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O plus E誌 2007年11月号掲載
 
 
ボーン・アルティメイタム
(ユニバーサル映画 /東宝東和配給 )
      (C) 2007 Universal Studios  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月10日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2007年10月3日 東宝東和試写室  
         
   
 
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バイオハザードIII』
(コロンビア映画/SPE配給)
         
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月3日よりスカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2007年9月27日 TOHOシネマズなんば[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  洗練され,完成度を増した知的なアクション映画  
    こちらも2本まとめて紹介しよう。両作品とも,今年は夏前から数多く公開された「シリーズ3作目(triquel)」もので,その殿を飾るに相応しい2本だ。ともにアクションを前面に打ち出しているが,そのアクションの質や想定観客層はかなり違う。
 まず先月号でも予告した『ボーン・アルティメイタム』は,記憶をなくした暗殺者ジェイソン・ボーンが主人公で,『ボーン・アイデンティティー』(02)『ボーン・スプレマシー』(04)に続く3部作の完結編である。ロバート・ラドラムの原作もこの通りの題だが,邦訳本は「暗殺者」(80)「殺戮のオデッセイ」(86)「最後の暗殺者」(90)と題されている。「アルティメイタム」(ultimatum)とは「最後通牒」の意味らしいが,間違いなくシリーズ最高作で抜群に面白い。先月号の『グッド・シェパード』でCIA設立に関与したキーパーソンを重厚に演じたマット・デイモンが,CIAが生み出した殺人マシーンとして三度目の登場となるのは,ちょっと皮肉だ。
 監督は,2作目から担当のポール・グリーングラス。主要スタッフも同じだ。各作品でボーンを抹殺しようと追うCIA幹部が違うだけで,敵役にも相手役の女性にも人気俳優は登場しない地味なキャスティングだ。派手過ぎない女性たち(パメラとニッキー)の扱いの上手さが,本シリーズの知的でタフな印象に寄与している。
 すべてが前作の延長線上にあり,その一貫性・継続性が,同じスタイルでの完成度の向上,洗練度のアップに繋がっている。とりわけ,ジョン・パウエルの音楽が素晴らしく,前作同様,打楽器を生かしたサウンドが心臓の鼓動のようにこの映画を誘導する。特殊な武器を一切使わないアクションがウリだが,ビルの屋上を駆け巡り(写真1),ビル間を飛び移るシーンの連続(写真2)は見せ場だ。各地で起用したスタントマンの合計は200名近くにも上る。前2作でも派手なカーアクションが見られたが,本作でのバイク・チェイスは味のある演出だ(写真3)
 VFXの主担当はDouble Negative社で,そう数は多くないが,腕のいいインビジブル・ショットが随所に見られ,アクションを引き立てている。CIA支局の大型モニター内の映像も洗練され,エシュロンで得られた情報をスマートに可視化して見せる。そういえば,3年前の前作ではまだでかいCRTモニタを使っていたのに,ようやく液晶モニタに置き換わっていた(写真4)。  
     
 
写真1 小細工ぬきに駆け回るのも魅力の1つ   写真2 動員したスタントマン数もシリーズ最高
 
 
写真3 一見地味だが,バイク・チェイスが秀逸
 
     
 
 
 
写真4 CIAのPCもようやく液晶モニタになった
(C) 2007 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
     
  ゲーム世代に贈るパワーアップしたバイオレンス  
   一方の『バイオハザードIII』は,我が国のカプコン製のゲームを元にしたバイオレンス・ホラーだが,ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で撮った第1作目がヒットしたことから,どんどんスケール・アップしている。偵察衛星で主人公のアリスの一挙一動が監視されるなど,やり過ぎじゃないかと思うほどの過激さだ。
 米国中西部のラクーンシティにあるアンブレラ社の地下極秘研究所「ハイブ」で新型のT-ウィルスが漏れ出す事故が起き,所員たちは全員死亡,送り込まれた特殊部隊も感染し,ゾンビ化する恐怖と闘う過程を描いたのが第1作だ。その直後,ゾンビが地上に溢れ出して壊滅状態になったラクーンシティで,彼女は市の特殊警察部隊S.T.A.R.S.と協力して絶体絶命のピンチと向かい合うというのが2作目『バイオハザードII アポカリプス』(04年10月号)だった。そして本作は,世界中がウィルスに感染して砂漠化した中で,再び目覚めたアリスはアンブレラ社の陰謀を暴き,最大の敵タイラントとの最後の戦いを繰り広げる…という設定である。
 同じアクションでもバイオレンスの塊りであり,ゲーム世代を対象にした典型的なジャンル・ムービーだ。パワーアップしたアリスはひたすら強く,銃や鉈のような凶器で敵を倒しまくる(写真5)。いくら相手がゾンビで罪悪感はないとはいえ,ここまで徹底的に殺しまくっていいのかと感じるほどだ(写真6)。いや,1作毎に拡大路線をとるなら,演出はこうならざるを得ないのだろう。まさにゲーム感覚であり,荒唐無稽過ぎて気持ちがいい。
 それに合わせ,CG/VFXの利用もアップしている。監視衛星や不死身のカラスなどはCGゆえの表現だが,出色なのは砂漠化したラスベガスの描写だった。ストリップと呼ばれる目抜き通りの豪華ホテル群が砂に埋もれた様は,巨大ミニチュアセットとCGの合成で描かれている(写真7)。ラスベガス体験者には嬉しくなるシーンだ。アリスが戻る地下研究所の描写にもCGは多用されているし,第1作目に登場する血まみれの獰猛な犬も再登場だ。実写の犬をデジタル処理で補強しているらしいが,多数の犬の元は1匹なのかもしれない(写真8)
 完成披露試写会場には,ゲームオタクらしい若い世代の姿が目立った。こうした映画の評価には,彼らの生の声を再現しておこう。ただし,大阪での声である。
「アリスが,めっちゃ強過ぎる」「ファンタスティック・フォーも負けるわ」「2作目の方が良かった」「俺は,おもろかったけどな」「ジルをもう1回出せよな」「宇宙からの監視はスゴイわ。笑うわ」「あの最後からすると,まだ続編作る気やで」「もーええわ.このシリーズはこれで」「いや,きっとまた観るで」
 
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写真5 これで敵をなぎ倒す。何しろ強い!
 
     
 
写真6 こういうのが相手だと倒したくはなるが…   写真7 砂漠化したラスベガスはミニチュア製
 
 
 
 
写真8 このワンちゃんが,血まみれの獰猛な犬に化ける
(C) 2007 Sony Pictures Entertainment (J) Inc. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)  
   
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