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O plus E誌 2011年3月号掲載
 
 
 
 
『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』
(20世紀フォックス映画)
 
 
      (C) 2010 Twentieth Century Fox Film Corporation and Walden Media, LLC.

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [2月25日よりTOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー公開]   2011年1月25日 TOHOシネマズ 梅田[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  逆境の中の3作目のCG/VFXは,なかなかの健闘  
  全7巻の原作を1巻ずつなぞるファンタジー・アドベンチャー・シリーズの第3作目である。『ロード・オブ・ザ・リング』3部作(01 - 03)の大ヒット以降,雨後の筍のように続々と登場したファンタジー映画も,最近は随分少なくなった。さすがに飽きられたのと,製作費がかさむことから,安易な企画が通らなくなったのだろう。本原作は英国児童文学の金字塔で,1億冊以上という総発行部数は,「ハリー・ポッター」シリーズに続く世界第2位だそうだ。
 第1作目『…/第1章:ライオンと魔女』はかなりのヒットとなり,第78回アカデミー賞にはメイク賞,視覚効果賞,音響賞の3部門にノミネートされ,メイクアップ部門でオスカーを得ている。ところが,第2作目『…/第2章:カスピアン王子の角笛』がさほどの成績を収めなかったため,ウォルト・ディズニー映画が,3作目の製作・配給から撤退してしまった。折りからの世界経済不況も影響し,『ライラの冒険』や『エラゴン』などのシリーズは,2作目も作れず,1作目だけで終わってしまった。この逆風の中で映画化権をもつウォルデン・メディアは,20世紀フォックスを配給のパートナーに選び,ようやく3作目の完成にこぎ着けた。しかも,3D化までも達成できたことは素直に喜ばしい。本欄がこのシリーズの存続を望むのは,勿論,VFX界の進歩に繋がるしっかりした功績を残してきたからである。
 2作目までのアンドリュー・アダムソン監督は製作に回り,監督には『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(00年3月号)のマイケル・アプテッドが起用された。 本シリーズの人気が上がらないのは,全7作が年代順でなく,約2500年間というナルニア国の歴史を行きつ戻りつするためと言われている。全巻を通して愛読しないと,その壮大な物語が把握できないハンデがあるからだ。ところが,第2〜4章は時代順であり,しかも第2章と第3章はナルニア暦で3年しか違わない。即ち,前作の活躍したイケメンのカスピアン王子(ベン・バーンズ)をそのまま続投させらせる。ベベンジー家4人兄妹の中では,次男のエドマンド(スキャンダー・ケインズ)と末っ子のルーシー(ジョージー・ヘンリー)だけが本作で活躍するという設定である。
 原作では第3作目の副題が「朝びらき丸 東の海へ」であるように,ナルニアの王となったカスピアンが建造させた帆船「朝びらき丸(Dawn Treader)」も本作の主役の1つだ。2700万ドル,21週間もかけて作られた船は,豪華セットとも言える威容(写真1)だが,海上航行機能はない。このため,海の上を進むシーンはCG/VFXの力を借りている(写真2)。現実世界で,壁の絵の中から溢れ出る大量の水も勿論CGで,いずれもいい出来だ。

 
   
 
写真1 張りぼてとはいえ,相当豪華な装飾だ
 
   
 
写真2 朝びらき丸の航行シーンは,勿論VFXの産物
 
   
   VFXの主担当は前作と同様にMPCであり,盟友であるFramestore, Cinesite両社,さらにThe Senate VFX,KNB EFX Group等も参加している。VFXの継続性が保たれたせいか,創造主であるライオンのアスランの威容は健在である(写真3)。本作では,特にネズミのリーピチープの質的向上が目立っていた(写真4)。水に濡れた毛並みの表現は,約10年前の『スチュアート・リトル』(00年6月号) と比べると格段の進歩だ。表情や動きは手付けのアニメーションとMoCapを巧みに混在させた上に,CGだけでなく実物模型も使われたようだ。
 
   
 
写真3 アスランはFramestoe社の担当。幾何モデルは生かしつつ,リグは再設定された。
 
   
 
写真4 リーピチープの描写が絶妙で,3D映像で映える
 
   
   朝びらき丸上空に飛来するドラゴン(写真5)は,またかという気もしたが,CGの質自体は平均以上の出来映えだった。終盤の見どころは,海の波が静止し,大きな壁を作るシーンだ(写真6)。『十戒』(56)へのオマージュだと思われるが,水の青さの微妙な表現が素晴らしい。『十戒』そのものがリメイクされ,最新CG技術で海が割れるシーンを眺めてみたいと感じた。       
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写真5 これがこの映画のドラゴン。平均以上の出来。
 
   
 
 
 
写真6 十戒を彷彿とさせる水の壁が終盤最大の見もの
(C) 2010 Twentieth Century Fox Film Corporation and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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