画中でも様々なアングルから登場するが,それに堪え得るだけの綿密な設計がなされている。スチル画像でじっくり眺めても,実に素晴らしい(写真3)。これに比べると『LOOPER/ルーパー』(13年1月号)や『ハンガー・ゲーム』シリーズの未来都市は児戯に等しいし,『クラウド アトラス』(13年3月号)のそれのような暗さはない。全体を俯瞰するような構図は勿論フルCGでの描写だが,俳優が演技する場面では実物大セットも組まれている(写真4)。フットボール場の半分の大きさの巨大セットで,建設期間は6ヶ月,実際に動くモノレールまで作ったというから,ハリウッド映画ならではの規模だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 スチル画像でじっくり観れば観るほど,細部までしっかりデザインされていることが分かる
 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 巨大セットを組んで撮影し,しっかりCGを描き込んでいる
 
 
  ■ もう一つの見どころは,中盤のエッフェル塔のシーンだ。その内部のレトロな感じや,そこから旧式のロケットで飛び出すシーン(写真5)は,トゥモローランドの未来感覚とは全く別の趣きがある。同じパリの駅舎内を描いた『ヒューゴの不思議な発明』(12年3月号)を少し意識しているとも感じられた。CG/VFX担当はILMで,ほぼ1社で全編を描き切っている。VFXの歴史そのものである同社が本作を担当したことは,素直に喜ばしい。  
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写真5 エッフェル塔からの脱出シーンで,眼下に見えるのはパリの夜景
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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