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O plus E誌 2017年2月号掲載
 
 
ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月3日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2016年12月20日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  予想通り,少しダークなバートン・ワールドが全開  
  先月号の『人魚姫』の紹介文で,その名前だけで当欄への掲載が確実な監督名を挙げた。上述のロバート・ゼメキス監督は入っていたが,重要人物を1人忘れていた。本作のメガホンをとる奇才ティム・バートン監督である。この表題だけで,児童文学が原作のダークファンタジーだろうと想像がつく。予告編を見れば,『チャーリーとチョコレート工場』(05年9月号)や『アリス・イン・ワンダーランド』(10年5月号)と同ジャンル,同テイストの映画だと感じる。実際,本編もその予想通りの内容で,バートン・ワールド全開だ。
 原作は,2011年に出版されたランサム・リグズのデビュー作「ハヤブサが守る家」である。内気な少年ジェイクが唯一心を許す祖父エイブは,自宅の裏の森で倒れていて,最期に「島へ行くんだ」と言葉を残して息絶える。父親に連れられて英国ウェールズのケルン島に来たジェイクは,別世界への入口を見つけ,美しい庭園に囲まれた「ミス・ペレグリンの家」へと辿り着く。そこは奇妙な子供達が住む児童保護施設で,彼らは邪悪な敵バロンに命を狙われていた。ジェイクは,自分が特殊なパワーを持っていることを発見し,ミス・ペレグリンと協力して敵と戦う。なるほどこれは,少年チャーリーが向かう大富豪のチョコレート工場,アリスが迷い込む不思議の国での冒険や奇妙な体験とほとんど同じパターンである。画調も雰囲気も過去の2作品に似ている。
 少年ジェイクを演じるのは,短評欄の『僕と世界の方程式』でも主演を務めたエイサ・バターフィールド。『ヒューゴの不思議な発明』(12年3月号)の子役時代と比べると,随分大きくなった。彼が惹かれ合う美少女エマ役は『マレフィセント』(14年7月号)で主人公の少女時代を演じたエラ・パーネル。共に子役出身の若いカップルだ。ミス・ペレグリンには,バートン監督が『ダーク・シャドウ』(12年6月号)で魔女役に起用したエヴァ・グリーン。ボンド・ガールではあるが,こうしたダークな映画がよく似合う。助演陣では,サミュエル・L・ジャクソンやジュディ・デンチといったベテラン俳優が脇を固め,存在感を発揮している。
 以下,当欄の視点での解説と感想である。
 ■ ミス・ペレグリンは「インブリン」なる種族で,ハヤブサに変身し,時間を自由に操れ,同じ1日を何度も繰り返す「ループ」を作れるそうだ。もうこれだけで,ファンタジー設定は十二分で,かなりのCG/VFXの利用が期待できる。では,「奇妙な(peculiar)」子供達はどんな造形で登場するのかと思ったが,外見はさほど特異ではなかった。まず,エマは気球のように空中浮揚できる(写真1)。以前なら,ワイヤー吊りだっただろうが,今は比較的単純なデジタル合成だろう。オリーヴは指先から炎を放ち,ヒューは口から無数の蜂を放出できる(写真2)。小さな少女ブロンウィンは怪力の持ち主で,ミラードは透明人間だが,いずれもCG/VFX描写の難易度は高くない。少しユニークなのは少女クレアで,後頭部に大きな口があり,鋭い歯を剥き出して食事する(写真3)
 
 
 
 
 
写真1 鉛の靴を履いていないと,エマは空中浮揚してしまう
 
 
 
 
 
写真2 ヒューは体内に無数の蜂を飼っていて,口から放出する
 
 
 
 
 
 
 
写真3 何と,後頭部に大きな口が有り,鋭い歯が備わっている
 
 
  ■ ミス・ペレグリンが変身するハヤブサは,一部は本物だろうが,大半はCG製だ。彼女の大きな家もデジタル合成の産物と思われる。それでも,全体としての質・量はさほどではないなと思っていたら,終盤40分間は凄まじかった。とりわけ,沈没船の引き揚げシーンは圧巻で,その後は怒濤の展開となる。キャラクター造形で最も特徴的なのは,ホローなる手足が長い怪人である。目玉がない上に,口からはタコかイカのような触手が何本も出て来る。他作品でも見かけた既視感のあるルックスだが,どっちみちCGで描いてパフォーマンス・キャプチャーで動きをつけるなら,目も口も姿も,思いっ切り醜悪にしたという感じだ(写真4)
 
 
 
 
 
写真4 これが邪悪なホロー。既視感があるが,近寄って欲しくない。
 
 
  ■ ラスト・ファイトは遊園地でのバトルだ。子供たちの工夫で透明のホローを見えるようにし,多数の骸骨を動かしてホローと戦わせる(写真5)。技術的新規性はないが,ボリューム的には満足だ。主担当はDouble Negativeで,Skyline VFX,MPC,Rodeo FX等も多人数を投入してかなりのシーンを担当している。  
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写真5 骸骨は勿論CG製(上)で,MoCap演技で動かしている(下)
(C) 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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