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O plus E誌 2013年11月号掲載
 
 
 
 
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海』
(20世紀フォックス映画)
 
 
      (C) 2013 Twentieth Century Fox

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [11月1日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開予定]   2013年10月1日 東映試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  若年層向け冒険譚として楽しめるシリーズ第2作  
  少年向きのファンタジー・シリーズの2作目だが,筆者としては,前作に比べて評価を上げ,今後も期待したいシリーズだ。前作は試写が当欄の締切に間に合わず,公開後に映画館で観て,長めの短評をWebページに載せるしかできなかった。それゆえ,本稿ではシリーズ自体を原点から振り返っておこう。
 原作は,米国の作家リック・ライアダンによるファンタジー小説で,2005年から2009年にかけて年1冊,全5冊が出版され,全巻邦訳も発売されている。主人公のパーシー・ジャクソン君や友人たちは,ギリシャ神話のオリンポス十二神と人間との混血の半神半人(ハーフゴッド,デミゴッド)との設定だ。時代は現代,舞台は米国内に限られているので,この親しみやすさが(特に米国内での)高い人気の秘密のようだ。
 ギリシャ神話を題材とし,半神ペルセウスを主人公とした最近のファンタジー映画として,『タイタンの戦い』(10年5月号)が記憶に新しい。続編『タイタンの逆襲』(12年5月号)で少し改善されたものの,仰々しい演出の割には大作感が乏しい,中途半端なシリーズだ。その点,若年層向けの冒険映画と割り切ってしまえば,本シリーズの方が焦点を絞りやすい。元来,少年少女向け作品では,自分たち同年齢世代が活躍する冒険譚が好まれる。半神は不死ではないが,人間に比べると超能力が備わっているので,「父は海の神ポセイドンで,水を操る力と特殊な治癒能力がある」といった性格付けには,少年たちをワクワクさせるものがあるはずだ。
 本作は,原作の2巻目「魔海の冒険」を基に映画化されている。前作同様,様々な魔法アイテムが登場し,新しいクリーチャー類も追加されていて,まさにゲーム感覚である。その半面,随所で「ハリー・ポッター」シリーズを意識した作りだとも感じる。前作の監督で,本作では製作総指揮に回ったクリス・コロンバスが,「ハリー…」シリーズの第1作,第2作の監督であったのだから,テイストが似てくるのも当然と言える。
 本作の監督は,CG/VFX畑出身のトール・フロイデンタール。このシリーズにはピッタリだ。主要出演陣は前作と同じで,主人公パーシー役のローガン・ラーマンは,名子役から若手主演俳優に脱皮した成長株で,『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(11年11月号)ではダルタニアンを演じていた。相手役のアナベスを演じるアレクサンドラ・ダダリオも前作同様の起用だ。目鼻立ちのハッキリとした美女だが,既に27歳。この少女役をいつまで演じられるのか心配になってくる。
 物語は,邪悪なクロノスの復活を図る勢力との闘いで,分かりやすい。以下,CG/VFXの見どころである。
 ■ 第1作に続き,CG/VFX的にはかなりの力作である。ビデオゲームの登場キャラもその動きも複雑になるのだから,この種の映画も負けずにクオリティ・アップせざるを得ない。出色なのは,パーシー達を背に海を自在に動き回る海馬ヒポカンポスだ。虹色に輝く肌の質感や動きも素晴らしい(写真1)。敵側では,怪獣マンティコアの毛並み(写真2),機械仕掛けの「コルキスの雄牛」の動きの表現も見事だった。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 CGの最大の見ものは,海馬ヒポカンポス
 
 
 
 
 
写真2 敵対するマンティコアもなかなかの出来
 
 
  ■ 鮫のようなヒレをもち,大きな渦を生み出すシーモンスターのカリュブディスの描写も見どころの1つである(写真3)。その体内の描写もユニークだ。他にも数々のクリーチャーが登場する。多数の手をもつヘカトンカイア(写真4)などは素直に見ていられたが,弟のタイソンの1つ目などは,リアル過ぎて少し気味が悪かった(写真5)。CG/VFXの主担当はMPCだが,Framestore, Method,Prana Studios, Embassy FX等も参加している。
  
 
 
 
 
 
写真3 カリュブディスが引き起こす巨大渦巻きは3D演出の見せ場
 
 
 
 
 
写真4 カフェラテ業界で働く場合は,これだけの数の手は重宝
 
 
 
 
 
写真5 パーシーの異父弟タイソン(左)は単眼のキュプロクス
 
 
   ■ 第1作は2D作品だったが,予想通り3年後の本作は3D版も製作された。ただし,最近のメジャー作品と同様,2D→3D変換によるフェイク3Dだ。その変換技術も向上し,本作のように数多くのシーン(写真6)でCG合成が施される場合は,撮影機材が高価で扱いが面倒なリアル3Dは敬遠される傾向にある。
 
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写真6 かなりのシーンがグリーンバックで撮影され,デジタル加工されている
(C) 2013 Twentieth Century Fox
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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