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O plus E誌 2016年6月号掲載
 
 
スノーホワイト/
氷の王国』
(ユニバーサル映画 /東宝東和配給 )
      (C) Universal Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [5月27日よりTOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー公開予定]   2016年4月12日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  安易な企画と脚本で,豪華キャストがもったいない  
  アメコミ・ヒーローの次は,ダーク・ファンタジーだ。またかという気もするが,CG/VFXの発展史を同時代記録することが主目的の当欄としては,避けて通れない。グリム童話の「白雪姫」を実写映画化した『スノーホワイト』(12年7月号)の続編であり,白雪姫の継母で,邪悪な女王ラヴェンナの妹フレイヤが主役だという。そんな人物が原作童話にいたのかと思うが,この手のファンタジーの登場人物など,魔力でどうにでもなる。何と,この映画には,肝心の白雪姫が登場しないらしい。
 あれ!? 魔女の名は『マレフィセント』(14年7月号) じゃなかったっけ? それに,続編は主人公が時間を遡る前日譚だと聞いていたのに……。調べてみると,「マレフィセント」は「白雪姫」でなく,「眠れる森の美女」に登場する魔女だった。時間を遡るのは,『アリス・イン・ワンダーランド』(10年5月号)の続編で,今夏に公開される『…/時間の旅』だった。混乱するのも当然で,この5本はすべて同じプロデューサー,ジョー・ロスの手なる映画なのである。何だ,ディズニーアニメの代表作の実写映画化案を出し,ディズニーとユニバーサルの2社に振り分けているだけじゃないか。CG/VFXフル活用で大作感を出しているが,企画自体が安易過ぎるぞ。
 前作の監督ルパート・サンダースは,白雪姫を演じたクリステン・スチュワートとの不倫関係が発覚し,共にこの続編から降ろされたらしい。紆余曲折の末に起用されたのは,前作の第2班監督兼VFXスーパバイザであったセドリック・ニコラス=トロイヤンである。勿論,これが監督デビュー作だ。それでは心もとないと思ったのか,飛び切りの豪華キャストが配された。まず,前作から,死んだはずの魔女ラヴェンナ役のシャーリーズ・セロンと,白雪姫が恋した樵夫のエリック役のクリス・ヘムズワースが,引き続き登場する。そこに,主役のフレイヤ役でエミリー・ブラント,エリックの恋人サラ役でジェシカ・チャステインが加わった。最近,出演作が目白押しで,活躍が目覚ましいこの2人が加わるとは,これは相当強力な布陣だと感じた。
 ところが,やはり急ごしらえの付け焼き刃だった。物語は,まだ白雪姫が誕生する以前の時代から始まり,女王の妹フレイヤが怒りと悲しみで魔力を得て,「氷の女王」となる顛末から始まる。後半は,前作より後の物語で,フレイヤが魔法の鏡を使って,死んだ姉ラヴェンナを蘇らせる展開となる。このとってつけたような設定が不自然で,脚本もかったるい。以下,失望の念を込め,CG/VFXを絡めての辛口論評である。
 ■ まず主役のE・ブラントは,最近アクションづいているが,かつてヴィクトリア女王を演じただけあって,ノーブルで凛とした役柄もよく似合う(写真1)。ただし,彼女の氷の宮殿や何でも凍らせしまう魔力は,『アナと雪の女王』(14年3月号)のエルサとそっくりではないか。ここでもディズニーアニメのパクリかと嘆息する。いっそ,「Let It Go」でも歌わせてみたくなる(笑)。元はアンデルセン童話の「雪の女王」だと開き直られればそれまでだが,グリム童話とアンデルセン童話をミックスしてしまうこと自体が安直だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 何でも凍らせてしまう女王は,まるで『アナ雪』のエルサ
 
 
  ■ CG/VFXの主担当は,今や業界の盟主のDouble Negativeで,他にPixomondo, Mill, Digital Domain等も名を連ねている。彼らの腕が悪いはずはなく,質は上々なのに,その使い方が感心しない。氷の女王軍の行進シーンで,フレイヤが白い獣に乗って登場するが,不自然かつどこかで見かけたようなシーンだ(写真2)。魔法で創った雪の荒野や山々は美しいが,ヘビ,鹿,白いフクロウ,妖精等々はまずまずの出来映えだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
写真2 CGならではのシーンだが,何も感心しない
 
 
 
  ■ 後半のラヴェンナの復活には,魔法の鏡が使われ,前作にも登場したミラーマンが出現する(写真3)。甦ったラヴェンナは,相変わらず,惚れ惚れするほど美しい。ラヴェンナの魔法にも,数々のVFX技術が駆使されているが,特筆するほどのものではない。彼女の黒い触手などは,醜悪の極みだ(写真4)。と言いながら,評価せざるを得ないのは,終盤の盛り上げの上手さで,邦画が真似できない豪華なシーンの連続である。もう1つ評価すべきは,ジェームズ・ニュートン・ハワードが担当する音楽だ。ハンス・ジマーとは一味違う,豪華かつ抑揚のあるサウンドで,映像をリードしている。
 
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写真3 前作に続いて登場する鏡の精のミラーマン
 
 
 
 
 
写真4 女王の美しさは格別だが,黒い触手は醜悪
(C) 2015 Universal Pictures
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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