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O plus E 2019年Webページ専用記事#3
 
 
メン・イン・ブラック:インターナショナル』
(コロンビア映画 /SPE配給 )
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月14日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2019年6月15日 TOHOシネマズ二条
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  主演コンビを一新した4作目だが,切れ味は今イチ  
  地球上に住む地球外生物を監視する機密機関「MIB」の活躍を描いたシリーズの4作目である。コミックが原作の映画化第1作『メン・イン・ブラック』(98年1月号)は軽妙なギャグ連発のコメディで,ILMが当時最新のCC技術で描いたエイリアンも楽しかった。何よりも,新米エージェントJを演じるウィル・スミスと,とぼけた味の中年エージェントKのトミー・リー・ジョーンズのコンビが絶妙だった。数あるバディものの中でも,ベスト3に入る組み合わせだった。
 2作目『メン・イン・ブラック2』(02年8月号)は,引退したはずの"K"を現役復帰させたのは予想通りだったが,ストーリーもCG/VFXも今イチで,期待を裏切った。ここままシリーズも消滅かと思ったが,10年後に製作された3作目『メン・イン・ブラック3』(12)は,1作目を凌ぐ軽快なテンポの会心作で,遊び心も満載だった。老いが目立つT・L・ジョーンズをフル登場させるを避け,"J"を1969年の世界にタイプスリップさせ,若き日の"K"(ジョシュ・ブローリン)とコンビを組ませるという離れ業を見せてくれた。
 それから更に7年経ち,同じ手は2度も使えないので,4作目は一体どうするのだろう? というのが最大の関心事であった。パートナーを変えての新コンビ結成は予想できたが,"J"役のウィル・スミスも登場しない。シリーズの顔抜きで2人とも入替えじゃ,こんなのは「MIB」でないぞと怒るファンも少なくないことだろう。
 物語は2016年のパリで始まり,2人の黒装束の男がエッフェル塔でエイリアンを退治する。2人はロンドン支局所属で,エージェントHとエージェント・ハイTというらしい。演じるのは,クリス・ヘムズワースとリーアム・ニーソンだ。「マイティ・ソー」を演じるマッチョなイケメン男と,『96時間』(09年8月号)以降,当代一のアクション・スターとなった名優であるから,知名度においても遜色はない。このコンビなら許せるなと思ったが,"ハイT"はロンドン支局長であり,"H"の新パートナーはMIB本部から派遣の見習い女性エージェントMになってしまう。"M"を演じるのは,何とテッサ・トンプソンだった。『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17)でソーを捕縛した女戦士ヴァルキリーではないか。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年Web専用#2)でも2人は共演している。映画通ならニヤリとするこの組み合わせは,おそらく意図的なものだろう。
 メンバーを一新してシリーズ再スタートを図った作品だったが,残念ながら総合点で高い評価は与えられなかった。以下。個別評価しながら,その理由を語ろう。

【監督とキャスティング】☆+
 前3作のバリー・ソネンフィールド監督は製作総指揮の1人に退き,監督はF・ゲイリー・グレイに代わっている。かつてのヒット作『交渉人』(98)や最近の大作『ワイルド・スピード ICE BREAK』(17年5月号)等,実績ある監督のはずなのだが,『MIB』=B・ソネンフィールドのイメージは抜けない。何が違うのだろう? ちょっとした遊び心の差なのかも知れない。
 同様に,ソーとは全く違うチャラ男の"H"と若作りで肝っ玉姉ちゃんの"M"のコンビの息は合っているなと思いつつも,"K"と"J"の名コンビが懐かしい。女性の重用は最近の傾向だが,安易な企画のようにも思える。
 2人の上司エージェントO役のエマ・トンプソン(写真1)は続演で,パグ犬のフランク,CGで描いたワーム等のお馴染みのキャラが再登場するのは嬉しいが,その程度はシリーズものなら当然のことだ。むしろ,せめて"J"は出せよという思いを一層強く感じてしまう。
 本作の一件落着後,"M"は正式雇用になりMIB本部に戻るから,コンビは解消だ。さて,次作はどうするのだろう?

 
 
 
 
 
写真1 女性上司のエージェントOが凛々しい。情報機器は未来のアップル製品かと思えるデザインだ。 
 
 
 【脚本と演出】☆
 表題を「4」とせず,「インターナショナル」としたからには,世界を股にかけた大活躍を期待したのだが,さほどではなかった。ロンドン,パリ,ナポリ,モロッコのマラケシュや砂漠も登場するが,大作ならその程度はザラだ。いっそ,エイリアンを追いかけて宇宙まで行っても良かったかと思う。
 本作の敵は宇宙最強のエイリアン「ハイブ」という設定だが,特に恐ろしくもない。"M"ことモーリーの少女時代のエピソードが,エイリアンとの抗争中に生きてくるのも予想通りで,何のサプライズもない。決定的な欠点もないが,ワクワクするような見せ場もなく,「中の下」か「下の上」レベルの脚本と演出でしかない。
 このシリーズは1作毎に好不調の波が大きいので,次作は期待していいのかも知れない。

【エイリアンとガジェットのデザイン】☆☆
 この2つがシリーズの見どころだ。人間に害を及ぼすエイリアンの他に,いつものようにNY本部やロンドン支局内にさりげなく複数のエイリアンが登場する。いずれも悪くはないが,さほど斬新でなく,想定の範囲内の出来映えだった(写真2)。出番が多く,印象に残ったのは,小さなエイリアンのポーニィだ(写真3)。シリーズの続編が作られるなら,再登場することだろう。
 記憶を消失させるお馴染みのニューラライザーは本作でも使用される。その他の小物ガジェットもいくつか登場するが,特筆すべきは,エイリアンを倒す破壊兵器のデザインである(写真4)。マシンガンかバズーカ砲かと思わせる大きさで,大地に裂け目を作れるほどの威力だ。旧作で"K"と"J"が持っているガン(写真5)と比べると,相当大きく,デザインも秀逸だ。クリーチャーやガジェットのデザインは,Weta WorkshopとMPCのデザイン部門が担当している。

 
 
 
 
 
写真2 人間世界で生きるエイリアンたち。もはや,特殊メイクでなくすべてCG描写だろう。 
 
 
 
 
 
写真3 生き残った歩兵エイリアンのポーニィ 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 大地を割くような新型巨大破壊兵器。カッコいい。
 
 
 
 
 
写真5 第2作目では,まだこの程度のガンだった 
 
 
 【その他のビジュアルとCG/VFX】☆☆+
 その他,アイデアもビジュアル的にも優れていたのは,NYのMIB本部とロンドン支局を結ぶ専用の地下鉄だ。ごく普通の地下鉄車両が,突然,斬新な車両に変形し,超高速でロンドンに到着する(写真6)。このロンドン地下駅の上部がMIBロンドン支局になっている(写真7)。このデザインも未来的で,見どころの1つだ。モーリーがMIB本部に押しかけ,"O"に採用され,"M"となってロンドン支局に赴任するまでは,ワクワクする展開であった。
 CG/VFXの主担当はDNEG,副担当はMethod StudiosとSony Pictures Imageworkで,他にRodeo FX, Crafty Apes, Territory Studio等が参加している。プレピズはThird FloorとProof,の2社で,ポストビズはMPCが担当している。
 
 
 
 
 
写真6 MIB本部とロンドン支局間を結ぶ専用地下鉄。これもカッコいい。 
 
 
 
 
 
写真7 専用地下駅の上部のあるロンドン支局 
 
 
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