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O plus E誌 2002年8月号掲載
 
 
『トータル・フィアーズ』
(パラマウント映画/東宝東和配給)
 
 
       
  オフィシャルサイト日本語][英語]   2002年7月8日 東宝東和試写室  
  [8月10日より全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  若返ったジャック・ライアン登場  
   SFアクションやお子様向けファンタジーが続いた後の1本は,売れっ子トム・クランシー作の国際軍事サスペンスだ。同じようにVFX部分に目を凝らすにも,こういう普通の映画を観るとほっとする。
 原題は『Sum of All Fears(恐怖の総和)』。原作は,既に10作以上を数えるCIA調査官ジャック・ライアンものの5作目で,91年夏に出版されている。昨年の同時多発テロの後,改めて国際テロの恐怖を予見していた作品として話題を呼んだ。映画化としては『レッド・オクトーバーを追え』(90)『パトリオット・ゲーム』(92)『今そこにある危機』(94)に続く4本目に当たる。
 第4次中東戦争中の1973年に撃墜されたイスラエル軍の戦闘機に搭載されていた核弾頭が29年振りに発見され,これをネオナチのテロリスト達が入手した。ロシアの仕業と見せかけて,スーパーボウル開催中のアメリカの大都市を爆破し,疑心暗鬼の米露を対立させて世界大戦を引き起こそうとする,という設定だ。これを阻止せんと活躍するのが我らがジャック・ライアンなのだが,大方の観客の予想に反して間に合わず,ボルチモア市が破壊されてしまう。むしろ,物語はその後の報復合戦への緊張感がメインだ。
 先輩のアレックス・ボールドウィン,ハリソン・フォードのあと,3代目ライアンを演じるのは,『アルマゲドン』(98)『パール・ハーバー』(01)のベン・アフレック。かなり若返った感じでどうかと思ったが,このライアンがなかなか悪くない。共演のCIA長官ウィリアム・キャボット役は『ショーシャンクの空に』(94)のモーガン・フリーマン。星条旗を背に毅然としたスーツ姿で登場する様は,ちょっとパウエル国務長官を彷彿とさせる。監督のフィル・アルテン・ロビンソンは余り馴染みがないが,大統領役にジェームズ・クロムウエル,国防長官や国務長官にフィリップ・ベイカー・ホール,ロン・リフキンなど,芸達者の脇役陣が顔を揃えている。
 VFX担当はリズム&ヒューズ社。思ったよりも視覚効果シーンも多いなと感じたが,エンドロールで確認すると100人足らずが関与していた。最近,動物もの専門スタジオの印象が強い同社だが,この映画ではミニチュア製作にも力を入れ,核爆発,ミサイル,戦闘機や空母など実写とCGを多彩に描き分けている(写真)。艦上の戦闘機が見える空母のアップは実物で遠景は模型,ヘリのアップは実機で壊れるシーンはCG,イスラエル戦闘機や米軍ステルスなどはアップはミニチュアで遠景はCG,といったところだろうか。
 VFX技術史の上では特筆すべきことはないが,こういう普通の映画に適度に使われて,リアリティを増すのに貢献しているのを観るのも悪くない気分だ。    
     
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写真 『トータル・フィアーズ』(左)核爆発でCGキノコ雲発生,(右)模型の空母(?)に迫るCGミサイル
 
     
  スーパーヒーローでないアフレックがいい味  
 
素直に面白いですね。最後は間一髪で世界大戦が回避されることは分かっていてもハラハラしました。
それが映画です。でも,こういう普通の映画は特に書くことがないため,評論家の点数は辛めですよ(笑)。
ベン・アフレックがいいですね。『パール・ハーバー』の時と違って見違えるようです。ハリソン・フォードだとタフで不死身って感じですが,このライアンは調査官らしく,少しひ弱でスーパーヒーローでないのが似合っています。
確かに,アクション・シーンは最少限でした。情報担当官だから,知的で情熱的な役どころですね。
この後のシリーズにも登場して欲しいですね。
VFXは,私たちはその存在にすぐ気がつきますが,一般観客にとっては少し迫力のある映像という感覚でしょうか。
廃虚と化した街に現実味があって良かったです。
ニューヨークやロサンジェルスでなく,ボルチモアってところが手頃でリアリティを出しやすかったのでしょう。ワシントンD.C.にも近いですしね。
ボルチモア市民の皆さんゴメンナサイ(笑)。
この核爆発後のアメリカの描き方が安易だという評論家の声もありました。
こんな娯楽作品にそんな生真面目な描写を求めるのは筋違いですよ(笑)。次なる恐怖が導き出されれば,サスペンスものとしては合格だと思います。
 
   
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