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O plus E誌 2002年8月号掲載
 
 
『タイムマシン』
(ワーナー・ブラザース映画
&ドリームワークス映画)
 
 
       
  オフィシャルサイト日本語][英語]   2002年6月26日 ワーナー試写室  
  [7月20日より全国松竹・東急系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  曾孫が撮った古典的SFの再映画化  
   SFの開祖とも言えるH・G・ウエルズの代表作の再映画化だ。既に1959年に映画化され,タイムトラベルものなら他に何作もヒットした映画があるのに,何で今ごろという気がした。最近『クローン』『マイノリティ・レポート』などフィリップ・K・ディックの作品が何作か映画化されているので,いい脚本不足のハリウッドにとっては,VFX全盛の今,ネームバリューで客を呼べる名作SFを題材に選んだのかと想像する。
 それが証拠に,監督はこれが初作品となるサイモン・ウェルズ。アニメ『プリンス・オブ・エジプト』の助監督の実績があるというが,H・G・ウェルズの曾孫というのが選ばれた最大のポイントで,大いなる宣伝材料だ。
 タイムマシンを設計した科学者のアレクサンダー・ハーデゲン役には,『L.A.コンフィデンシャル』(97)『メメント』(01)のガイ・ピアース。19世紀末の科学者の役がよく似合う。同時代を描いた『フロム・ヘル』(01)のジョニー・デップにも感じが似ている。
 原作から考えて,てっきり舞台はロンドンだと思って観ていたのだが,実はニューヨークだという。2030年にタイムワープし,そこにNY証券取引所があったのを観て気付いた。NYにしたかったのは2030年の世界であって,19世紀末はむしろイギリスと思わせる雰囲気を出したかったのだろう。婚約者,メイド,友人の博士など,この時代の主要登場人物には英国出身の俳優を起用していることからもそう考えられる。
 物語は1899年から始まる。暴漢に襲われ,婚約者のエマを死なせてしまったことから,アレキサンダーは過去に戻って出来事を変えようとしてタイムマシンを発明する。エマの死は変えられないと知った彼は,未来に向かい,まず2030年,次に2037年,さらには80万年後の世界へと旅立つ(写真左)。そこに待っていた未来の人間たちと恐ろしい環境は…というのが,『グラディエーター』(00)の共同脚本でオスカーを得たジョン・ローガンが,原作に敬意を払いながらもこの映画のために書いたシナリオだ。
 物語はシンプルで分かりやすく,前半は面白かった。科学好きの少年たちに初期のSFの香りを与えるかのような語り口だ。ところが,後半の80万年後の世界がどうにも面白くない。雰囲気は『ハムナプトラ』風だが,この映画には似合っていない。地底に住む民族と戦う設定は同じH・G・ウェルズの「月世界旅行」をヒントにしているというが,時間旅行の行く先の物語としては必然性が感じられない。もっとタイムパラドックスを生かした話が欲しかったし,科学技術の未来を占う展開でも面白かったかと思う。
 一方,ビジュアル面ではかなり収穫があった。19世紀の街,当時の自動車や馬車,科学者の家や調度類の描写は素晴らしい。タイムマシンのデザインもそれに調和している。2030年に向うタイムトラベル途中の描写は一見に値する。この時代に登場するエージェントのボックス(写真右)の設定も面白い。2037年に月が崩壊するシーンにはあっと驚くし,80万2701年の世界では岩肌に作られた住居を広大な視点で捕らえた映像が秀逸だ。『SWエピソード1』の元老院のシーンを思い出させる。  
   
     
 
写真 『タイムマシン』(左)時空間を高速移動するタイムマシン,(右)2030年にホログラムで登場するエージェント
(c)2002 Warner Bros. & Dreamworks, LLC.
 
     
   VFXは,デジタル・ドメインが主担当で,シネサイト,イリュージョン・アーツ等4社と,未来人の描写にはお馴染みスタン・ウィンストン・スタジオも参加している。今月は,『SWエピソード2』と比べるとどの映画も小粒に感じてしまうが,通常なら褒めてもいいレベルだ。むしろ,この映画にはSFX/VFX以外のセールスポイントがないのが少し寂しい。  
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