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O plus E誌 2013年12月号には短評のみ掲載
 
 
キャリー』
(MGM映画/SPE配給)
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月8日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー公開中]   2013年10月21日 松竹試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  一見凡庸なリメイクだが,しっかり現代風にアレンジ  
  映画通なら,この題名だけでブライアン・デ・パルマ監督の名を世に知らしめた出世作だと知っている。原作は,人気ホラー作家のスティーブン・キングの処女作であったから,その点でも著名であり,オカルト・ホラーの名作として知られている。本作は,その1976年製作の映画を約40年ぶりにリメイクした作品である。
 筆者は,公開当時は海外在住だったので,後年TVの洋画劇場で何度か観たのだと思う。ホラーと言いながら,さほど怖くなかった。『エクソシスト』(73)や『オーメン』(76)等が話題となり,同様にオカルト・ホラー扱いを受けているが,青春もの,学園ものとしても見どころのある映画だったと記憶している。
 主人公の女子高生キャリー・ホワイトを演じるのは,『キック・アス』(10年12月号)のクロエ・グレース・モレッツ。『悪魔の棲む家』のリメイク版(05)に出演し,スウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)のハリウッド・リメイク作『モールス』(11年8月号)で主演に抜擢され,好演していたことが記憶に新しい。こうなると,まるでリメイク版専門女優のようだ。本作では,ヴァンパイアで人の生き血を吸うのではなく,恐怖を感じた時にもの凄い念動力(テレコキネス)を発動する超能力者である。
 監督は,『ボーイズ・ドント・クライ』(99)のキンバリー・ピアース。本作では,名作のリメイクでどんな味付けを披露してくれるのかと期待したが,ほぼ76年版をなぞっただけの映画だと感じた。他の映画評論でも高評価を得ていないのは,意外性,衝撃度の低さのためと考えられる。76年版は,原作者のS・キングから「最も原作に忠実に映像化された作品」と絶賛されたというから,そこから余り大きく逸脱したくなかったのだろうか。
 描かれる時代は,当然現代になり,携帯電話やネット上の動画配信サイトが大きな役割を果たしている。超能力発揮の場面は当然CG/VFXのオンパレードであるが,物語の骨格はほとんど同じだ。ポスター(写真1)だけ見ると十分怖そうだが,ホラー度が増した訳ではなく,やっぱりまるで怖くなかった。その原因の1つは,子役出身のC・G・モレッツは演技力は抜群だが,可愛過ぎて恐怖心など湧かないことだ。新聞や雑誌の映画欄で同様な評価があったが,これには全く同意する。陰気で冴えない女子高生(写真2)を必死で演じているが,元が可愛過ぎる。キャリーに同情を寄せる同級生スー役のガブリエラ・ワイルドもなかなかの美形(写真3)だが,可愛さではキャリーの方が上である。これじゃ,お目当てのプロムの会場で目を惹いても全く不思議ではないし,ベスト・カップルに選ばれるのも小細工のせいとは思えない。
 
 
 
 
 
写真1 日本版のポスター。これを夜見たら,結構怖い。
 
 
 
 
 
写真2 精一杯冴えない女子高生に見せようとしているが……   写真3 スー役は,モデル出身のなかなかの美形
 
 
  という訳で,本作の第一印象は,リメイクとしては凡庸な失敗作であった。ところが,DVDで76年版を見直して,逆に驚いた。何と古い,かったるい映画であろうか。この程度の作品で,監督の名が上がり,名作と呼ばれるのがむしろ不思議に思えた。大抵の名作は,その時代に感動した評論家か観客の印象であって,現在の観客の観賞には堪えないものも少なくない。この76年版はまさにその典型だと感じた。強いて言えば,女子高生キャリーのダサい雰囲気や,豚の血をかけられて血まみれになる姿の不気味さだけは,圧倒的に旧作のキャリーの方が勝っていた(写真4)
 
 
 
 
 
写真4 血まみれ姿の不気味さは,76年版(右)の方が上
 
 
  76年版では,キャリー役のシシー・スペイセクがアカデミー賞の主演女優賞候補に,母親役のハイパー・ローリーも助演女優賞部門にノミネートされているが,とてもそれほどの演技には見えなかった。狂信的な母親マーガレットの異様な雰囲気は,(じゃんけん後出しとはいえ)本作のジュリアン・ムーアの方が数段上だ(写真5)。これは,名キャスティングだと思う。
 
 
 
 
 
写真5 J・ムーア演じる潔癖で狂信的な母親が怖い!
 
 
  映画自体も,リメイクであることを意識せず,旧作を全く知らない世代が,本作だけを観るなら,青春映画兼(CGで強化された)スペクタクル作品として十分通用すると思う。映画史に残る作品ではなくても,シネコンで観るデート・ムービーとしては上々だ。
 さて,当欄の話題のCG/VFXである。主担当はMr.X社で,副担当はNvizibleだ。キャリーが念動力で物を動かすシーンが頻出する。一部は従来のワイヤー吊りでも達成できそうだが,もう大半はCG/VFXの産物だろう。クライマックスのプロム会場を大混乱に陥れるシーンも一大スペクタクルであり,母親に向けて多数のナイフを投げつけるシーンも印象的だった。残念なのは,そうしたシーンの画像が全く提供されないことである。
 筆者が最も気に入ったのは,敵役のクリスと彼氏のビリーに復讐するシーンだ。キャリーを轢き殺そうと突進するクルマを超能力で制止し(写真6),それを交わして破滅させるアイディアが秀逸だ。これぞCG/VFXパワーの醍醐味と言える。痛快だ。
 
 
 
 
 
写真6 スポーツカーを急停車させるのは,勿論VFX合成。この後のシーンが出色。
 
 
  余談だが,この映画を邦画としてリメイクする場合のキャスティングを考えてみた。キャリーとスーには,『桐島,部活やめるってよ』(12年8月号)の大後寿々花と橋本愛の組合せがピッタリだろう。スーの恋人で,キャリーをプロムに誘うイケメン青年には,岡田将生か佐藤健,あるいはジャニーズ系の誰かだろうか。狂信的母親役は,野際陽子と言いたいところだが,さすがに高齢過ぎるので,原田美枝子か松雪泰子あたりが相応しいと思うのだが,如何だろうか。
 
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