O plus E VFX映画時評 2026年7月号
(C)2026 Disney Enterprises, Inc.
2026年7月17日 東映試写室(大阪)
(注:本映画時評の評点は,上から![]()
![]()
,![]()
,
,
の順で,その中間に
をつけています)
逆順だったら良かったのに…。そう思いつつ,恐る恐る参加したマスコミ試写であった。同じ月にディズニー映画が2本公開されるが,『トイ・ストーリー5』の方が先だったからである。かたや傘下ピクサー社の看板シリーズの最新作,こちらは本家ディズニーアニメのヒット作の実写リメイク作品だ。それだけ聞けば,ほぼ対等の好い勝負と思うかも知れないが,当欄の読者なら,筆者の懸念は分かって頂けるだろう。既に紹介したように,前者はシリーズ最高傑作に少し劣るが,十分![]()
![]()
評価できる出来映えで,6作目も期待できる内容だった。一方,後者の実写化はこれまで酷評続きだったので,今回もその恐れが十分あった。自腹で映画館で見て,SNS投稿する個人なら言いたい放題で構わないだろうが,招待されてマスコミ試写を見る当欄としてはそうは行かない。配給会社の担当者に顔向けできるレビュー記事でありたいと思うからだ。2本がほぼ同時公開か逆順なら,まとめて報告すれば,高評価の方がカバーしてくれるが,この2本の場合,間が4週間も空いていたので,その手は使えなかった。
なぜ恐る恐るであったかを,自己分析してみた。ディズニーの長編アニメは,手書きのセルアニメ『白雪姫』(37)に始まり,フルCGの『ズートピア2』(25年12月号)まで全64作に及ぶ。きちんと数えた訳ではないが,この中で実写化されたのは約20本だと思う。賛否両論どころか,世界中で袋叩きに遭い,当欄も酷評したのは近年の『リトル・マーメイド』(23年6月号)と『白雪姫』(25年3月号)であった。少し前までは,そうでもなかった。『ジャングル・ブック』(16年8月号)『美女と野獣』(17年5月号)は,絶賛に値する作品であった。前者はCGで描いた動物たちが驚異的なクオリティであったし,後者は主演女優(エマ・ワトソン)が美しく,魔法をかけられた家具・調度類も見事にCG化されていた。世評は高くなかったが,当欄は実写版『ダンボ』(19年Web専用#2)の象の母子の出来映えを高く評価した。
一方,アニメ版の忠実な実写化ではないが,『眠れる森の美女』(59)の邪悪な妖精を主人公にした『マレフィセント』(14年7月号),『101匹わんちゃん大行進』(61)の悪役の若き日を描いた『クルエラ』(21年Web専用#3)は,味のある翻案もので,成功作の部類に入る。人気女優アンジェリーナ・ジョリー,エマ・ストーンの演技力とCG/VFXによるビジュアル強化のバランスも良かった。実写版『アラジン』(19年5・6月号)でランプから登場する巨人ジーニー役にウィル・スミスを起用したのも同じ手法である。要するに,動物や悪役や奇人は,クオリティが上がるならどのようにリメイクしても構わないが,『リトル・マーメイド』や『白雪姫』は,オリジナルのディズニープリンセスのイメージを壊す主演女優を起用したことが,世界中の多数の観客から大バッシングを受けたのである。
同じことの繰り返しを危惧してか,『塔の上のラプンツェル』(11年3月号)の実写リメイクは,人選を終え,撮影開始寸前まで行っていたのにストップがかかり,無期延期されている。そこに,アニメ版第2作『モアナと伝説の海2』(24年12月号)からまだ1年半しか経たないのに,同趣旨のリメイクの公開である。本作の「モアナ」は南太平洋の島に住む一族の族長の娘であり,先々は一族を率いて行く立場だ。それゆえ,ディズニープリンセスの1人に数えられているが,言うまでもなく,白人女性ではない。それならバッシング対象でないとの判断かと思われた。プラス材料は,半神半人の巨人マウイを演じるのがアニメ版の声の出演をしたドウェイン・ジョンソンであった。それなら違和感はなく,むしろ好ましいと安心した。
