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O plus E誌 2017年2月号掲載
 
 
ドクター・ストレンジ』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2016 Marvel.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月27日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2016年12月14日 TOHOシネマズなんば[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  驚天動地のスペクタクルは,是非3D大スクリーンで  
  今月号のトップを飾るのは,圧倒的なCG/VFXで迫る本作だ。この題名から,映画ファンはどんなジャンルの作品を想像するだろう? オールドファンなら,スタンリー・キューブリック監督の『Dr. Strangelove』(64)を想い出すに違いない。『博士の異常な愛情』(本当の題は,とてつもなく長い)なる奇妙な邦題がついていたが,「Strangelove」は主人公の姓である。本作の題はその省略形ではなく,映画もリメイク作ではない。「変人博士」か「曲者医師」とでもいうべき主人公は,何と,マーベル・コミックのスーパーヒーローなのである。
 主演は,ベネディクト・カンバーバッチ。悪人面の個性派俳優で,正義の味方のスーパーヒーローっぽくないが,赤いマントをつけた姿はそれらしく見えなくもない。原作コミックを見ると,敵役かと思うような妖術使いなので,このキャスティングも頷ける。日本人には馴染みのないヒーローだが,コミック初登場は1963年というから,結構古い。21世紀に入ってからは,他のヒーロー作品に脇役として登場することが多いようだ。実写映画化は初めてだが,「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズの14作目として製作されている以上,かなりのクオリティだと想像出来るし,先々は『アベンジャーズ』シリーズへ合流させるのだろう。
 身体的に超人的運動能力が備わっている訳ではなく,とてつもない魔術・魔法を駆使して敵と戦う。また長年の修業により,テレパシー,透視能力,不老能力が備わったというから,何でもありだ。映画初登場ゆえに,傲慢な天才外科医が自動車事故で挫折し,ヒマラヤ奥地で師匠について魔術を会得するまでの過程が詳しく描かれている。この辺りは『バットマン ビギンズ』(05年7月号)を彷彿とさせる語り口となっている。
 監督・脚本は,スコット・デリクソン。リメイク作『地球が静止する日』(08)で,VFX多用作は経験済みだが,その後目立ったメジャー作品はないので,本作の起用は大抜擢の部類だろう。B・カンバーバッチ以外の出演者は,恋人のパーマー医師役に筆者のお気に入りのレイチェル・マクアダムス。可愛過ぎて,傲慢なDr. Strangeには不釣り合いなくらいだ。魔術師としての兄弟子モルド役のキウェテル・イジョフォーは個性的だが,スキンヘッドで登場する師匠エンシェント・ワンを演じるティルダ・スウィントンの存在感が抜群だ。もう1人,闇の魔術師カエシリウス役にマッツ・ミケルセンを配したのが大正解だ。先月号の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では主人公の父親役で登場したが,『007/カジノ・ロワイヤル』(07年1月号)同様,悪役の方が圧倒的に迫力がある。本作では,単に目から血を流すのではなく,目の周りにもっと強烈なデジタル・メイクを施して登場する。
 以下,その他のCG/VFXに関する見どころである。
 ■ 本作は,本号(2月号)での掲載が残念だった。本邦公開日がもう少し早ければ,先月号で紹介し,昨年のVFX年間ベスト1か2にランクインさせていた。来たるアカデミー賞では,視覚効果部門で『ジャングル・ブック』(16年8月号)とオスカーを争うことだろう。主担当はILMだが,Framestore, Method Studios, Luma Pictures, Rise FX, Lola VFX等も参加している。
 ■ CG/VFXは多種多様で紹介し切れないが,まずはエンシェント・ワンが授ける「光の曼荼羅模様」だ(写真1)。Dr. Strangeも操れるようになり,全編を通じて印象的な幾何学模様の発光体が登場する(写真2)。アストラル体なる「幽体離脱状態」も興味深い(写真3)。この両方を用いて,時空間を自在に往来するのだから,世界中「どこでもドア」でやりたい放題だ。それが魔法で幻覚だといえ,何かもう少し理屈づけが欲しかった。
 
 
 
 
 
写真1 師匠から「光の曼荼羅」を伝授される
 
 
 
 
 
写真2 修業の甲斐あって,自在に操れるようになる
 
 
 
 
 
写真3 一突きされただけで幽体離脱状態に
 
 
  ■ 多元宇宙や暗黒次元などという摩訶不思議な言葉も飛び出し,その点でも描きたい放題である。それが中途半端でなく,徹底して異様な世界として描いているのが立派だ。逆に剽軽で滑稽なのは,赤マントだ。マント自体の意志でDr. Strangeにまとわり付く様が楽しい。
 ■ 極め付きの大圧巻は,"Mirror Dimension"なる映像幻覚だ。ロンドン,ニューヨークのビル群が,せり上がり,鏡像が作られ,折畳みと分割で空間が変形する(写真4)。その逆回しの映像シーケンスも心地よい。技術的にはさほど難しくないが,デザイン的に斬新だ。まさに驚天動地の映像で,当欄の読者なら,これを大画面の3D上映で観ない手はない(写真5)。近い将来,テーマパークのアトラクションに導入され,人気を博することだろう。ただし,これはNY市街地までで十分で,最後の香港でまで繰り返したのはくどいと感じた。  
 
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写真4 圧巻の大スペクタクル! 高層ビル群の都市空間が反転し,折り畳まれる「Mirror Dimension」。
 
 
 
 
 
 
 
写真5 終盤は,この入り組んだ空間内でのバトルに。3D大画面で観ると,目がくらくらする。
(C) 2016 Marvel.
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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