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O plus E誌 2017年1月号掲載
 
 
人魚姫』
(星輝海外有限公司 /ツイン配給 )
      (C) 2016 The Star Overseas Limited
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月7日よりシネマート新宿他全国ロードショー公開予定]   2016年12月2日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  世界的大ヒット作だが,CG/VFXが控えめなのが残念  
  監督名を聞いただけで,当メイン欄で取り上げることがほぼ確実な監督が何名かいる。老匠リドリー・スコットを筆頭に,ロバート・ゼメキス,クリストファー・ノーラン,最近ならJ・J・エイブラムスも当確だ。日本人監督ならぶっちぎりで山崎貴で,中国/香港映画なら本作のチャウ・シンチー(周星馳)の名を挙げねばならない。何しろ『少林サッカー』(02年5月号)『カンフーハッスル』(05年1月号)の2作のVFXは強烈だった。当欄の評価は,文句なしにだった。
 元々は香港映画のスターで,1988年にデビューし,40本以上の作品に出演している。『詩人の大冒険』(93)から監督を兼ねるようになり,その後,大半の作品で脚本・製作も担当している。日本で広く公開されたのは上記『少林サッカー』からであり,いつ頃からCG/VFXを本格利用するようになったのかは定かではない。
 本作は,その彼の3年ぶりの新作で,中国で2016年2月に公開されるやアジア歴代興行No.1ヒットとなったそうだ。欧米でも公開済みで,既に1億人以上の観客動員を達成しているという。それなのに,本邦ではあまり大きな広報宣伝がなされていない。あわや見逃すところで,急ぎサンプルDVDを取り寄せた次第だ。
 前作の『西遊記〜はじまりのはじまり〜』(14年12月号)と同様,香港映画ではなく中国映画として製作されている。観客動員・興行収入記録や,欧米への配給が好調なのは,そのためもあるのだろう。一方,残念なのは,両作ともチャウ・シンチー自身は監督・脚本・製作だけに留まり,監督自らが主演していないことである。
 本作の原題は『美人魚』,英題は『Mermaid』で,美しい人魚が主役である。コメディ・タッチで始まり,やがてラブ・ファンタジーへと発展する。時代は現代,若き実業家リウ(ダン・チャオ)が,香港郊外のイルカの生息する自然保護区域を買収し,一大開発プロジェクトを開始するが,その環境破壊により,同地区の海に棲んでいた「人魚族」が絶滅の危機に瀕する。リウを抹殺するため,人間の女性に変装したシャンシャン(リン・ユン)が刺客として送り込まれるが,やがてリウとシャンシャンは惹かれ合うようになってしまう……。笑いとロマンスとアクションの中に,環境破壊への警鐘という社会問題を盛り込んだというのがウリである。
 ヒロインのリン・ユンは,12万人の候補から選ばれたというだけあって,若く,清楚な美人である(写真1)。女実業家ルオラン役のキティ・チャンもかなりの美形だ(写真2)。このレベルの美女が2人揃うのは嬉しい。人魚族の熱血リーダーの「タコ兄」を演じるショウ・ルオの存在感は抜群で,彼が陰の主役とも言える。その他,チャウ・シンチー組の常連が次々と顔を出す。
 
 
 
 
 
写真1 この美少女では,とても刺客は務まらない
 
 
 
 
 
写真2 女実業家役のキティ・チャンも,かなりの美形
 
 
   以下,CG/VFXに関する感想と評価である。
 ■ 人魚の下半身の魚部分を描くのは当然 CG主体と成らざるを得ないが,これがさほどの出来ではない(写真3) 。中には光沢のある布を下半身に巻いたか,せいぜい尾びれの部分をVFX加工しただけと思しきシーンもある。上半身と下半身の境界もぼかしてあるだけだ。水中の動きも今イチだ。華麗に泳ぎ,舞うシーンが観たかったのに,バタ足で泳ぐ人間に最低限CGをかぶせた程度だった。人魚が主人公で,その姿を頻出させるなら,今後の作品のお手本となるようなCG人魚像を見せて欲しかったところだ。
 
 
 
 
 
写真3 およそ色気のない人魚たち。CG加工も最小限。
 
 
  ■ 一方,老人魚が太古からの人魚の歴史を振り返るシーンはCG中心で上出来だった。CGで最も見応えがあるのは,タコ兄の足で,質感も動きも上々だ(写真4) 。彼の登場場面のドタバタ・ギャグが本作を支えている。それでも,前作『西遊記…』冒頭の半魚半獣の妖怪(実は沙悟浄)の登場シーンには負けているし,『少林サッカー』『カンフーハッスル』の面白さには遠く及ばない。彼の他に,奇妙奇天烈なキャラをもう数人登場させれば,それは達成できたと思う。中国資本の映画となり,少し優等生的な映画になってしまっている。馬鹿馬鹿しく,楽しく,サービス精神てんこ盛りがチャウ・シンチー映画の真骨頂なのだから,もっと高いレベルでのVFX娯楽作品を期待しておきたい。   
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写真4 一方,出色なのはタコ兄の足の描写と挙動
(C) 2016 The Star Overseas Limited
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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