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O plus E誌 2001年8月号掲載
 
 
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『ドリヴン』
(フランチャイズ・ピクチャーズ作品
/日本ヘラルド映画&松竹配給)
 
       
  オフィシャルサイト[英語   (2001/6/28 日本ヘラルド映画試写室)  
         
     
  スタローンはレーサー服がよく似合う  
   『ロッキー』『ランボー』のシルベスター・スタローンが,1994年に事故死したアイルトン・セナを偲んで書き下ろした脚本に,自ら製作・主演したレーサー物語である。伝説となった「音速の貴公子」の追悼らしくレース・シーンは満載だが,舞台はF1ではなく,アメリカのモーター・スポーツCART(旧インディ・カー)の世界が描かれている。製作・監督は『ダイハード2』『ディープ・ブルー』のレニー・ハーリン。スタローンとのコンビは,大ヒットの『クリフハンガー』(93)で経験済みだ。
 スタローンの役どころは,元花形ドライバーのジョー・タント。昔なじみのチーム・オーナー,カール・ヘンリー(バート・レイノルズ)の依頼で,伸び悩む若手天才ドライバー,ジミー・ブライ(キップ・バルデュー)のサポート・ドライバーとしてCARTレースに復帰する。物語の中心は,ジミーとトップレーサー,ボー・ブランデンバーグ(ティル・シュワイガー)の2人で,チャンピオン争いの他に恋人ソフィア(エステラ・ウォ−レン)を巡る3角関係が生じ,さらにレース中の大事故も絡んで…,という男たちの友情と熱き戦いがテーマだ。
 レース・シーンが売りで男女関係は添え物とはいえ,ストーリーは退屈だ。大柄で突っ立っているだけの女性がおよそ魅力的でないから,3角関係にもリアリティが感じられない。もともとスタローンの脚本はどれも2流だが,自分は脇に回って渋い役を演じたいという魂胆が感じられる。C・イーストウッドを意識してのことだろうが,ちっとも渋くない。
 その半面,スタローンのレーシング・スーツ姿はピッタリ決っていた。首が太いのはレーサー向きだし,風貌はジャン・アレジを思い出させる。ヘルメットの下の目は,アラン・プロストにもよく似ている。『タイタンズを忘れない』(00)で抜擢されたキップ・バルデューの甘いマスクも,ヘルメットを着けるとセナを彷彿とさせる。おそらく,このルックスを重視しての起用だろう。
 敵役のチャンピオン・ドライバーがドイツ人というのはミハエル・シューマッハ(顔は似てないが),車椅子姿のチーム・オーナーはフランク・ウィリアムズがモデルだろう。チャンピオン争い中のドライバーが足を骨折し,シーズン後半突然復帰するというのも,数年前のM・シューマッハにヒントを得たと思われる。
 このように,どう考えてもF1を舞台に書かれたはずの脚本がCARTに転用されたのは,アメリカでの興業成績と撮影条件を考慮してのことなのだろう。
 
     
  見どころはCGカーのクラッシュ・シーン   
   前半約1時間の退屈な3角関係の解説が,後半のカーチェイスやレース・シーンでようやく盛り上がってくる。まるで『パール・ハーバー』そっくりだ。台本はイマイチでも,アクション演出が上手い監督の腕で,ぐいぐい引っ張ってくれる。
 この映画のVFX主担当は,Amalgamated Pixels社とLook! Effects社。他に,メトロライト・スタジオやピクセル・マジック等数社も参加している。
 登場するレーシング・カーの約1/4がCGだという。ハーリン監督が1000ドルを賭けて,どれが実物でどれがCGかを当てようとしたが,何回やっても全く当らなかったらしい。実物のCARTカーを3次元スキャンして幾何モデルを入れたというが,最近のCG技術でクルマを描くのはそう難しくない。F1番組のオープニングやビデオゲームで見るフルCGカーの見事さを考えれば,映画ならもっと凄いのは当然だろう。 「サーキットの360度スピンの世界へ」というキャッチ・コピーがアピールするのは,『マトリックス』でも使われたImage-Based Rendering技術による背景映像の回転シーンだ。これは数ケ所で見られたが,特に感心するほどのものではなかった。迫力満点だったのは,レーシング・カーでの公道カー・チェイスだ。再生速度の調整とディジタル合成で,今までにないユニークなチェイスを楽しませてくれる。夜のシカゴの街というのが味噌で,合成のアラを隠し,迫力も倍加されている。
 もう1つの見ものはクラッシュ・シーン(写真)だ。これは当然CGで描いたクルマだろう。F1に比べて,CARTの魅力はオーバーテイクとクラッシュだから,危険なシーンの演出にVFXの威力が生きてくる。すれすれのサイド・バイ・サイドやホイルスピンなどは,実レースの映像にCGカーが書き加えられている。好天のサーキットで撮影して,そこに雨を書き加えたり,本物のクラッシュを撮影しておいて,そこに大観衆を書き加える,といった視覚効果も含まれているようだ。
 
     
 
激しくクラッシュしたり,宙に舞うのはディジタル製のレーシング・カーだろう
 
     
   トロント,マイアミ,リオデジャネイロ,そして日本の茂木(もてぎ)で撮影した本物のレースと観客席の光景は,臨場感に溢れていた。こういう映画は,音響効果の優れた映画館で見るのがいい。前半はカットして,45〜50分のIMAX映画にしたら面白かったのにと思う。  感動ではなく,爽快感を求める映画ファンには適している。『パール・ハーバー』のようにラブ・ストーリーを前面に出さず,「時速400キロのエクスタシー」を謳っているのが素直でいい。余談だが,日本のオフィシャル・サイトのトップページで,クルマの部分にマウス・カーソルを当ててみるといい。最近のウエブページはこんな演出までできるのかと驚くはずだ。  
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