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O plus E誌 2013年11月号掲載
 
 
グランド・イリュージョン』
(サミット・エンターテイン
メント/KADOKAWA配給 )
      (C) 2013 Summit Entertainment, LLC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月25日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2013年9月25日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  プロの技術指導とCG/VFXで描いた一大マジック  
  夏のアメコミ&SF大作群の公開が終わり,いよいよ秋シーズンだ。当欄にとって期待の一作は,米国で5月31日の公開後,7週間もトップ10をキープした作品で,この5ヶ月が待ち遠しかった。マジック・ショーと銀行強盗を組合せたクライム・サスペンスというから,もうそれだけでワクワクである。原題は『Now You See Me』という地味なタイトルだったが,『グランド・イリュージョン』という魅力的な邦題がついた。
 筆者はラスベガスに行く度に,ジークフリート&ロイやデヴィッド・カッパ―フィールドの大掛かりなマジック・ショーを楽しんだ。その都度に考えたのが「このトリックを映画に使ったら,どんな物語が描けるだろう?」あるいは「CG/VFXを駆使すれば,どんなマジックが演出できるだろう?」であった。本作は,D・カッパーフィールドらの監修を得て,まさにその思いを実現してくれた映画である。マジシャンを描いた作品としては『プレステージ』(07年6月号)があったが,それよりマジックのスケールは大きい。ラスベガス会場から無作為に選んだ観客をパリの銀行内の金庫に瞬間移動させ(勿論,映画内でだが),そこから盗み出した札束を会場に降らせるというのだから,アイディアも秀逸だ。その種明かしまで付いているのが嬉しい。
 物語は,ある意図からアイディアや技量が卓越したマジシャンや催眠術師がスカウトされ,イリュージョニスト集団「フォー・ホースメン」が結成される。男3人,女1人のプロ集団の行動は,『オーシャンズ11』や『ミッション・インポッシブル』のチームを彷彿とさせる。マジック・ショーと大金搾取を絡めた犯行は,上記のラスベガスに始まり,ニューオーリンズ,ニューヨークへと舞台を移す。犯行を追うFBIとインターポールの捜査官コンビを欺く手口も,彼らのトリックを暴こうとする元マジシャンへの報復も楽しい。
 監督は,『トランスポーター』シリーズ,『インクレディブル・ハルク』(08年8月号) のルイ・レテリエ。CG/VFXにも詳しい。4人組のリーダー,アトラス役は『ソーシャル・ネットワーク』(11年1月号)のジェシー・アイゼンバーグ。他の3人は,ウディ・ハレルソン,アイラ・フィッシャー,デイヴ・フランコとやや小粒だが,助演陣が充実している。捜査官コンビの男女は,マーク・ラファロとメラニー・ロラン。この美女が出て来るだけで嬉しくなる。さらに贅沢にも,ベテランのマイケル・ケインとモーガン・フリーマンが加わる。それならいっそゲイリー・オールドマンも入れて,『ダークナイト』シリーズを真似て欲しかったくらいだ。
  マジックがテーマゆえに,当然予想できるように,この映画自体にも,観客の目を欺く仕掛けが施されている。それは観てのお愉しみとしておこう。個々のシーンは,プロのマジシャンの技術指導を受けて,出演者達も見事な手さばきを披露するが,当欄の関心事はCG/VFXの威力で,どんなマジックを演出しているかだ。以下,その見どころである。
 ■ まず,マジック・ショーの仕掛けの設計図を目の前の空間に示すのに,ホログラフィック・ディスプレイ風の描写が登場する(写真1)。もうこれだけで,CGパワーを有効活用するぞという宣言である。続いてMGMグランドホテルでのショーの模様だ。円形舞台の周りに何千人ものデジタル観客を描き加え,そこにCG製のユーロ紙幣を降らせている(写真2)。見事なビジュアルだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
写真1 大仕掛けのマジックの設計図が空間表示され(上),思わず触ってみたくなる(下)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真2 長回しカメラワークに堪えられるよう,数千人の観客を描き込み,紙幣も降らせた
 
 
 
  ■ アイディア的には実現可能な数々のマジックも,映像的にはVFXで加工して描いているはずだ。カードの絵柄をビル壁面に灯りで描くシーン(写真3)や,金庫内で札束が舞う様子(写真4)等である。中盤での見ものは,アトラスが作り出したシャボン玉風の透明球体が多数発生し,その1つにヘンリーが入って,宙吊りになるシーンだ(写真5)。これは,物理的には実現できまい。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 夕暮れの画像(上)を夜景に変え,ビルに◇7を描いた(下)
 
 
 
 
 
写真4 金庫内で札束舞うのも,燃えるのも,CGでのマジック
 
 
 
 
 
 
 
 
写真5 アトラスが発生させた泡状物体が次第に大きくなり,ヘンリーが宙吊りになる
 
 
 
  ■ クライマックスのNYでのショーは,ビルを魅惑的にライトアップし,屋上に4人が登場するという演出だ。流行の「プロジェクション・マッピング」で実行可能と思える設定だが,本作では当然CGでライティングを描いている(写真6)。技術的新規性云々よりも,ストーリーへの盛り込み方,ビジュアル面での演出が上手い。本作のVFX主担当は,Rodeo FX社。Modus,Image Engine, ILM等も参加しているが,モントリオールにあるこの中堅スタジオにとって,初の大仕事となった。既にVFXメイキング映像がWeb上に公開されているが,それだけの自信作だということだろう。
 
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写真6 建物を実際に照らす「プロジェクション・マッピング」は利用せず,この光景はCGで加工(下)
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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