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O plus E誌 2011年10月号掲載
 
 
ワイルド・スピード MEGA MAX』
(ユニバーサル映画/
東宝東和配給 )
      (C) 2011 Universal Studios
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月1日よりTOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー公開予定]   2011年7月5日 TOHOシネマズ 梅田[完成披露試写会(大阪)]
         
   
 
ファイナル・デッドブリッジ』

(ニューライン・シネマ/
ワーナーブラザース配給 )

      (C)2011 NEW LINE PRODUCTIONS, INC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月9日よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー公開予定]   2011年9月6日 角川試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  レースの呪縛から逃れて飛躍したシリーズ最高傑作
 
 

 筆者のお気に入りのシリーズの揃い踏みである。それぞれシリーズ5作目に当たるが,各4作目も丁度2年前にこの組合せで紹介した。今回は本邦での公開日まで同じだ。CG量が少なくても,作品としてB級でも,「好みの映画」ゆえに書き続けてきたが,共にだんだんメジャーな存在になり,かつ作品の質も上がってきた。
 まずは,爆走バイオレンス・アクションの『Fast & Furious』シリーズ最新作『Fast Five』で,前作に「MEGA」を追加した邦題で登場した。相変わらず,原題にも内容にも直結しない邦題だが,前作の意味不明な「MAX」を上回ることだけは確実で,予告編からも一段とパワーアップしたことだけは感じられた。
 時代&状況設定としては,ドミニク(ヴィン・ディーゼル)とブライアン(ポール・ウォーカー)のコンビを復活させた前作の直後で,第3作『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(06年9月号)に繋がる物語という位置づけである。冒頭のシーンは既視感があると思ったら,前作のラストに直結していた。即ち,懲役刑に服役するため移動中のドミニクを,護送車を襲って脱獄させる場面から始まる。続いての仕事は,走行中の貨物列車から高級車を盗み出すという計画だ。前作のトレーラー丸ごとの奪取作戦よりも迫力あるアクション・シーンだった(写真1)。前半のつかみとしては極上の出来で,CG/VFXの活躍場面である。疾走する貨物列車も鉄橋も,谷底へ落下するクルマもCG描写だろう(写真2)

   
 
写真1 冒頭の見せ場は,列車と絡んだ大アクション
 
   
 
 
 
写真2 予告編でも流れるこの大アクション・シーンは,VFXの賜物
 
   
 

 中盤以降の本来の物語は,余生を他国で自由に生きる資金稼ぎのため,リオの裏社会を牛耳る実業家の汚れた金を横取りする話だ。その計画実行のため,本シリーズの脇役達が勢揃いし,総勢9名の個性派チームが結成される(写真3)。さながら『スパイ大作戦(Mission Impossible)』や『オーシャンズ11』シリーズを彷彿とさせる味付けである。知恵を使った強奪作戦は楽しいが,その分定番のストリート・カーレースのシーンがほとんどないのが少し淋しい。カーチェイスとしては,クライマックスに奪取した大型金庫を引きずっての逃亡シーンが登場する。アイディアとしては秀逸だ。この立方体状の金庫はCGなのか,一部は実物(張りぼて)なのか,ちょっと見分けがつかなかった(写真4) 。金庫も背景のリオの町も大半はCG/VFXの産物で,かなり綿密にプレビズして,構図やカメラワークをデザインしたと思われる。

   
 
写真3 集められたのは,スパイ大作戦並みのプロフェッショナル・チーム
 
   
 
写真4 大金庫を引きずっての異色のカーチェイス
 
   
 

 ともあれ,シリーズ屈指の娯楽大作に仕上がっている。レース・シーンは少ないが,お目当てのスポーツ・カーは多数しっかりと登場する(写真5)。ストーリーに負担をかけず,上手い登場のさせ方だ。監督ジャスティン・リン,脚本クリス・モーガンは3作目以降同じであるのに,駄作→標準レベル→傑作へと進化したのは,彼らの力量が向上したためだろうか,単にどんどん製作費をかけられるようになったからだろうか。
 本作の成否に関わらず,公開前からしっかり6作目が予定されていて,次回作へのつなぎが最後に入っている。どうやって死人を生き返らすのかが楽しみだ。多分,双子の姉か妹なのだろうと予想しておこう。

