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O plus E誌 2008年9月号掲載
 
ウォンテッド』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)
 
    (C) 2008 Universal Studios  
オフィシャルサイト[日本語][英語]
[9月20日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開予定] 2008年7月17日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
   
(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)
スタイリッシュな暴力ムービー,VFXもハイレベル

 ずばりスタイリッシュで,斬新なビジュアルがウリの映画だ。スピーディで破壊的なアクション,予告編やTVスポットを観ただけでそう感じるだろう。実は,それだけで済ませた方がずっと印象はいい。いやいや,話題作ではあるし,VFX表現もかなり優れているのだが…。
 原作はマーク・ミラーのグラフィック・ノベルで,その映画化を『ナイト・ウォッチ』(04)で一躍世界に羽ばたいたロシア人監督ティムール・ベクマンベトフが担当する。セクシーな女スナイパー,フォックス役のアンジェリーナ・ジョリーが宣伝の前面に出ているが,実質的な主演は『つぐない』(08年4月号)のジェームズ・マカヴォイだ。秘密の暗殺組織に誘われ,命がけの戦いをする若者ウェスリー・ギブソンを演じている。この組織のリーダー格の年長者スローンも重要人物だが,先月の『ダークナイト』に続いて,モーガン・フリーマンが渋い存在感のある演技を見せてくれる。
 題名の意味は「お尋ね者」ではなく,普通の青年が太古から続く暗殺集団「フラタニティ」の王位継承を求められる存在だということらしい。神に代わって「運命の意志」を実践し,「一を倒して,千を救う」とは随分都合のいい暗殺者集団の言い分だが,そこは映画だから,まぁいいだろう。何しろ銃がカッコイイ。どれもこれも只者ではないデザインだ(写真1)。その弾丸が,スピンしながらカーブして標的に向かう表現も斬新だ。A・ジョリーが身をくねらせるカー・チェイスのシーンにも痺れる。かように全編スタイリッシュではあるが,どうも好きになれないのが,暴力的過ぎる表現の数々だ。『ファイト・クラブ』(99年12月号)の印象と似ている。

   

写真1 銃を構える仕草も,銃自体も実にカッコいい

   
 VFXには見どころの多い映画だ。全800余のVFXショットの内,約500をモスクワのBazelevs Studiosが担当する。他にも,Framestore,Hammerhead, Hydraulx, Pacific Title, Hatch FX,CIS Hollywoodといった各社の名前がエンドクレジットを飾っている。
 まずは,前述の弾丸がカーブを描くスローモーション映像が目を引く。そのアップのシーンで「GOODBYE」と描いてあるのはご愛嬌だが(写真2),弾丸が頭を突き抜ける表現も面白い。ガラスを突き破るシーン(写真3)やその他の破壊シーン,カースタントもデジタル技術の産物だろう。いずれもビジュアル的に凝っている。
 後半の大量のネズミも勿論CG製だろうが,特筆に値するのは,大鉄橋からの列車の脱線墜落シーンだ。質・量共に素晴らしく,『キングコング』(06年1月号)でのコングとV-レックスとの戦いに匹敵する大落下シーンだ(写真4)。VFX史に残る名場面だろう。これをロシアのVFXスタジオが制作できたのかと驚いたが,ここはロンドンのFramestore社の担当とのことだ。少し安心した。
 VFX的には高い評価を下しつつも,評点が低いのは,演出全般がどうも筆者の肌に合わないからだ。ただし,このタッチを若者は好むかも知れない。ヘヴィメタルやハードコア・パンクを聴いている気分だ。『スピード・レーサー』(08年7月号)を「10%の快感,90%の不快感」と評したが,この映画には30%か40%の信奉者がいるかも知れない。そう感じつつも,暴力的表現ゆえに,この映画はやはり好きになれなかった。
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写真2 CGで描く弾丸軌跡が秀逸(これはご愛嬌だが)   写真3 ガラスを突き破る破壊シーンもスタイリッシュ
   

写真4 Framestore社が描いた列車の落下シーン.渓谷も鉄橋もすべてCG製.
(C) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

   
(画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)
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