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O plus E誌 2017年5月号掲載
 
 
purasu
ワイルド・スピード
ICE BREAK』
(ユニバーサル映画/東宝東和配給)
      (C) Universal Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月28日よりTOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー公開予定]   2017年4月13日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  中盤,終盤は,観たこともないカーアクション満載  
  人気シリーズも既に8作目だ。当欄は2001年の第1作目以来,全作品を紹介してきたが,5作目辺りからどんどんスケールアップし,2年おきに製作されている。その5作目以降の邦題は,『ワイルド・スピード MEGA MAX』(11年10月号)『… EURO MISSION』(13年7月号)『… SKY MISSION』(15年5月号)のように 英単語2語を入れる形である。本作は,潜水艦が氷を破って登場するメインビジュアルにマッチした題名で,分かりやすく,かつ印象的な好い題名だと思う。予告編からも分かる通り,見どころは氷上のカーアクション・シーンだ(写真1)。既に本シリーズは10作で完結し,本作は残る3部作の第1弾だと公表されている。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 最大の見どころは,氷上のカーアクション
 
 
  前作は,主役の1人,ブライアン役のポール・ウォーカーが完成前に自動車事故で急死したため,その追悼映画ともいうべき性格づけだった。再登場が有り得ない以上,シリーズは新たなメンバーを補充して再スタートせざるを得ない。前作で「敵役であったデッカードが,ドムと意気投合した貴重な仲間として登場し続けると予想しておこう」と記したが,まさにその通りになった。残る主役のドム(ヴィン・ディーゼル),既にレギュラーであるホブス(ドウェイン・ジョンソン)に加えて,デッカード(ジェイソン・ステイサム)がファミリーの一員になり,「ハゲ・トリオ」を構成する訳である。これだけ主演陣が筋肉質で,頭髪が少ない映画も珍しい。
 前宣伝では,誰よりもファミリー(ストリートカー・レース仲間たち)を大切にしていたドムが仲間を裏切り,敵対することが強調されている。それは,敵に弱みを握られ,止むを得ず敵対しているに違いなく,最後はファミリーと協力して敵を倒すことは,誰でも分かる。「弱み」はさほど秘密でもなく,映画の前半で早々と分かってしまうので,ここで明かすことを許して頂こう。ドムには,第6作で恋人であったエレナとの間に子供(息子)がいたのだ。この母子が核爆弾の保有を狙うサイバー・テロリストたちに捉えられていた……。
 監督は,本シリーズは初登板のF・ゲイリー・グレイ。かつて『交渉人』(98)をヒットさせ,最近ではヒップホップの実録伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(15年12月号)が話題を呼んだ。レギュラー出演者以外では,シャーリーズ・セロンとヘレン・ミレンという2大オスカー女優が登場する。C・セロンは『スノー・ホワイト』シリーズの女王ラヴェンナ同様,美しく,冷徹な敵役サイファーを演じている。ヘレン・ミレンの出番は多くないが,役柄は秘密にしておこう。
 以下,本作の見どころと感想である。
 ■ まず,ドムはキューバでの休暇中,ストリートカー・レースを楽しむことになる(写真2)。シリーズの原点帰りを印象づけ,久々のニトロパワーの炸裂だ。交差点に進入するクルマの制御,バック走行でのゴール,その後,バラバラになる様子等,VFXもしっかり使われている。
 
 
 
 
 
写真2 キューバでのストリートカー・レース。左がドムのボロ車両。
 
 
   ■ ノンストップ・アクションの連続でなく,語り口は緩やかで見やすい。徐々にペースアップし,敵方が明らかになったところで,舞台をNYに移し,市中での派手なカーアクション場面が登場する。サイファーにハッキングされた多数のクルマが一斉走行する様(写真3),ビルから次々と落下するシーン等々,過去に観たこともないユニークな演出だ。後者のメイキング映像が公開されていて,実際にクルマをビルから落下させている(写真4)。比較的短いシーンなので,全部CGで描くことも可能なはずだが,一部は実際にカースタントでやっているというのも,拘りとアピールなのだろう。

 
 
 
 
 
 
写真3 サイファーにハックされ,操られたクルマが殺到する
 
 
 
 
 
写真4 実際にビルから車両を落下させての撮影
 
 
  ■ 終盤はロシアの潜水艦基地に潜入しての攻防と氷上でのカーアクションだ。実際にはアイスランド・ロケを敢行したらしい。前半は,基地内での小気味いいバトルで,後半は氷上で多数のクルマが駆ける様が壮観だ。そこに乗っ取られた潜水艦が氷を破って登場する(写真5)。潜水艦は勿論CG製だが,他はどこまでが実写なのか全く識別できない。これだけのカーアクションは,ほぼすべてプレビズしておかないと,実写部分の撮影計画も立てられまい。プレビズは業界No.2のProof社が担当している。CG/VFXの主担当はDigital Domain,副担当はDouble Negativeである。他にPixomondo, Rodeo FX, Cantina Creative, Trixter, Rise FX等が参加している。
 
 
 
 
 
写真5 潜水艦が氷を破って登場する。まさに,ICE BREAK。
(C) Universal Pictures
 
 
  ■ 10作目で完結しても,きっと数年後に新シリーズを作ると思われる。さすがに20年も主役を張ったドムは半ば引退で,カメオ出演程度だろう。そして,主役は本作で赤ん坊だった男児の成長した姿であり,新しい仲間達が登場する新シリーズであると予想しておく。    
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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