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O plus E誌 2009年8月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『そんな彼なら捨てちゃえば?』 :あからさまに若い女性対象の表題だが,『セックス・アンド・ザ・シティ』(08)ほどバカバカしくもなく,不快でもなかった。豪華キャストの女5人,男4人が折りなす恋愛群像劇で,様々な恋愛観・結婚観に遭遇する。理解不能の箇所も少なからずあるが,所詮男は添えものだから止むを得ない。スカーレット・ヨハンソンがフェロモンをふり撒き,ジェニファー・ジョーンズが堅物女を演じ,ドリュー・バリモアが最後に美味しいところをさらって行くという寸法だ。全員がハッピーな結末を迎える訳でないところがいい。ケビン・コノリーなる男優が,競馬の岩田康誠騎手のサル顔にそっくりだったのに笑った。
 ■『HACHI 約束の犬』 :渋谷駅前に銅像がある忠犬ハチ公をモデルにした物語。『ハチ公物語』(87)のハリウッド・リメイク版で,仲代達矢が演じた大学教授をリチャード・ギアが演じる。「ハチ」にちなんで日本公開は8月8日だ。シンプルな脚本なので,このネタだけで93分間もたせるのは苦しいなと感じた。それでも間違いなく泣ける映画に仕上がっている。会場はすすり泣きのオンパレードだった。後日,未見だった邦画版のDVDを観たが,こちらの方がずっと良くできていた。ラストシーンはもっと泣けた。ところで,上野帝大教授は夜10時に渋谷駅に降り立つが,米国のパーカー教授は毎日夕方5時着の列車で帰ってくる。国情の違いとはいえ,随分気楽な職業だ。
 ■『3時10分,決断のとき』:題名に時刻が含まれる映画に駄作なしというが,まさにその通りの秀作だった。ミステリーでもパニック映画でもなく,堂々たる本格派西部劇である。2年前の作品で,アカデミー賞には2部門ノミネートされている。それが今までお蔵入りしていたのが不思議なくらいだ。強盗団のボス(ラッセル・クロウ)と彼を護送する生真面目な牧場主(クリスチャン・ベイル)の男同士の魂のふれあいを描く。色々奇妙な役をやりたがる俳優が多い中で,主演男優2人をいかにもといったハマリ役で登場させているのがいい。21世紀に入って観た最高の西部劇だ。
 ■『ココ・シャネル』:伝説のデザイナー,ココ・シャネルを描いた映画が今夏から来年にかけて3本も公開される。この映画は,70歳でファッション界にカムバックした彼女を大女優シャーリー・マクレーンが演じるというのがウリだ。回想シーンの方が多く,若きココを演じるバルボラ・ボブローヴァもいい演技だった。TVミニシリーズを映画版に仕立てたためだろうか,物語の構成が今一つ感心しない。自立した働く女性を励ます映画なのだろうが,安手のメロドラマ風味付けなのも残念だ。もっとファッション界に旋風を巻き起こすビジネスドラマの方が面白かっただろうに。
 ■『縞模様のパジャマの少年』:素朴な題とは裏腹に,強烈な後味が残るつらい映画だ。第2次世界大戦下,ナチス将校を父親に持つドイツ人少年と強制収容所内のユダヤ人少年とが鉄条網越しに友情を通わせる。ホロコーストもの特有の残虐なシーンもなく,美しい話で終わるかと思いきや,衝撃的なラストが待っていた。もう少し救いのある結末に出来なかったのか? いや,このテーマならこうせざるを得なかったのだろう。勇気をもって正視し,語り継ぐべき真実とは分かっていても,いつまでこの悲劇を見続けなければならないのか。
 ■『ぼくとママの黄色い自転車』:母を訪ねて少年が横浜から小豆島まで旅するロードムービーで,『子ぎつねヘレン』(06)の脚本家と監督が再びタッグを組んでいる。新堂冬樹原作の「僕の行く道」は「涙でページがめくれない本」というが,映画はそれほどでもない。最後にほんの少し涙を誘うだけだ。全体的にゆるく,緊迫感も盛り上がりもない。『舞妓Haaaan!!!』(07)で怪演を見せた阿部サダヲが演じる父親などは,毒にも薬にもならない凡庸な演技だ。良心作にケチはつけるのは憚られるが,これで入場料をとるのは少し無理がある。
 ■『96時間』:パリ旅行中に誘拐された娘を助け出そうと,元秘密工作員の父親が単身で人身売買組織に戦いを挑む物語。たった93分の映画だが,カーチェイスも銃撃戦もたっぷり楽しめる。製作・脚本はリュック・ベッソン。エンターテインメントはこう作るのだぞと言わんがばかりで,やたらシリアスで長尺を好む最近のアメコミものをあざ笑うかのようだ。物静かな知性派のリーアム・ニーソンが,激しいアクションをこなすアンバランスが痛快だ。娘役の女優がもう少し可愛ければもっと良かった。いや,父親にとっては,娘が世界で一番可愛いく,かけがえのない存在だと言いたいのだろう。
   
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