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O plus E誌 2001年7月号掲載
 
 
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『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』
(ユニバーサル映画/UIP配給)
 
(c) 2001 Univetsal Studios. All rights reserved.
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2001/5/23 東京国際フォーラム(完成披露試写会))  
         
     
  娯楽大作とはかくあるべしの大スペクタクル  
   冒頭から壮大なスケールとものすごい迫力で圧倒される。息もつかせぬハイテンポのアクションの連続。これぞSFX,これぞVFX,アクション・アドベンチャーの大スペクタクル。娯楽大作とはかくあるべしの手本のような映画だ。
 『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(99)の続編で,2作目は当るの方程式通り,アメリカでは5月4日の公開から3日間で興収約85億円の特大ヒットとなった。この種の娯楽映画は,おしなべて2作目の方が出来がよく,面白い。脚本にもVFXにも金をかけるられるから,当然といえば当然だ。
  監督・脚本のスティーブン・ソマーズはじめ,スタッフもキャストも前作とほぼ同じだ。冒険家のリック・オコーネル(ブレンダン・フレイザー)と女性考古学者のエヴリン(レイチェル・ワイズ)の主演カップルから,エヴリンの兄ジョナサン(ジョン・ハナ),再生するミイラのイムホテップ(アーノルド・ヴォスルー)といった脇役・敵役まで,ずらっと勢揃いのサービスである。
 原題は『The Mummy Returns』。続編に「Returns」をつけることは多々あるが,前作で倒したはずのミイラ(mummy)のイムホテップが再度生き返ってくることの掛け言葉になっている。この映画の設定は,前作から8年後の1933年。結婚したリックとエヴリンには,男の子アレックスがいる。伏線となる古代の因縁は,さらに2000年遡って約5000年前。再びエジプトの秘宝を巡って,冒険とミイラ軍団との戦いが繰り広げられる。
 ストーリーはどうでもいいので,前作を見てなくても映像だけで楽しめるが,見ていたほうがより楽しめる。可愛かったレイチェル・ワイズは,母親役らしく随分大人っぽくなったメイクで登場し,派手なアクションもこなす。前作では少ししか出てこなかったイムホテップの愛人ミラ(スーパーモデル出身のパトリシア・ヴェラスケス)の登場シーンもぐっと増えている。5ヶ月間武術のトレーニングを受けたというだけあって,この女性2人のファラオ宮殿での決闘シーンは見ものだ。
 
視覚効果も2年間の進歩の跡が歴然
 本題の視覚効果は多彩で,質・量ともに充実している。SFXスーパバイザは,第1作目のSFX担当クリス・コーボルトの実弟で,『グラディエーター』でオスカーを獲ったばかりのニール・コーボルト。VFXスーパバイザは,『ターミネーター2』(91)『マスク』(94)『メン・イン・ブラック』(97)等を手掛けたILMの俊才ジョン・バートン。『インビジブル』『ダイナソー』に勝るとも劣らない現在の最高水準のSFX & VFXを堪能させてくれる。
 
写真1 前作に引き続きイムホテップの復活。上段左より,実シーン,3Dスキャナでキャプチャした幾何モデル,レンダリングの結果。下段では,さらにレンダリングの精度を上げ,髪の毛が書き加えられている。
(c)2001 Univetsal Studios. All rights reserved.
 ■まず一番見どころは,一段と凄みを増したイムホテップの復活だ。動きは,リアルタイム.モーション・キャプチヤーの本格採用,レンダリングはディスプレイス・マッピングと最新技術を駆使している。前作をよく見るとイムホテップのミイラは,単独カットか簡単な合成シーンでしか登場しなかったが,今回は他の実写俳優とも複雑に絡む(写真1)。このイムホテップ・ミイラの生成・描画技術は,大英博物館のミイラ(写真2),小型のピグミー・ミイラ,犬の頭を持つ戦士アヌビスのミイラ等にも応用されている。
 ■ジョナサン達が乗る飛行船と大渓谷の合成シーンが素晴らしい。CGの飛行船をこうした大規模な屋外風景と画質的にマッチさせるのは簡単ではないはずだが,それを違和感なく見事にこなしている。
 ■宮殿,砂漠,ピラミッド等々にディジタル・マットを多用している。この大スケールの感触は前作以上だ。デザイン的には少し嘘っぽいが,それがまた冒険活劇映画らしくていい。
 ■想定190cmのフルCGのアヌビス戦士と実写の騎馬軍団と戦闘シーンも大きな見どころだ(写真3)。『スター・ウォーズ エピーソード1』(99)のバトル・ドロイド軍団とグンガン族との戦闘シーンの技術が,間違いなくここに活かされている。以前にも書いたが,構図やカメラワークは,黒澤明の『影武者』『乱』の影響を受けている。この戦闘シーンは想像したよりも短めで,もっと見たかったが,経費面で仕方なかったのだろうか。
 ■実写の群衆や多数の戦士たちは,言うまでもディジタル・コピーだが,これもスケール感を上げるのに効果的に使われている。フルCGのアヌビス戦士を沢山描くのは難しくないはずだが,それでも64,000体の動きの迫力には圧倒される。これが映画だ。
 ■強いて欠点を探せば,人気No.1プロレスラーの「ザ・ロック」を起用した新登場のキャラクター,スコーピオン・キングだろうか。前半は本人の演技で,後半のクライマックスでは,上半身は人間,下半身は8本足と3本の尾のさそりの怪獣として登場する。これが実写との合成ではなくフルCGなのだが,上半身がいかにもCGと分かる安っぽさなのが気になる。ザ・ロックの実写テクスチャとレンダーマン・シェーダを駆使し,スキン・テクスチャの表現に苦労したというから,意図的にCGっぽく見せたわけではあるまい。VFXがこれだけ進歩しても,まだまだ実在タレントをCGで置き換えるのは難しいことを如実に物語っている。
写真2 ミイラの演技はモーションキャプチャで収録
(c)2001 Univetsal Studios. All rights reserved.
写真3 騎馬戦士軍(実写)とアヌビス戦士(CG)の戦い
   
   という風に,他にも語りたいことが多々あるが,キリがないのでここらで止めておこう。先月のDVD特典映像ガイドで前作『ハムナプトラ』を褒めたが,この映画のメイキング映像も早く見たいものだ。
 前半から飛ばしに飛ばしたノンストップ・アクションは,途中少し息を入れさせてくれる。そして,後半は予想通りまた一段と迫力あるスペクタクルだ。クライマックスで,3つの戦いを交互に見せてくれるカメラ切り替え,何もかもピラミッドにの飲み込まれてしまうシーンなど,サービス精神満点だ。よく考えられていて,近い将来ユニバーサル・スタジオの人気アトラクションとして再登場させる気だろう。
 では,この映画が日本でヒットするかといえば,映画に小難しい人生観を求める評論家や映画ファンからの評価は高くないと思われる。単にスカッとしたい娯楽映画を見たい向きには最高だ。このコーナーの読者には,是非映画館で見て欲しいオススメの一作だ。
 
   
   
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