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O plus E誌 2002年8月号掲載
 
 
『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』
(20世紀フォックス映画)
 
 
       
  オフィシャルサイト日本語][英語]   2002年6月29日 新宿プラザ(先行オールナイト)  
  [7月13日より全国東宝洋画系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  夏の話題作は固定ファンで超満員  
   この夏の話題は何といってもこの映画だ。本VFX映画時評としては何か語らずにはいられない。3年前現在のを新たなパートナーとし,毎月の連載を始めるきっかけとなったのが『SWエピソード1』だった。評論家もファンも,そして我々も酷評した前作だが,やはりその続編が気になって仕方がなかった。既にアチコチで前作よりはぐっと面白くなっているという評判が立っているが,全体に単調で工夫がないという評論家筋の声も少なくない。
 男性中心の一部ファンのためだけの映画というが,世界中で若いファンの数を増やしているというのが凄い。一般公開2週間前の先々行レイトショー/オールナイトに出かけたが,大混雑で横浜も渋谷も初回は札止めだった。止むなく新宿歌舞伎町まで転戦してやっと入場することができた。お馴染みの宇宙空間を移動する前置きの文章と聞きなれた音楽で大きな拍手が起き,エンドロールでもほとんど誰も席を立たず,最後にもう一度大きな拍手が巻き起こった。この映画ならではの現象だ。
 監督,主演等は今さら紹介するまでもないが,ナタリー・ポートマンはすっかり大人になり,キレイになった。3年前無名に近かったユアン・マクレガーは貫録がつき,すっかりジェダイ・マスターのオビ=ワン・ケノービらしくなった。これならアレックス・ギネスに繋がる人選だというのが頷ける。そして,本作品でアナキン・スカイウォ−カー役に抜擢されたヘイデン・クリステンセンは実にカッコイイ。今回の悪役ドゥークー伯爵のクリストファー・リーは,まさにハマリ役だ。『ロード・オブ・ザ・リング』で演じた魔法使いサルマンと同工異曲だが,余りにピッタリ過ぎてまたかと感じさせない。
 新3部作は先に撮られた旧3部作(エピソード4〜6)に先立つ物語だから,予め結論は分かっている。そこにどうやって繋がるかがファンの興味の的だが,なるほど今回『エピソード1』と『エピソード4』を結ぶラインが少し見えてきた。アナキンが暗黒面に落ちて,ダースベーダーとなる予兆が感じられるというのが専らの噂だ。宇宙船やスウープバイクやロボットのR4など,旧3部作を知っているファンをニヤリとさせるサービスも十分盛り込まれている。
     
  今年こそILMにオスカーを!  
   山ほど語られているこの映画の一般的評論は止め,以下は本時評欄ならではの視点からの評を述べておこう。
 ■VFX関連シーンは2100とも2200ともいう。前作の約2000より増えている。とにかくほぼ全シーンが何らかのデジタル加工されているというわけだ。勿論,担当は身内のILMだが,エンドクレジットに名前が乗っているだけでも約550人はいたと思う。本時評欄を初めて以来,断トツの数だ。これだけになると管理側も大変で,VFXスーパバイザが3人もいる。ジョン・ノール,パブロ・ヘルマンに加えて,御大デニス・ミューレンの名前も見受けられた。
 ■冒頭でオビ=ワンとアナキンが敵を追う街のシーンは,これまで3Dシアターでよく見かけたライド型ムービーの感覚だが,そのスケール感が違う。どのシーンにもこれまでにILMが培ってきたSFX/VFX技術の蓄積が感じられる(写真(a)〜(d))。『ジュラシック・パーク』(93)『ハムナプトラ』(99)(『パール・ハーバー』(01)『A.I.』(01)などで磨いてきた技がここに結集されている。特にカミノ星の波打つ水面などは『パーフェクト ストーム』(00)なくしては描けなかっただろうと感じた。
 ■衆目の一致するところ,ヨーダの活躍が素晴らしい。今回フルCGで登場するゆえの大アクションだ(写真(e))。ドゥークー伯爵とのフォースやライトセーバーを使っての戦いは,ファンならばこのシーンだけのためにこの映画を観る価値がある。
 ■全体にCGのスケールが壮大だ。各シーンの要素の複雑さも,他の追随を許さない。写真(f)は平均的シーンの合成例だが,クライマックスの処刑場のシーンのクオリティが特に素晴らしい。この観客の数,構図,クリーチャーのデザインと構図が圧巻だ。これと比べたら一昨年度のオスカー受賞作『グラディエーター』など幼稚に思える。その後に続く砂漠のチェイスもドロイド製造工場のシーンも素晴らしい視覚効果の連続だ。
 ■この複雑な合成シーンを達成できたのは,フィルム無しのデジタル撮影のお蔭だという。しかし,その画質は想像していたよりも劣悪だった。ソニー製HD24Pカメラは,『ヴィドック』『ピンポン』に使われたのと同じものだが,今回暗い部分ではビデオ映像独特のザラつきが見え,致命的であるように見えた。これでは,まだまだフィルムには勝てないと言っているようなものだ。一方,背景がほぼフルCGの時は暗くても平気だった。実写とCGの合成では,人間の俳優よりCGキャラクタの方がクリアに見える。前作で登場したジャージャー・ビンクスやワトーも見違えるような鮮やかさだ。まるでこれからはデジタルの時代だと宣言するのに,意図的に実写の画質を落としているのかと勘ぐりたくなってくる。
 ■それでは,DLPプロジェクタでならどう見えるのか,入口にも出口にもフィルムを使わないなら少しは相性はいいのか,一般公開初日に再確認しにDLP上映館に出かけた。暗い部分のザラつきはかなり軽減されているように感じた(なぜそうなのかは分からない)。その一方で,CG部分に対して『トイ・ストーリー2』の時に観た透き通るような鮮やかさが感じられなかった。
 ■この映画のためにILMが作られ,現在まで存在していると言っても過言ではない。ILMが構築し培ってきたSFX/VFXの技術体系は,今や一人歩きし始め,映像制作技術を根底から変える勢力となった。その中から生まれた最新VFX技術を,ILM自身も受け取り,この映画のために利用している。自ら築き上げた技術体系を存分に使いこなすのもまた実力というものだ。この映画にはそれが如実に表われている。1994年度以来,ILMがアカデミー賞視覚効果部門で受賞を逃していることは,既に何度も書いた。新興スタジオに肩入れしてきた審査員達も,少しフェアな精神に戻り,そろそろ貢献度も技術もNo.1のILMに再度オスカーを与えても良い頃ではないだろうか。
     
 
(a) 前作でマット画だったトルーパーも,今回はフルCGで動く   (b) ボバ・フェットの父ジャンゴもフルCGで登場
 
(c) ナブー星の自然はいかにも合成 (d) ティポカ・シティ。この程度の水面表現は経験済
 
 
(e) 本作の主役はこの人。フルCGになって大活躍。
 
写真 ILMの実力はこの映画のために存在する
(c) Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved. Digital work by ILM.
 
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