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O plus E誌 2006年9月号掲載
 
 
purasu
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』
(ユニバーサル映画/UIP配給)
      (c)2006 Universal Studios  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月16日より有楽座ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2006年8月9日 UIP試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  爆走シリーズの3作目は東京が舞台でヒートアップ  
 

 ストリート・カー・レースを題材にしたバイオレンス・アクション・シリーズの第3弾だ。前2作は,01年10月号と03年9月号で紹介しているが,いずれも米国では1億ドル超のヒット作となった。スーパーチャージされた名車の数々は,クルマファンにはたまらない魅力だった。「この映画はプロのスタント・ドライバーの運転によるもので,絶対に真似しないように」との注が毎度映画の最後についていた。
 1作目はLAが舞台で,囮捜査中の若い刑事のポール・ウォーカーが,アウトローのヴィン・ディーゼルにレースで挑戦するという設定だった。2作目はP・ウォーカーが1枚看板になり,元刑事がマイアミで再び囮捜査に協力するという続編だった。この3作目は前2作と全く関わりのない設定で,監督も再交替して台湾出身の若手監督ジャスティン・リンになった。主演は『ジャーヘッド』(05)等のルーカス・ブラック,ヒロインは新人のナタリー・ケリーというが,要するに皆無名の格安タレントたちだ。人気シリーズにしては,ケチり過ぎだ。
 おまけに,クルマも前2作に登場した車種は使わないという方針から小粒になり,94年マツダRX7,01年日産シルビアS15,02年日産フェアレディ350Zなどが目立つ程度で,後は本年度モデルで埋めている。そんな中で主人公のショーンが何と67年フォード・マスタングに01年日産スカイラインのエンジンを搭載して登場するのは,時代錯誤なのか,それともファンサービスのつもりなのだろうか。
 そんな小粒になった3作目だが,日本人にとっての救いは,東京が舞台になったことだろう(写真 1)。日本が生み出したドリフト走行こそが,この映画の主役でもある。渋谷,原宿,六本木,レインボーブリッジ等が映るのは嬉しいし,日本の誇る国際アクション・スター,JJサニー千葉(千葉真一)の登場はもっと嬉しい。
 東京での本格ロケは勿論,LAで6ブロックを閉鎖して渋谷の町を再現したという。そこまでするからは,日本市場を意識した設定だろうと思いきや,キャスティングはいただけない。チョイ役で妻夫木聡やKONISHIKIが登場するのはご愛嬌として,ヤクザの親分カマタ(千葉真一)の取り巻きの不気味さはどうだ。外国映画での日本の描かれ方には慣れていても,こんな奇妙な日本人はいない。もっと決定的なのは,カマタの甥で敵役のD. K.(ブライアン・ティー)の救い難い日本語の拙さだ。この重要な日本人役には,英語が下手であっても日本人俳優を起用すべきだっただろう。
 さて,本欄の主題のVFXだが,主担当は1作目から従事しているHammerhead Productionsで, Rhythm & Hues,CIS Hollywood,Cafe FXなどが分担している。ただし,CG使用量はそう多くなく, 市街地や山道のアップシーンでのドリフト走行は,実写で収録されていると思われる(写真2)。激突シーンの大半もそうだろう。その迫力だけは,本シリーズの最後の砦だ。
 それでも,首都高速上や109から渋谷ハチ公前交差点いたるチェイス・シーンで,一般車の間をすり抜けるクルマはCGと思われる。これは気にしなければ,見分けがつかないレベルに仕上がっている。同交差点の人混みもデジタル合成だろうが,どことなく動きがぎこちないのは,クルマと人間の難しさの違いだろうか。
 小粒になったシリーズであるが,最後にちょっと嬉しい人物が登場することをファンに告げておこう。

 
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写真1 東京でのロケ中心で,日本人には嬉しい
  写真2 この山道でのドリフトはプロのスタントドライブ
 
 
(c)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
 
 
   
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