head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
title
 
O plus E誌 2006年3月号掲載
 
 
『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』
(ウォルト・ディズニー映画
/ブエナビスタ配給)
 
      THE CHRONICLES OF NARNIA, NARNIA, and all book titles, characters and locales original thereto are trademarks of C.S. Lewis Pte Ltd. and are used with permission. (C)Disney/Walden.  
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2006年1月17日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
  [3月4日より丸の内ビカデリーほか全国松竹・東急系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  まるで生きているかのようなCG製ライオンに驚嘆  
 

 こちらは,早くから原作本とタイアップしての一大キャンペーンを張ったファミリー向き映画の大作だ。岩波書店から刊行されている原作は全7巻で,英国伝統のファンタジーの代表的作品であり,作者のC. S. ルイスは『ロード・オブ・ザ・リング』のJ. R. R. トールキンと文学的な刺激を与え合った仲だという。なるほど,それなら『ハリー・ポッター』『ロード…』両シリーズの大成功に刺激され,ディズニーが3匹目の泥鰌を狙って映画化に踏み切ったのも無理はない。それだけの素地がある上に,ディズニー・ブランドが加わるとなれば,最初から商業的成功が約束されているようなものだ。
 重厚な音楽を伴った予告編からは,『ロード…』に匹敵する壮大なタッチの物語を想像したが,実際には,もう少し下の年齢層を主対象にしたお伽話だ。上映時間は2時間20分だが,『ハリポタ』のように原作のエピソードの詰め込み過ぎの気忙しさはなく,『ロード…』のように多様な種族の特性や関係を頭に入れる煩わしさもない。緩やかな語り口で子供たちをファンタジーの世界へと誘ってくれる。
物語の発端は第2次世界大戦下の空爆が続くロンドンから始まり,ペベンシー家の4人兄妹が預けられる疎開先の古い屋敷に舞台を転じる。この屋敷の空き部屋の衣裳箪笥の扉の奥が真っ白な雪の「ナルニア国」に通じていたことから,4人が遭遇する不思議な物語が始まる…。
 監督は,フルCGアニメ『シュレック』(01年12月号)『シュレック2』(04年8月号)でメガヒットを飛ばしたアンドリュー・アダムソン。男2女2の兄弟姉妹は,いずれも無名近いか全くの新人の少年少女だ。その中では,末っ子のルーシーを演じるジョージー・ヘンリーが愛くるしく,表情豊かで,存在感も大きい。それに対して,年長の他の3人の演技は今イチで,もう少し芸達者を揃えられなかったのかと,ちょっと残念だ。
 副題に示す「ライオンと魔女」は別の意味での主人公だ。ナルニア国の王であるライオンの「アスラン」の声は,『シンドラーのリスト』(93)のリーアム・ニーソンが演じ,「白い魔女」には『コンスタンティン』(05年4月号)で大天使役を演じたティルダ・スウィントンを配した。こちらは十分合格点だ。
 全7部作は2555年間にも及ぶ壮大な物語だが,原作の発表順は時代順ではない。この第1話はナルニア国紀元1000年に当たっているが,第2話以降2303年,2306年,2356年と進むかと思えば,第5話で1014年に戻り,第6話が創世の元年,第7話が滅亡の2555年という展開である。よって,『ハリポタ』のように出演者の成長を気にすることはないし,一話毎に自在にキャスティングできるので製作しやすいだろう。
 さて本欄の興味はCG/VFXだが,『ロード…』を超える視覚効果を生み出しているかといえば,じゃんけん後出しだけに答えは勿論Yesだ。以下,その要点である。
 ■ 主力3スタジオは,しゃべる動物の表現に実績のあるRhythm & Hues,昨年『スパイダーマン2』でオスカーを得たSony Pictures Imageworks,そして老舗ILMの順にクレジットされている。その他に,Weta Workshop,KNB EFX Group, New Deal Studio…と続く。
 ■ 何と言っても,最大の見どころは偉大な王アスランで,このライオンが本当にCGで描いたのかと驚く(写真2)。たてがみや肌の質感は言うまでもなく,岩から降り,のっしのっしと歩く様,飛びかかる動きも完璧だ。予告編ではライオンがしゃべるというのに違和感を覚えたが,慣れるとそんなことはない。威厳に満ちているかと思えば,微笑む顔,疲れ果てた顔まで表情も豊かで,リーアム・ニーソンの声と完全に同期している。

   
 
 
 
写真2 この威厳あるライオンがCGとは…
THE CHRONICLES OF NARNIA, NARNIA, and all book titles, characters and locales original thereto are trademarks of C.S. Lewis Pte Ltd. and are used with permission. (C)Disney/Walden.
 
     
 

 ■ 約2年かけて準備したこのCG製のアスランに比べれば,『ジュマンジ』(95)のアニマトロニクス製のライオンはお笑いだ。当時はそれでも感心したのだから,この10年間のCG表現力の進歩はすさまじい。この映画でもKNB社が3体のアニマトロニクスを提供している。1つはフルサイズで構図や演出を考える参照用,2つめは石舞台の上での瀕死のアスランの頭部,最後はスーザンとルーシーが背に乗って疾走するための躯体だ。いずれも表情まで変化できる精巧さを備えておきながら,最終的にはR&H製のCG映像と差し替えられている。すごい。
 ■ ライオン以外では,狼や狐が今イチだったが,豹や白熊は上出来だった。中でも極上品はビーバー夫妻だ。『ロード…』で12種類のクリーチャを生み出したWeta は,今回60種類をデザインした。フルCGで描かれたもの(写真3),一部CGやアニマトロニクスで置き換え(写真4),着ぐるみやメイクで実現したもの(写真5)など,その実現方法は多彩だ。それらが入り乱れる戦いのシーンは,正に百花繚乱だ。

 
     
 
写真3 Gryphonなる怪鳥は無論CG製
 
写真4 半人半獣はグリーンのタイツを穿いて撮影
 
 

 

 
 
 
 
写真5 この牡牛は,どうみても着ぐるみだろう
THE CHRONICLES OF NARNIA, NARNIA, and all book titles, characters and locales original thereto are trademarks of C.S. Lewis Pte Ltd. and are used with permission. (C)Disney/Walden.
 
 
  ()  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next
 
     
<>br