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O plus E誌 2000年12月号掲載
 
 
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『ピッチブラック』
(ユニバーサル映画
/ギャガ・ヒューマックス配給)
 
       
      (ギャガ試写室 00/10/23)  
         
     
  B級低予算映画の秀作  
   この映画の米国公開は2000年2月18日。先月号で紹介した『ギャラクシー・クエスト』ほどではないが,待機期間が長かった組である。SIGGRAPH 2000 やCinefex誌で取り上げられていただけに,本欄としても待ち遠しかった作品だ。
 主演は『プライベート・ライアン』でカバーゾ二等兵を演じたヴィン・ディーゼル,と言われても記憶にないだろう。監督・脚本はデヴィッド・トゥーヒー,共演のラダ・ミッチェルや脇役人も馴染みのないインディペンデント系の顔触れだ。国際配給ルートはユニバーサル映画扱いだが,準メジャー扱いの低予算作品である。
 定期旅客宇宙船が不時着した惑星は,3つの太陽をもち常時昼間という砂漠の星だった。この星からの脱出をめざす生き残った乗客と乗組員は,洞窟の闇に棲む凶暴な未知の生命体に遭遇する。太陽光の下では安全なはずが,3つの太陽が22年に一度直列し,日蝕で闇が訪れる。この闇の中で生き残れるのは…というのがストーリー概要である。宇宙生命とのバトル,脱出へのサバイバルという単純な構図なのだが,これがなかなか悪くない。
 同じB級SF映画でも,『ギャラクシー・クエスト』が明るいパロディ基調であるのに対して,こちらはもっとハードコアSFで,タイトル通りの黒基調だ。硬派のSFファンには,ブラックビートとマッチしたこの映画のテンポはいい味と感じるだろう。エイリアン系として,かなり面白い映画に仕上がっている。
 総予算25万ドルというのは,ハリウッド・メジャー映画の約半分。『ダイナソー』の10分の1以下である。撮影はオーストラリアで,タレントも監督も無名なら,VFXスタジオも一流どころは使えない。それでこの分量のSFX/VFXを見せてくれるのは,大したものだ。
 再三登場するエイリアン(というか,こちらが先住生命なのだが)は,模型とCGの使い分けで,違和感のない使い方だ(写真1)。これは,英国のダブル・ネガティブ社担当で,全くレベルの低さを感じさせない。一方,土星のような輪をもつ惑星(これはこの星の月か?)が起こす日蝕の場面は,マジック・カメラ社が担当している(写真2)。エンディングで,宇宙船がこの輪(岩石の集まり)をすり抜けるシーンもなかなか見ものだ。この映画は,約20名のVFXメンバーでこれだけの分量をこなしたということを大いに誇りにしているようだ。
 ところで,この種のSFでは,未来は宇宙旅行が当然のように描かれてきたが,天候不順だけで地球に帰還できないスペースシャトルの現状を考えると,21世紀になっても当分実現しそうにない。SF作家はさぞやりにくいだろうなと感じるこの頃である。
 
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写真1 この映画の主役の宇宙生命体写真2 こちらはマジック・カメラ社担当
(c)2000 Double Negative Ltd.
   
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