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O plus E誌 2000年3月号掲載
 
 
『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』
(MGM映画/UIP配給)
 
       
      (2000/1/19 イマジカ試写室)  
         
     
  噂通りのファン必見作品  
   いやぁ,面白い。往年のボンド・ファン必見の快心作である。007シリーズ19作目,5代目ボンドのピアーズ・ブロスナンとの3本契約の最終作で,久々の大ヒットとなった。米国では感謝祭休暇の前週に公開され,もちろん北米興行収入No. 1になった。シリーズ中のベスト3との前評判だったが,期待にたがわず堪能した。
 レンタル・ビデオ屋の棚で確認したが,過去18作品はちゃんと全部観ていた。かつては映画館で何度も観たのに,最近は機内ビデオやレンタル・ビデオで済ませることも少なくない(そーだ,昔はビデオなんてなかったんだ!)。かつて授業中に7の字をガン・マークに書き換えて遊んだ団塊の世代のオジサン達に,「久々に映画館に足を運んでみなよ。ショーン・コネリーでなくたって,こんなに面白いんだから」と勧めたい一作である。
 最近MGM映画のライオン・マークを目にすることが少なくなったのは残念だが,ジョン・バリー楽団のあのテーマ・ミュージックに乗って,銃口の向こうに山高帽のジェームス・ボンドが登場してくるだけで,何やらワクワクしてくる。シリーズ最長20分ものイントロ部も,息もつかせずあっという間に過ぎてしまった。テムズ川のボート・チェイスは歯切れがいいし,サービス精神満点で,グリニッジに完成のミレニアム・ドームもしっかり見せてくれた。
 ブロスナン・ボンドは,いよいよ油が乗ってきた。コネリー・ボンドとは別のいい味を出している(そういえば昨年『エントラップメント』のS・コネリーと『トーマス・クラウン・アフェア』のP・ブロスナンは,同じような役柄で張り合っていた)。監督は,ドキュメンタリー映画出身のマイケル・アプテッド。本シリーズ初監督で,アクション作品の経験もほとんどないらしいが,これが良かったのだろう。少し引き締まったドラマチックな演出を見せてくれた。是非,この組み合わせでもう何作か見たいものだ。
 007シリーズらしく,美女,小道具,クルマ(今回もBMWだが,ちょっと控えめ)とアクションが売りで,それにM,Q,マネペニー嬢とお馴染みメンバーが登場してくる。寅さんシリーズと同様,ファンにはこの定型パターンがたまらなく嬉しい。本作品公開の後,Q役のデズモンド・リューウェインが交通事故で亡くなった。あの枯れた味の名脇役は,さしずめ,寅さんにとっての御前様といった存在だろうか。映画中の引退を仄めかすシーンでは,思わず黙祷をしてしまった。
 派手なアクションの連続のハリウッド流ノンストップ・ムービーには辟易してきたが,それに慣らされたのか,最近は少しテンポの遅い映画,盛り上がりのない演出には物足りなさを感じてしまう。アクション麻薬とでも言うべきものだろうか。その点,アクション本家の007には,英国映画らしいスマートさが見られる。どぎつさはなく,かつ盛り上げるべきところは盛り上げてスカッとさせてくれる。シリーズ初期のテンポの良さが蘇ったといえるだろう。
 さて,スタントやワイヤー吊り以外に,007にVFXはあるのかといえば,はっきりそれとわかる形でCG映像が登場してきた。まず,タイトル・バックは,原田大三郎調のCGアート作品だ。かなりの秀作で,ズバリ筆者好みである。
 
 
(a) 巨大な顔を映す3D空間ディスプレイ (b) ボートから気球に飛び移るシーン
写真 『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』
 
 空間中に浮かぶ大きな頭部の表示(写真a)は,ホログラフィック・ディスプレイのつもりなのだろう。ボリューム・レンダリングとテクスチャ・マッピングの併用だろうが,これもいい出来栄えである。X線透視メガネのシーンは,ちょっとバカバカしいお遊びだが,こういうアクセントとしてのVFXも楽しくていいものだ。
 アクション・シーンには,それと分からない形でディジタル合成が多用されているのかと思ったが,公開メイキング写真を見る限り,かなり本物のアクションとスタントで決めているようだ(写真b)。
 シリーズ初,1億ドル超の製作費をかけただけあって,一級娯楽作品に仕上がっている。皆さんも見てネ。
  (SPIDER)  
     
  これなら女性にも通じます  
 
評論家のはずが,今回は広報・宣伝マンのようにはしゃいでいますね(笑)。
ええ,これがファンのファンたる所以です。タイガース久々の優勝のようなものです(笑)。でもまあ,これは男性用映画かな。
大きな試写室もいつもより混んでましたし,中年以上の男性が多かったですね。
あなたは007なんて観てないでしょう?
4〜5本くらいは観てますよ。いつも大味で,お決まりのパターンでしたが,今回はいいですね。これなら女性も見てられます。
何が違っていましたか?
いつもニヤけているP・ブロスナンもシリアスな顔をしていたし,ストーリーがどうなるか分からなかったのが一番じゃないですか。小道具もバカバカしすぎるものがなかったです。
ソフィー・マルソー(エレクトラ役)はボンドガールとして異色の役柄でした。敵役のレナード(ロバート・カーライル)も,ただのワルじゃなく,個性的なキャラクタでしたね。
上司のMは,いつの間にか女性になっていたんですね。
P・ブロスナンと同じく3作目です。英国の名女優で,『恋に落ちたシェイクスピア』のエリザベス1世役をやってたでしょ。
あーっ,そうでしたか。あの女王様は超厚化粧で,まるで違って見えましたね(笑)。
私は,Mが女性というのはどうもしっくり来ないのですが,今回のMは出番も多く,存在感が大きかったですね。
エリザベス女王もサッチャー元首相も,イギリスは女性が強いんです(笑)。ところで,評点はなんですか?
うーん,普通にはでしょうけどね。007映画という制約条件の中で,上手く仕上げていることを評価しましょう。ファンにも女性にも満足ということで,シリーズ中ではということにしておきましょう。
 
   
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