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O plus E誌 2008年7月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『奇跡のシンフォニー』 :催眠術のような映画だ。大作でもVFX多用作でもないが,見始めたら,エンディングまで固唾を飲んで観てしまう作品である。音楽が先にでき,映像をそれに合わせたというだけあって,クライマックスまでの誘導は見事だ。音楽嫌いには凡庸なストーリーの駄作だろうが,音楽好きには,ギターを叩くリズム感やシンフォニーの旋律がたまらない感動作だろう。天才的音楽才能をもち,生き別れの両親を探す少年役を,お馴染フレディ・ハイモア君が演じる。父親役のジョナサン・リース=マイヤーズは,エルヴィス・プレスリーの若い頃に似ている。ならば,彼の歌う3曲は現代風アレンジでなく,エルヴィス風のロックかバラードの味付けであって欲しかったところだ。
 ■『告発のとき』 :今ハリウッドで最も売れっ子の脚本家ポール・ハギスの作で,オスカーを得た『クラッシュ』(04)に続き,自らメガホンもとる。軍隊を脱走した息子の行方を捜す父親の目を通して描く。謎解き,軍隊内の人間模様の描写は巧みで,さすがだと感心する語り口調だ。主演のトミー・リー・ジョーンズの演技ばかりがもて囃されているが,競演のシャーリーズ・セロンもなかなかの好演だ。演技派転向したとはいえ,類型的な汚れ役ではなく,地味で訳ありの女刑事役が渋い。顔つきも変わって来た。終盤明かされる衝撃の真実には,父親ならずとも慟哭する。
 ■『クライマーズ・ハイ』:日航ジャンボ機墜落事故を追う群馬県の地元新聞社の壮絶な1週間を描く社会派ドラマだ。全権デスクに任命された一匹狼の遊軍記者・悠木の紙面作りの奮闘と社内部門間の軋轢を生々しく描いている。まさに男たちの職場,修羅場だ。激しいセリフの応酬,新聞社内の描写の克明さに驚くが,それもそのはず,原作者・横山秀夫の地方記者時代の実体験に基づいている。監督・脚本は原田眞人。こうした重量感のある作品を撮らせたら上手い。主演の堤真一も熱演だが,惜しむらくは老け顔のメイクが全く駄目だった。20数年後の現代を演じる場面でも,まだ若々しくて時間経過が感じられず,画竜点睛を欠いている。
 ■『近距離恋愛』:10年来の親友であった彼女が結婚を決意し,スコットランドへ嫁ぐと分かった時から,男は彼女がかけがえのない存在であったことに気付く。男女間の友情が愛情に変わる話は『恋人たちの予感』(89)を思い出させるし,結婚式が迫るにつれて,これは『卒業』(67)のパターンで終わるなと予想できる。問題は,そこに至る過程をどう描くかだ。NYでの恋物語だけで終わらず,スコットランドの美しい山と湖,伝統ある古いしきたりを描いたことが,この映画の情感を高めている。見終わってから気がついたが,主演のパトリック・デンプシーとミシェル・モナハンは,ダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスにどことなく似ている。これは,意図的なキャスティングなのだろうか?
 ■『あの日の指輪を待つきみへ』 :英・加共同製作。この表題で,監督リチャード・アッテンボロー,主演は名女優シャーリー・マクレーンとなると,渋い文芸調作品と想像できる。第2次大戦中の1941年から半世紀後の1991年,二大陸を結ぶ単なる純愛物語かと思いきや,ミステリータッチで主人公達の過去を徐々に明らかにして行くストーリー展開が見事だ。若い美男・美女の熱愛から,戦時体験,最近のIRAテロまで絡めて,老カップルのエンディングに収束させる技は,映画の脚本はかく作るべしという模範教材のようだ。こういう映画にSFXやVFXが効果的に使われているのも嬉しい。現代でなく,なぜ1991年かというと,ヒロインの年齢をS・マクレーンの現年齢に合わせるためだろう。    
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