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O plus E誌 2008年11月号掲載
 
ハンサム★スーツ』
(アスミック・エース配給)
 
(C) 『ハンサム★スーツ』製作委員会
オフィシャルサイト[日本語]
[11月1日より渋谷シネクイントほか全国ロードショー予定] 2008年8月8日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]
   
(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)
結末は平凡な予定調和だが,全編抱腹絶倒の佳作

 合言葉は「レッツ,ハンサム」だ。「洋服の青山」には,着るだけでハンサムになれるスーツがあります! というキャッチコピーがテレビCMやWebサイトで流れている。まさしく,魔法のスーツを着れば,どんなブサイクでもハンサムに変身できるというのがテーマのコメディだが,別に企業宣伝の映画ではない。先に企画・脚本があり,特別協賛として作品中に実名の店舗が出て来るだけに過ぎない。ただし,このタイアップは正解だ。これが海外のDCブランドだったら「ハンサム」は嫌みだが,「洋服の青山」はこの抱腹絶倒のコメディには似合っているし,映画の知名度を高めてくれる。
 てっきり原作はコミックかと思ったが,「ブスの瞳に恋してる」(略称「ブス恋」)の人気放送作家・鈴木おさむのオリジナル脚本だった。監督は,これが長編初作品となる英勉である。関西出身で,CMやPVで活躍してきた映像作家のようだ。
 主人公は,母親が残した定食屋を営む心優しきブサイク男,33歳独身の大木琢郎で,お笑いコンビ「ドランクドラゴン」の塚地武雄が演じる。彼が「ハンサム・スーツ」を着て変身した姿・光山杏仁には,モデル出身の谷原章介を配し,醜男と美男の対比を強調している。琢郎が恋する美女・星野寛子役に『ヒート・アイランド』(07)『サウスバウンド』(07)の北川景子だが,なるほど清楚で可愛い(写真1)。そして,彼女に対する心優しき醜女・橋野本江には,何と,鈴木おさむの愛妻・大島美幸が登場する(写真2)。お笑いトリオ「森山中」のメンバーで,鈴木おさむとは交際0日で結婚したという「ブス恋」のネタ当人である。いやはや,粋なキャスティングだ。

   
写真1 美人で心優しい寛子ちゃん   写真2 こちらが(単に)心優しい本江さん

 テーマと表題からして,ギャグ映画だと分かっていたが,これは相当に面白い。物語は,琢郎と杏仁の入れ替わりのドタバタ喜劇と琢郎のラブロマンスの2つの柱で展開する。脚本も演出も「笑い」のセンスがある。醜男が美女に恋して,なぜかそれが叶いそうというのは『シュレック』(01年12月号)を彷彿とさせるが,ギャグの連発度合いはずっと上だ。映画終了後も,会場は「久々に面白い映画を観た」という絶賛の声で溢れていた。業界関係者の試写会では珍しいことだ。
 この映画のCG/VFXシーンはといえば,ハエやくしゃみの飛沫は勿論CGだし,お目当ての変身過程も当然VFXの産物だ。そのいずれも,はっきりそれと分かる稚拙で滑稽な出来映えだが,この映画にはその素朴さが合っている。意図的な演出の1つだろう。ハンサム・スーツ自体が,『ゴーストバスターズ』(84)の「マシュマロマン」を思い出す(写真3)。これも当然パロディだ。
 ところで,この映画は配給元から,展開や結末等,ネタバレしないようにキツーイお達しがある。一瞬,何のことかと思った。そんなに秘密にするほどの驚きの展開なのか? 筆者には,全くの予定調和,想定の範囲内の平々凡々たる結末に思える。もっと意外な,ひねりのあるエンディングにしても良かったかと思うくらいだ。
 さて,この映画をこれから観る読者に素朴な質問がある。普通の男性には,寛子と本江のどちらが魅力的に映るのだろう? 筆者は,最初から本江の方がずっと魅力的に感じてしまう。これは鈴木おさむの脚本の巧みさのせいなのか,それとも筆者が女性の美醜を気にしなくなった年齢域に達したせいなのだろうか?
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写真3 これが青山製のスーツ。まるでマシュマロマン。
(C) 『ハンサム★スーツ』製作委員会

   
(画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)
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