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O plus E誌 2009年7月号掲載
 
 
『ノウイング
(サミット・エンタテイン メント
/東宝東和配給)
      (C) 2009 Summit Entertainment, LLC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [7月10日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2009年5月12日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
 
         
   
 
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ウィッチマウンテン/地図から消された山』

(ウォルト・ディズニー映画)

      (C) 2008 Disney Enterprises, Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [7月4日より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー公開予定]   2009年6月4日 角川試写室(大阪)
 
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  B級タッチながら,怖さの演出が冴えるSFホラー
 
 

 2本まとめて語ろう。予告編を観た当初の印象では,それぞれ典型的なパニック映画とアクション・アドベンチャーで違うジャンルだと思ったのだが,見終わった後の感じはよく似ている。今もしっかりパンフレットを観なければ,どっちがどっちだったか区別できないほどだ。共に宇宙船が登場するSFミステリーで,今年3月に連続して北米興収No.1の座についている。
 まずは,混雑する道路上に飛行機が落ちてくる予告編のシーン(写真1)が強烈な印象を与えた『ノウイング』は,『アイ,ロボット』(04年9月号) のアレックス・プロヤス監督が放つディザスター・ムービー超大作との触れ込みだった。なるほど,この墜落と事故後の残骸シーン(写真2)も好い出来だが,地下鉄の暴走・脱線転覆による破壊と爆発のシーンも凄かった(写真3)。これでもかと言わんがばかりに,派手な破壊シーンが続く(写真4)。この両シーンを観る限り立派なパニック映画であり,VFX的にも現在の世界水準をキープしている。VFX担当は,豪州のアニマル・ロジック社で,あの『マトリックス』(99年9月号)の斬新なCGを作り上げたスタジオだ。

   
 
写真1 予告編に登場するこのシーンが惨事の始まり
 
   
 
 
 
写真2 墜落後の爆発・炎上の表現もなかなかのもの
 
   
 
写真3 地下鉄の脱線事故はPreVizで綿密に検討
 
   
 
 
 

写真4 駅構内のセットに炎や粉塵を描き加えて大惨事を演出
(C) 2009 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 
   
 

 主演は,『ナショナル・トレジャー』(05年3月号)のニコラス・ケイジ。本作では,小学生の息子と2人で暮らす大学教授ジョン・ケストラー役で登場する。息子ケレイプが50年前に埋められたタイム・カプセルから持ち帰った1枚の紙には,当時の少女が書いた数字がビッシリ書き込まれていた。やがてジョンは,この数字の列が過去50年間に起こった大惨事の場所・日付・犠牲者の数を表わしていることに気付く。これは全くの偶然か,それとも何かの予言なのか? 紙に書かれた最後の数字列は,熱波による地球消滅の危機が明日到来することを示していた……。というSF仕立ての物語である。
 冒頭から,何やらB級作品らしい香りが蔓延していた。数字の謎は深まる一方だったが,墜落や衝突のパニック・シーンはなかなか登場しない。ところが仮説が証明され,事故が予言通りに起こり始めると,がぜん面白くなる。いや,怖くなると言った方が正確だろう。これはパニック映画でなく,むしろSFホラーだ。エイリアンに襲われる怖さではなく,本物のホラー映画の趣きがある。その点でも,B級映画らしさ功を奏している。
 少しネタバレになるが,この話はどう収めるつもりかと気になっていたら,宇宙人とのコンタクトへと発展する。まさか『サイン』(02年10月号)のような展開じゃないだろうなと危惧したが,そこまでバカバカしくはなかった。よくある結末パターンだが,止むを得ない。UFOのデザイン,熱波による地球破壊もこれで十分だ。これがなければ,幼稚過ぎて観ていられなかっただろう。その意味では,CG がこの映画を救ったと言える。

   
  安心して観ていられるが,少し冒険心が足りない
 
 

 一方の『ウィッチマウンテン/地図から消された山』は,『星の国から来た仲間』(75)をリメイクしたSFミステリーである。前作の邦題通り,こちらは最初から宇宙からの到来者と分かる兄妹が登場し,不思議なパワーを発揮する。ウィッチマウンテンというのは,アメリカ政府によって封印された禁断の山で,邦題の副題はそれを意味している。原題は『Race to Witch Mountain』で,宇宙の謎を解く鍵が隠された禁断の地をめざして,主人公たち,政府特殊機関員,未知なる暗殺者などがサバイバル・レースを展開するという設定になっている。ミステリー色よりもアドベンチャー色が強い。ディズニー映画らしく,最初からテーマパークのアトラクションにすることを想定した表題と物語になっている。
 監督は『ゲーム・プラン』(07・未)のアンディ・フィックマン。日本公開作品はないので馴染はないがニューメキシコ州ロズウェルの生まれだという。1947年にUFOの残骸とされる謎の物体が見つかったあの「ロズウェル事件」のご当地出身者である。ならば,このネタには格別の思い入れがあるのも当然だ。
 主演のタクシー・ドライバー役を演じるのは,フィックマン監督の『ゲーム・プラン』でも組んだドウェイン・ジョンソン。この名前で分からなければ,『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(01年7月号) やそのスピンオフ作品『スコーピオン・キング』(02年6月号)で活躍した元プロレスラーの「ザ・ロック」と言えば分かるだろうか。もう完全に映画俳優で,随分演技もうまくなったものだ。 相手役の女性宇宙科学者フリードマン博士には,『スパイキッズ』シリーズのカーラ・グギーノ。宇宙人兄妹のセスとサラには,『光の六つのしるし』(08年1月号) で主演したアレクサンダー・ルドウィグと『テラビシアにかける橋』(同号)の美少女アナソフィア・ロブという布陣だ。
 ハイスピードのカーチェイス,不思議な光から繰り出される強烈な衝撃波,地下の異空間,超能力を発揮しての危機回避……と冒険映画の定番シーンもびっしり詰まっている。それを支えるVFXの主担当はFurious FX社で,後半一気にその分量が増す(写真5)。とはいうもののVFX的に特筆すべきものはなく,あまり製作費をかけていないことも明らかだ。物語の展開も平凡そのものだ。ファミリー映画は,定番パターンの方が安心して観ていられるとは思うが,制作姿勢に冒険心は感じられない。
 ところで,両作品が紛らわしいのは,UFOの登場だけではない。『ノウイング』の父子が途中で出会った母娘と一緒になり,大人の男女,少年少女の4人組になった上に,子供たち2人に超能力が備わっている点もそっくりだからだ。その上,ディズニー映画『ナショナル・トレジャー』シリーズといえば,ニコラス・ケイジ主演で,カーラ・グギーノも出演していたという複雑な縁である。要するに,両作品とも主演は誰でもよく,役柄にも演技にも大きな特長がないからだ。
 その中では,『ノウイング』の怖さを煽る演出が秀逸で,少し光っていた。

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写真5 UFOのデザインは前作を踏襲し,もちろん今回はCGで描写
(C) 2008 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 
     
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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