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O plus E誌 2013年1月号掲載
 
 
LOOPER/ルーパー』
(ギャガ配給)
      (C) 2012 LOOPER DISTRIBUTION, LLC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月12日より丸の内ルーブル他全国ロードショー公開予定]   2012年11月13日 GAGA試写室
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  斬新なアイデアで描く極上SFエンタテインメント  
  今月は紙数オーバーだが,重要作品が多いので,もう1本紹介しておこう。VFXの質・量では勝る『レ・ミゼラブル』と『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』を短評欄に追いやってでも,メイン欄に残したくなったのが本作である。色々な意味で事前期待が大きかった上記の3本とは異なり,試写を観てから一気に気に入った作品だ。いわゆる「儲けもの」の類いに入る。いやいやそれ以上で,年間ベスト5にも入れてしまった逸品である。時間があれば,公開後に映画館でもう一度観に行きたいし,BD/DVDを購入後も再見するに違いない。
 キャッチコピーで「革新的SFタイムループエンタテインメントの誕生」と謳われているように,いわゆるタイムマシンものであるが,著名な原作SFが存在する訳ではなく,オリジナル脚本のようだ。未来の2074年の社会では,マイクロマシンによる生命管理が行われ,殺人が不可能になっていたが,その一方でタイムマシンが開発されていたという設定である。そこで,犯罪組織は消したい標的をタイムマシンに乗せ,30年前の2044年の世界に送り込んで,そこで抹殺するというビジネスを始めていたという訳だ。「ルーパー」という聞きなれない言葉は,英単語に存在しない訳ではないが,本作では新しい独自の意味で使われている。2044年社会の住人で,未来から転送された標的を抹消する処刑人である。このルーパーの監視人で,掟を破ったルーパーを狙撃する「ガットマン」なる役割も設定されている。
 テンポが良く,ワクワクするような展開だが,タイムトラベルものとして,頭が混乱するほどではない。このタイムマシンはまだ未完成の開発途上で,30年前への時間移動しかできないからである。この制約条件で物語が複雑になるのを防いでいるのは,巧みな手口である。理論上タイムトラベル・パラドックスが存在しない訳ではないが,登場人物たちがそれが生じないように行動し,むしろ過去に起きたことがきちんと未来に反映されることが,物語の前提となっている。
 監督・脚本は,ライアン・ジョンソン。『BRICK ブリック』(05)で監督デビューというが,ほぼ無名に近い存在だった。10年来の構想を映像化した本作によって,一気にブレイクすることだろう。主役のルーパー,ジョー役は,その『BRICK ブリック』に主演したジョセフ・ゴードン=レヴィット。その後『(500)日のサマー』(09年12月号) の好演が話題になり,クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(10年8月号)『ダークナイト ライジング』(12) でも重要な役柄に抜擢された,いま最も売れっ子の若手男優の1人である。そして,競演のビッグネームは,往年のアクション・スターのブルース・ウィリス。何と,この2人が2044年のジョーと2074年のジョーである。そして,タイムマシンで2044年に転送されたオールド・ジョーが,ヤング・ジョーに殺されようとする,という設定だ。女優陣では,これまた最近売れっ子のエミリー・ブラントが,本作でも子供の母親役で起用されている。
 J・ゴードン=レヴィットの印象が違っていて,こんな顔立ちだったのかと自分の記憶を疑った。これは全く顔の骨格が異なるブルース・ウィリスに似せるために,顔面変形のメイクを施していたからだった(写真1)。その甲斐あって,2人のジョーが交錯する最初のシーンでは,見事にそっくりで,同一人物だと理解できる。目と鼻の印象だが,この2人はこんなに似ていたのかと感じたほどだ。特殊メイクの担当者に,座布団1枚進呈だ。
 
 
 
 

写真1 なるほど,こうやると横顔も似てきた

 
  VFXは効果的に使われているが,分量的にさほど多い訳ではない。この種のSF映画に対する当欄のチェックポイントは,近未来社会の外観や家庭内のグッズ類のデザインだ。2044年という,あまり遠くない未来に関して,現代より少し荒廃した社会を感じさせつつ,高層ビル群のデザインで,未来社会の感じを出している。担当はAtomic Fiction社で,上海の光景をVFX加工することで,これを達成した(写真2)。銃器類のデザインでも,現代にはない何かを感じさせてくれる。  
 
 
 
 
 
 
写真2 2044年の風景。未来度は少し控えめ。
 
 
  VFXのもう1つ活躍の場は,終盤登場するテレキネシスのシーンだ。まず,室内で机や椅子が宙に浮き,それが破壊される(写真3)。さとうきび畑のシーンでは,衝撃波が巻き起こり,人が空中へと舞い上がる。いずれもScanline VFX社の担当場面だ。  
 
 
 
 
写真3 後半の見どころは,机や椅子が宙に浮くシーン
 
 
  2074年のシーンに登場するタイムマシンのデザインは,あまりにも古風だった(写真4)。未完成品だとしても,これは極端だ。このデザインには何か意味があるのかと思いつつも,筆者の知識不足で意図を読み取れなかった。
 
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写真4 余りにも古めかしいタイムマシンの外観
(C) 2012 LOOPER DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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