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O plus E誌 2008年6月号掲載
 
 
 
ナルニア国物語
/第2章:カスピアン王子の角笛』
(ウォルト・ディズニー映画)
 
      (C) THE CHRONICLES OF NARNIA, NARNIA, and all book titles, characters and locales original thereto are trademarks and are used with permission.
(C) Disney Enterprises Inc., and Walden Media LLC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [5月21日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急洋画系にて公開中]   2008年5月13日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  戦闘部分は圧巻,斬新な表現への工夫が感じられる  
 

 今月号には間に合わないかと半ば諦めていたが,締切り間際の試写会案内が飛び込んできた。嬉しい誤算である。ただし,まともなプレスシートはなく,メイキング情報も目にしていないので,以下は予備知識なく,一度だけスクリーンを眺めての解説・評論である。
 またまた毎号のように取り上げるファンタジーの一作である。日本の文化村系映画観客には,こうした絵空事にはついて行けないという人も少なくないが,世界市場では多くのファンを有している。嫌いなら悪口を言わずに観なければいい。前作『第1章:ライオンと魔女』(06年3月号)が興行的に成功しただけに,一段とパワーアップした続編が予想された。前作は,善悪の構図は単純だが,映像的には見せ場が多く,VFXは質・量ともに最高水準だった。本作もその路線を踏襲している。
 時代は前作の約1300年後で,ペベンシー家の4兄妹は自分たちの時代(第2次世界大戦下のロンドン)に戻り,ナルニア国はテルマール人に支配されているという設定だ。そのテルマール国のカスピアン王子が王位簒奪者の叔父ミラースから逃れて森に逃げる所から物語は始まる。危機に瀕した王子が吹いた角笛で,4兄妹は時空間をワープし,ナルニア国へと呼び戻される……。前作のスローな導入部に比べ,本作はいきなりワクワクドキドキの展開だ。第1章未見の観客には少し分かりにくいので,「アスラン」とはナルニア国の創造主で,ライオンの姿をしている程度の予備知識はあった方が良い。
 監督・脚本のアンドリュー・アダムソン,4兄妹,アスランの声のリーアム・ニーソンは前作と同じだが,新しく登場する主役は,カスピアン王子役のベン・バーンズである。英国生まれの27歳で,まさに貴公子然としたルックスだ。以下,VFXを中心とした感想である。
 ■ VFXスーパバイザーのディーン・ライトは続投だが,VFX担当の主要3社が前作のRhythms & Hues, SPIW, ILMから,Moving Picture Co., Framestore CFC, Weta Digitalの3社に変わっていることに驚いた。当初からシリーズ化するつもりで,1作目の作業とオーバーラップして,別会社に2作目のVFXを事前準備させていたのだろうか。新興勢力の3社とも今やメジャースタジオとしての実力は十分だが,あの生きているかのようなライオンや半人半獣のセントールのCG表現は,同一スタジオでなくても大丈夫なのか不思議だ。ノウハウがそっくり移管されたのか,担当スタッフが移籍したのか,アスランは前作にも増して威厳のある雄姿を見せ(写真1),セントールは複雑な構図の中を駆け巡り,怪鳥グリフィンも一段とダイナミックに飛翔していた(写真2)。恐れ入る。
 ■ 一方アニマトロニクス担当のKNB EFX Groupやミニチュア,特殊メイクのWeta Workshopは,前作に引き続きの参加である。本作でもミニチュアが多用されているように見受けられた。ただし,何が実写で何がCGかの見分けは全くつかない。もはやこのレベルとなると,筆者が論評するレベルを超えている。とりわけ,光の使い方が秀逸だ。本欄で邦画のVFXをそこそこ褒めているが,それとは全く次元が違う評価だと理解されたい。
 ■ 前作同様,CGで描いた動物が多数登場するが,いずれも素晴らしい出来だ。前作のビーバー夫妻に代わって,アナグマとネズミがコミカルな役柄を務める(写真3)。毛並みの表現といい動きといい,最近もっとも進歩が顕著なのがこうしたCGアニマルの表現だ。『ライラの冒険』シリーズ(08年3月号)とはいいライバルで,今後も互いに刺激し合って技術を向上させていくことだろう。

 
   
 
写真1 ナルニア国の創造主アスラン   写真2 クリフォンの雄大な飛翔
 

 
 
 

写真3 ナルニアの戦士グレンストームとリーピチープ

 
     
 

 ■ テンマールの大軍の攻撃を迎え撃つナルニア軍は多勢に無勢だが,その戦闘シーンは実に見応えがあった(写真4)。延々と大規模な見せ場が続くのは,最近のハリウッド系大作の常だが,この戦闘シーンは,戦い方や見せ方に斬新なアイデアがあり,工夫の跡が随所に見られた。大規模な投石機,地面の陥没だけでも感心したが,最後に根を振り回す古木や巨大な「川の神」までが登場するに至っては,満腹感に浸れる。
 ■ 目を凝らして観たが,どうしても分からないことがある。本作品では,トランプキンとニカブリクという2人の小人が登場する(写真5)。彼らは,セントール同様に下半身だけデジタル合成したのだろうか,それとも本当に短躯の俳優なのだろうか? どう見ても本物にしか見えないのだが,それにしては演技力があり過ぎる。特に,トランプキンの演技は素晴らしい。
 ■ 試写終了後,隣の女性達は「良かったわぁ。すごかったわぁ」と感嘆していた。何を観てもこの人達はこう言う。一方,出口付近では「もうヤメや。こんな映画は2度と観んわ」と憎まれ口を利く男性もいた。先日の『隠し砦の…』で悪口雑言を吐いていたジジイだった。もう観るなよ。あんたが楽しめるジャンルの映画じゃないよ。ちなみに,本欄の評点☆☆☆は最高水準のVFXに対する評価で,作品の芸術性は含んでいない。  

 
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写真4 投石機を有したテンマール軍 
 
     
 
 
 

写真5 小人のトランプキンとニカブリク。VFX処理ではなく,本物?
(C) THE CHRONICLES OF NARNIA, NARNIA, and all book titles, characters and locales original thereto are trademarks and are used with permission.
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  (画像は,O plus E誌掲載分から削除・追加しています)  
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