結論を先に言えば,評点欄からお分かりのように,一長一短があり,中庸の![]()
評価に留めざるを得なかった。この【概要と感想】では,その長所と短所を列挙するに留め,細かな分析は「完成版」に譲る。
【本作の概要と物語展開】
通常なら,この項で「あらすじ」と登場人物を紹介するのだが,今回はその必要がない。余りにもCGアニメ版の第1作『モアナと伝説の海』(17年3月号)そのままであったからだ。多少コマ割りが異なる程度で,ほぼアニメ版をなぞっている。ここまでそっくりのリメイク版は珍しい。
監督はトーマス・ケイル。この名前は聞いたことがなく,勿論,紹介したこともない。ブロードウェイ/オフブロードウェイの舞台ミュージカルの演出で挙げた名を上げた人物のようで,代表作は「In the Heights」「Hamilton」で,両作でトニー賞を受賞している。過去の長編映画の監督は『ハミルトン』(20)だけだ。なぜ同作を紹介しなかったかと言えば,折からのコロナ禍の真っ只中で,劇場公開されず,Disney+での配信であったから,存在すら知らなかった。両ミュージカルの音楽担当はリー・アン・ミランダで,アニメ版第1作も本作の音楽も彼が担当であるゆえ,盟友であるT・ケイルが,本作の監督に抜擢されたと思われる。
【素直な感想】
■ 予告編での予想通り,映画本編でのCG/VFXも素晴らしかった。実際に南の島や米国近海でも撮影したようだが,海の描写の大半は一見してCGだと判る。船もしかりで,モアナとマウイが乗る船の一部は実物だろうが,こちらも大半はCGで,その繋ぎ目は全く判らない。ILM,Weta FX,Framestoreといった一流スタジオが参加しているだけのことはある。
■ 前半はそれに感激していたのだが,それが延々と続くので,後半は退屈した。物語がまるで面白くない。既視感を通り越し,アニメ版と何も変わらない。違うのは主演の2人と,モアナの親族が人間の俳優であることだけだ。最後まで徹底してそうだった。帰宅後,Disney+でCGアニメ版をざっと見直したが,最初から最後までほぼ同じに思えた。既にフルCGのアニメ版があるのだから,大半をCGで描くこのリメイクの必要性を感じなかった。これなら,早めにCGアニメ版の3作目に向かうべきだった。ただし,アニメ版を見ていない若い初めての観客なら,この映画を十分楽しめると思う。
■ この映画のマスコミ試写は日本語吹替版だった。アニメ版の紹介記事で既に書いたのだが,全く吹替版は勧められない。マウイの声の尾上松也が普通の声で,巨体のマウイには適していないからだ。CGアニメ版でもそう感じたが,ドウェイン・ションソン本人の顔と体躯に尾上松也の声の吹替版はもっと違和感を覚える。他作品でのD・ジョンソンの声は,声優の小山力也か楠大典が起用されることが多いが,せめてどちらかにして欲しかったところだ。
■ そのD・ジョンソンとて,実写リメイクならもっと大柄に描くべきであった。チラシやポスターの画像では,モアナとはかなり身長差があるように見えるが,映画本編中ではそこまでの差はない。モアナを演じる豪州出身のキャサリン・ランガイアがさほど小柄でないためである。CG/VFXを駆使すれば,D・ジョンソンをもう二廻りくらい大きく描くことは容易なはずだ。さらに首から下はもっと横広がりにて,顔だけD・ジョンソンにすげ替えれば,よりマウイらしくなったはずである。これだけ膨大なかつ高度なCG/VFXを使用しながら,実に惜しい。
【CG/VFXの見どころ】
長所として評価すべきCG/VFXの代表シーンは収集と選択に時間がかかる。月が変わってしまうが,完成版をお待ち願いたい。以下は,数点のみを掲載しておく。
(
)