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O plus E 2018年Webページ専用記事#6
 
 
シュガー・ラッシュ:オンライン』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2018 Disney
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [12月21日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2018年11月21日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  続編も絶好調。映像王国ディズニーならではのキャラが続々と登場。  
  前作『シュガー・ラッシュ』(13年4月号)はビデオゲームの世界を題材にしたフルCGアニメで,当欄では「伝統のディズニー・アニメの新たな挑戦作」と高評価を与えていた。もう6年弱も経つのかと思いつつ,本作の表題を観た時は,同作の世界を体験するオンライン・ゲームかと思ってしまった。そうではなく,続編の映画だというので,今度はNetflixやAmazonプライムでの配信専用作品かと思い込んだ。ディズニー・アニメの2作目は,劇場公開せず,直接VHSビデオやDVDの形で販売されることが多かったからである。
 前作が好評だったためか,ディズニー・アニメとしては異例の続編の劇場公開で,これが通算57作目の長編アニメ作品に当たる。1年後の58作目は『アナと雪の女王2』の予定であるから,続編製作が続く。ピクサー・ブランド作品は『トイ・ストーリー』『カーズ』両シリーズの他にも近年は続編が相次いでいるし,競合他社でも当たり前のことなので,ようやく本家ディズニー・アニメも大方針転換に踏み切ったようだ。
 そもそも,前作の原題は主人公のラルフの名前を使った『Wreck-It Ralph』(ラルフ,壊しちまえ!)であったのに,邦題は3つのビデオゲームの内,最後のお菓子の国でのレーシングゲーム名を使ってしまった。この続編の原題は『Ralph Breaks the Internet』(ラルフがインターネットを破壊する)なので,止むなく題名の継続性を重視して,「オンライン」を付すだけにしたのだろう。3つのゲーム世界はソフト的には「ゲーム・セントラル・ステーション」で繋がっていたものの,これまではアーケードゲーム機内でのゲームであり,ネット接続はされていなかった。それがいよいよインターネットと接続されるようになり,新たなる冒険が始まるという訳である。
 ゲーム内のキャラクター達が,人間の知らないところで言葉を交わすという設定は同じである。壊し屋の悪役キャラのラルフ(ジョン・C・ライリー)と天才レーサーの少女ヴァネロペ(サラ・シルバーマン)が大親友となった関係は維持され(写真1),ラルフが壊した物を修理して回るフェリックス(ジャック・マクブレイヤー)も再登場する。言うまでもなく,声の出演者たちも継続登板で,監督は前作のリッチ・ムーアに加えて,フィル・ジョンストンが共同監督を務めている。
 
 
 
 
 
写真1 本作もこの2人が主役。ラルフの声は,容貌がそっくりのジョン・C・ライリーで聴きたい。
 
 
  ある日,「シュガー・ラッシュ」のゲーム機のハンドルが壊れていることが判明し,このままでは廃棄処分になってしまう。インターネット内ではオークションで入手できることを知ったヴァネロペとラルフは,接続されたばかりのインターネット世界に飛び込むが,高値で落札してしまった。代金を24時間以内に払うため,それを賞金で稼ごうと,危険なレースに参加する破目になってしまう……という物語である。
 ずばり言って,作品の完成度は高い。現在のディズニー配給網経由の映画はいずれもそうで,後年,黄金時代だったと言われることだろう。マーベル・コミックの実写作品,SWシリーズ,ピクサーCG作品等々,制作会社は異なるが,徹底した企画調整,脚本やプレビスの練り直し,モニター試写での反応による結末の手直し等々が,しっかり行われているのだと思われる。
 以下,当欄が選んだ見どころである。
 ■ 「ゲーム・セントラル・ステーション」(写真2)やレースシーンは,既視感に溢れている。前作を上手く継承し,かつかなりパワーアップしていると感じられた。もはやCGのクオリティで注文をつけるところはない。無理にポリゴン数を増やして複雑化するのではなく,適度に昔のゲームのシンプルな画面も登場させて手口は,前作と同じだ。
 
 
 
 
 
写真2 前作でも登場した中央駅の光景は既視感あり
 
 
  ■ 第1の注目ポイントはインターネット世界の描き方だろう。「ゲーム・セントラル・ステーション」やレースシーンは,既視感に溢れている。ネット社会の危険性,警鐘もしっかり盛り込んだ上で,ネット用語やネットメジャー各社のロゴやCMもしっかり登場させている(写真3)。ビジュアル的には,インターネットの壮大さと,現実世界とは別の刺激的な世界であることを意識させる,まずまず妥当なデザインだ(写真4)
 
 
 
 
 
写真3 本家のDisney Animationを中心に系列会社を従えた構図。さずが現代随一の映像王国。
 
 
 
 
 
 
 
写真4 インターネット世界をCGで描くとこうなるというディズニーからの回答
 
 
   ■ もう1つのセールスポイントは,「Oh My Disney」なるサイトで,歴代ディズニー・プリンセス14名が勢ぞろいして,ヴェネロペと出会うシーンである(写真5)。白雪姫,シンデレラは勿論,『眠れる森の美女』(59)のオーロラ姫の伝説のプリンセスに加え,『リトル・マーメイド』(89)のアリエル,『美女と野獣』(91)のベル,『アラジン』(92)の黄金トリオは,原典のセル調2Dデザインを活かして3D-CG化されている。近作の『塔の上のラプンツェル』(11年3月号)や『アナと雪の女王』(14年3月号)のエルサとアナ等は,最初からCGデザインだから再利用である。『メリダとおそろしの森』(12年8月号)のメリダは,ピクサー作品のはずだったから,もはや本家も子会社も同じ扱いだ。版権をもっている親会社ゆえのできる技である。プリンセスだけでなく,玩具のバズ・ライトイヤーやロボットのベイマックス,さらにはSWシリーズのストームトルーパーまでが登場する(写真6)。いやはや,恐れ入りました。
 
 
 
 
 
 
 
写真5 歴代のディズニー・プリンセスが勢ぞろい。髪形と衣装で識別しないと,見分けがつかない。
 
 
 
 
 
 
 
写真6 こんなキャラまでが登場するとは,観客は大喜び
(C) 2018 Disney. All Rights Reserved.
 
 
  ■ 物語の骨格がしっかりしている。映画はシナリオだの基本通りで,クライマックスの盛り上げがうまい。パロディも多数盛り込まれているが,ディズニー作品ゆえに下ネタはない。ネット好き,ゲーム好き,アニメ好き,映画好き,それぞれが楽しめるエンタメに仕上がっている。  
 
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