   
 
 
 
 
 
写真5 例によって,マニア垂涎の強力モデル揃い。
上左:フォードGT40,上右:ポルシェGT3,下:スバルWRX。
(C) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
  今やメジャーな存在となった人気ホラーシリーズ
 
 

 一方,登場人物も場所も一作毎に独立している『Final Destination』シリーズの邦題は,3作目以降『ファイナル・デッド××××』が定着し,××××に大惨事が起こる場所が示されている。まず冒頭で主人公となる青年(もしくは若い女性)が大惨劇の予知夢を見て警告を発し,彼と友人たちは難を逃れる。ところが,「死の運命」から逃れることはできず,1人ずつ凄惨な死を迎えるというのがお決まりのパターンである。即ち,本作の惨事の場所は「橋」であり,巨大吊り橋の崩落事故(写真6)から,主人公のサム(ニコラス・ダゴスト)と彼の上司,同僚等8人が生き残る。問題はその後,この8人がどんな形で死を迎えるか,あの手この手の工夫が見どころだ(写真7)。何人かは助かったと思わせておいて,絶対に定型パターンを崩さないのが前作までなので,それを踏襲するのか,今回はその予想を裏切るのか……。

   
 
写真6 冒頭の橋の破壊・崩落シーンが,この映画の鍵
 
   
 
写真7 無名の俳優が大半だが,準主役のマイルズ・フィッシャー
(右から2人目)は,トム・クルーズのそっくりさん
 
   
 

 シリーズとしては前作から既に3D化されているが,それもフェイク3Dでなく,2台のカメラを使ったリアル3Dである。飛び出し感を強調したアトラクション系の映像がウリだ。監督は,本作が長編デビューとなるスティーブン・クォーレ。ジェームズ・キャメロン監督に気に入られ,『アビス』(89)『ターミネーター2』(91)『タイタニック』(97)『アバター』(09)の第二班監督・撮影,VFX監修を担当し,IMAX 3D映画『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』(03年10月号) では共同監督も務めている。それならVFX経験も十分で,3Dカメラの使い方にも通暁している訳だ。
 まずVFXとしては,吊り橋にひび割れが入り,飴のように折れ曲がり,クルマが次々と落下するシーンはCG技術の見せ場だ。ちょっと大げさで漫画っぽいと感じるほどである。折れた橋から人が垂直に落下し,橋げたにぶつかるシーンは,『タイタニック』の1シーンを思い出す。終盤のVFXは,ジェット機のエンジンが火を吹き,空中で炎上する場面で登場する。ちょっとネタバレになるが,ここで第1作目と繋がっているとだけ言っておこう。この爆発炎上シーンは旧作の使い回しではなく,新たにスケールアップした映像だ。本作はリアル3D撮影なので,作り直しは当然であるが。
 1人ずつ凄惨な死を迎えるシーンは,パターンが出尽くしたのか,以前ほどの緊迫感や迫り来る恐怖感がない。3D効果を強調する余り,滑稽味が増し,怖さの演出が少し疎かになったのだろうか。強いて挙げれば,筆者がもっとも気味悪く感じたのは,レイシック手術のシーン(写真8)だ。翌日眼科医に行く予定だったが,思わず躊躇してしまった(笑)。

   
 
 
 
写真8 これを見たら,怖くて眼科医に行けなくなる
(C)2011 NEW LINE PRODUCTIONS, INC
 
   
 

 New Line Cinemaは元々Time Warner傘下の映画製作会社であるが,従来のギャガ配給でなく,親会社のワーナー配給となり,本シリーズもすっかりメジャーな存在になってしまった。それでもB級ホラーの味付けが残っているのは嬉しいし,まだまだこのスタイルを維持していってもらいたいものだ。

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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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