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O plus E誌 2012年6月号掲載
 
 
 
 
『ダーク・シャドウ』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
 
      (C) 2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [5月19日より丸の内ルーヴル他全国ロードショー公開中]   2012年5月8日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  さほどダークでなく,誰もが楽しめる娯楽大作  
  白塗りの顔に,目の縁を黒く塗り,赤い唇というジョニー・デップのメイクを観ただけで,これはティム・バートン監督作のダーク・ファンタジーだと分かる。何しろ,8度目のタッグを組むのだから,よほど相性がいいのだろう。というか,バートン・ワールドの個性的な役柄をきちんと主演できる俳優は,他に見当たらない。さらに,監督夫人のヘレナ・ボナム=カーターにも,またまた奇妙な役を与えているに違いないと予想できる。それもまた,バートン作品の愉しみの1つだ。
 良く似た風貌ながら,『アリス・イン・ワンダーランド』(10年5月号)の帽子屋とは少し違うと思ったら,今回は何とヴァンパイアだそうだ。そーか,ジョニー・デップまでがヴァンパイアか。この数年,ハリウッド作品に特にヴァンパイアものが多いと感じる。本作には原作小説があるのかと思ったら,元は1960年代後半から70年代にかけて米国で放映されたTVシリーズで,バートン監督もジョニー・デップも格別の想い出があるらしい。今月のメイン欄は3本ともこのパターンで,日本人はオリジナルを知らないが,本作はその予備知識なく観ても,誰でも楽しめる娯楽作品に仕上がっている。
 物語の始まりは1760年で,イギリスからアメリカに移り住み,町を築いて財をなしたコリンズ一族の御曹司バーナバス(J・デップ)が主役である。遊び心で手を付けたメイドが実は魔女だったため,彼女の恨みから彼はヴァンパイアにされた上,生き埋めにされ,恋人のジョゼットは非業の死を遂げる(写真1)。時は流れて1972年,建築現場で発見された棺から,バーナバスは約200年ぶりに復活し,すっかり衰退してしまった一族とともにコリンズ家再興を期す……。という設定だが,実に軽快なテンポで物語が進行する。これが鬼才ティム・バートンの映画かと思うほど分かりやすく,ワクワクしながら見入ってしまう。デヴィッド・フィンチャーと同様,映像美への拘りを残しつつ,一作毎にストーリー・テラーとしての才能も向上している。
 
 
 
写真1 ヴァンパイアにされ,このまま生き埋めに
 
 
  キャストは,魔女アンジェリークに『007/カジノ・ロワイヤル』(07年1月号) のボンド・ガールを演じたエヴァ・グリーン。この妖艶な魅力は魔女役に相応しく,ジョニー・デップと堂々と渡り合う(写真2)。1972年のコリンズ家を守る女当主のエリザベス役は,ミシェル・ファイファー。別の映画では魔女を演じていた彼女だが,本作では気品と風格のある貴夫人役で,新しい魅力を見せている(写真3)。その娘キャロリンには,『キック・アス』(10年12月号)のクロエ・グレース・モレッツ。終盤,『モールス』(11年8月号)で演じていた役そのものの変身ぶりを発揮する。そして,18世紀の恋人ジョゼットと生き写しの新米家庭教師ヴィクトリアを演じるのは,豪州出身の新進女優ベラ・ヒースコート。清楚な美人で,本作が出世作になるだろう。この女性たちが,1人ずつの個性に合わせて,丁寧かつ魅力的に描かれている。
 
 
写真2 この妖艶な魔女役が結構よく似合う
 
 
 
写真3 M・ファイファーは,一族の女当主役。これもよく似合う。
 
 
  こうした大作の魅力は,美術セットや衣装に製作費をかけられることだが,コリンズタウンの港,家業の缶詰め工場,コリンズ家の邸宅や屋内の調度類にもたっぷりと手間暇をかけている。以下,それを補強するCG/VFXに関する論評と印象である。
 ■ 18世紀のコリンズタウンの港に浮かぶ船,町の造成の様子,海岸線からヤモメ岬の景観(写真4),そこから飛び込むジョゼット等々,冒頭からCG/VFXのオンパレードである。歯や指が伸びてバーナバスがヴァンパイア化する過程も勿論VFXの産物だ。本作のVFX主担当は,Method Studios VancouverとThe Senate Visual Effectsで,こうした中堅スタジオが機会を得て,力をつけてくるのは喜ばしい。MPCやBUFといったメジャーどころも部分参加している。
 
 
写真4 下から見上げたヤモメ岬。こんな地形が実際にある訳がない。
 
 
  ■ 明らかにCG/VFXと分かるスチル写真で公開されているのが,ジョゼットの亡霊(写真5)だけなのが残念だが,コリンズ家の装飾や家自体が変身する仕掛けにもたっぷり視覚効果が使われている。勿論,魔女による魔法の数々の,終盤の壮絶な戦いも大作らしいゴージャスなCG/VFXの見せ場だ。魔女アンジーの最期は,顔がガラスのように変化し,壊れ散る様は最近の流行だが,見せ場の1つでデキは悪くない。
 
 
写真5 200年後に出没した亡霊。このVFXはまだ序の口。
 
 
   ■ 題名からするとホラー系に思えるが,全く怖くなく,むしろユーモアだらけのコメディ調で,随所で笑いを誘う。とりわけ,ヴァンパイアのバーナバスと魔女アンジーのベッドシーンは強烈かつ暴力的で,そのハチャメチャ振りは笑いを禁じ得なかった(写真6)  
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写真6 2人の激しい愛欲シーンのあと。笑いを誘う。
(C) 2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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