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O plus E誌 2010年6月号掲載
 
 
 
アイアンマン2』
(パラマウント映画)
 
 
      Iron Man 2, the Movie: (C) 2010 MVL Film Finance LLC.
Iron Man, the Character: TM & (C) 2010 Marvel Entertainment, LLC & subs.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [6月11日よりTOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー公開予定]   2010年5月11日 TOHOシネマズ スカラ座[完成披露試写会(東京)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  2作目らしいスケールアップ,UIデザインも大満足  
   覚えておられるだろうか? 前作(08年10月号)は,当欄の一昨年の年間ベスト1作品である。導入からワクワクさせるような展開で,大金持ちのチョイ悪中年男がスーパーヒーローに変身する痛快譚は小気味よかった。敵役とのアクションも美人秘書との恋も嫌みがなく,娯楽作品はかくあるべしとの見本のような傑作だった。CG/VFXはハイレベル,発明家の工作室の描写はハイセンスで,当欄としても文句なしの推奨作品であり,試写で観た途端に年間総合評価でNo.1となることを確信した映画である。
 欧米では批評家の評価も高く,観客の反応も良かったのに,その快作が日本では大した興行成績を上げられなかったことに少し驚いた。なぜだろう? 日本人が理解できないほど難解だったわけではない。それとも,決してアメコミ好きでない筆者のセンスが,長年の当欄の執筆とともにハリウッド化してしまったのだろうか? これは,同時期に多数の大作を抱えていた配給会社が,国内の広告宣伝に余り力を入れなかったからだとしか考えられない。そんな筆者の不満が米国まで届いたはずはないが,本続編の配給ルートはソニーピクチャーズからパラマウント映画へと変わった。
 曲者俳優のロバート・ダウニーJr.は,前作でブレイクし,立派にヒーロー役の大看板を背負えることを証明した。『シャーロック・ホームズ』(10年4月号)でも主役を張り,新しいホームズ像を見せてくれたのは記憶に新しい。当然,彼が引き続きアイアンマンを演じ,監督のジョン・ファヴローも続投である。相手役のグウィネス・パルトロウが変わらず魅力的な秘書役で再登場するのも嬉しいし,筆者のお気に入りのスカーレット・ヨハンソンが加わったので尚更嬉しい。敵役に『レスラー』(09年5月号)での好演が光ったミッキー・ロークとくれば,これはもう気になって仕方ない。
 米国での公開は5月7日だから,サマーシーズンのトップバッターで期待の一作のはずだ。となると,失敗が許されないこの続編は,万人受けするようにスケールアップしてくるに違いない。試写を観る前に,少しその内容を予想してみた。
 (1) 前作で舞台設定と人物紹介は済んでいるので,物語に集中できる。当然,アクションは倍増で,ボリュームたっぷりだろう。その分,CG/VFXの出番も増え,アイアンマンも縦横無尽の活躍のはずだ。
 (2) 続編の定番通り,主人公と同等かそれ以上のパワーをもつ敵が現れるに違いない。対抗するには,新型のパワードスーツを作って応戦するのだろうか?
 (3) シリーズ化必至だろうが,前作で秘書のミス・ポッツを恋人にしてしまった。となると,彼女は今後も外せないので,ボンドガールのように毎回取り替える訳には行かない。となると,スカーレット・ヨハンソンはどうなる? 浮気の相手か,それとも敵役か?
 (4) 前作でも天才科学者の工作室は魅力的で,近未来の情報機器や工具の描写も思いっきり翔んでいた。シリーズのウリにするつもりなら,これもパワーアップしてくるに違いない。「未来創像学」(30周年記念号の拙文参照のこと)の視点からは,大いに楽しみだ。
 さて,日米同時公開ではないものの,大阪での試写会は本号の締切に間に合わないので,東京での完成披露試写会に駆けつけた。往復の新幹線代と1泊のホテル代まで投資して観た本作の出来映えはといえば……。予想は80%当たっていたので,その点での満足度は高かったと言えようか。以下,その見どころである。
 ■ 予想通り,アイアンマンの登場場面はたっぷりある。メタリック・レッドと金色のアーマースーツ姿が頗るカッコいい。事前にスチル写真を観ると,ちょっと色もデザインも異なるスーツ姿のものがあった(写真1)。これは,折り畳んで携行できる簡易スーツだったが,この装着・変身シーンが凄い。本作一番の見どころだ。他に,本物とほぼ同じ形状だが,シルバー1色のアイアンマンが登場する(写真2)。この中身が誰であるかは,観てのお愉しみとしておこう。
 
   
 
写真1 これは簡易着脱式スーツ
 
   
 
写真2 中身が誰かは観てのお愉しみ
 
 
 
   ■ 前作のアクション,敵役とのバトルは,この種の映画にしては控えめだったが,今作では予想通り,大増量のサービス振りだ。空中戦も地上戦も凄まじい。アーマースーツ姿のアイアンマンは,着ぐるみでの演技,フルCG,MoCap+CGモデル等,様々な技の競演だろう(写真3)。CG/VFX担当は,ILMとDouble Negativeの米英のNo.1スタジオに加え,GOAT,Legacy Effects,Prologue等々の名前が並んでいた。PreVizには,ILMからスピンオフしたThe Third Floorの名前があった。PreVizだけでも相当な分量だろう。    
   
 
 
 
写真3 アクションシーンはボリューム満点。CG/VFXの威力十分。
 
   
   ■ (2)での予想通り,同等のパワーを備えた敵が出現する。パワーが同じなら,形状はどうでもいいと言わんがばかりの外骨格モデルだ(写真4)。ミッキー・ロークの粗野な感じとフィットしている。コスチュームは全く違うが,どことなく『スパイダーマン2』(04年8月号)のドック・オクを思い出す。後半多数登場するロボット戦士のドローン(写真5)のデザインにも,かなり手間をかけているはずだが,あまり魅力を感じなかった。  
   
 
写真4 野蛮な装具だが,威力は同等のライバル出現
 
   
 
写真5 新開発の戦闘ロボットたち
 
   
   ■ (3)の予想通り,ペッパー・ポッツ(G・パルトロウ)は『スーパーマン』のロイス・レーンに匹敵する重要な役だった。S・ヨハンソン演じるブラック・ウィドーは,最後まで敵とも味方とも分からない奇妙な役柄だ(写真6)。終盤の彼女のアクションには驚くが,このセクシーな美女の使い方としては,余り感心しなかった。  
   
 
写真6 ブラック・ウィドーは敵か味方か?
 
   
   ■ さて,工作室や小道具に関しては,本作でもしっかり楽しませてくれた(写真7)。透明のコンピュータモニターは最近の流行だが,それが徹底している。3D空間でオブジェクトを操作し,丸めて捨てる様にはニヤリとしてしまう。大きな模型を3DスキャンしてCGデータ化する下りは,もう1つの圧巻シーンだ。センスの良い技術アドバイザがいるに違いない。未来創像学的には満点で,この点では『アバター』(10年2月号)を超える力作である。それなのに,なぜ最高点の☆☆☆評価でないかといえば……。年間No.1の前作を超える評価にはできない。これが続編の限界だろう。    
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写真7 工作室のシーンは色々楽しませてくれる
Iron Man 2, the Movie: (C) 2010 MVL Film Finance LLC. Iron Man, the Character: TM & (C) 2010 Marvel Entertainment, LLC & subs. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分を一部入替え,追加しています)  
   
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