head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
title
 
O plus E誌 2016年11月号掲載
 
 
スター・トレック BEYOND』
(パラマウント映画/ 東和ピクチャーズ配給 )
      (C) 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月21日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開中]   2016年9月20日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  宇宙船の墜落と宇宙基地の描写が圧巻!  
  リブートが大成功を収めた新シリーズの3作目である。劇場版映画としては,通算13作目にあたる。TVドラマ・シリーズは,時代や乗組員を変えた5つのシリーズが放映されたが,『スター・トレック』(09年6月号)は,『宇宙大作戦』の邦題で放映された最初のシリーズTOS (The Original Series)の枠組を踏襲している。即ち,カーク艦長,スポック副長以下の乗組員の位置づけや時代設定は同じだが,最新CG技術でパワーアップした意欲作で,多数の新しいファンを開拓した。
 シリーズを一からやり直すリブートなら,どんな物語でもいいはずだが,何らかの物理的要因で発生してしまったパラレルワールドであり,並行して進行する時間軸上の出来事という解釈(言い訳?)がなされている。それなら,時間の前後関係も人間関係も旧シリーズとの整合性は取れてなくて良いし,都合のいい部分だけ旧シリーズを借用することもできる。このやり方で,旧シリーズで人気が高かったレナード・ニモイを,別世界からワープしてきた「老スポック」として復活させ,ザッカリー・クイント演じる「新スポック」と対面させていた。SF映画ならではのズルい妙手だ。
  『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13年9月号)はこの時間軸上の素直な続編であり,本作もしかりである。トレッキー達の間では当初「AOS (Alternate Original Series)」と呼ばれていたが,最近は「ケルヴィン・タイムライン」シリーズと公称されている。前2作を成功させた監督のJ・J・エイブラムスは一気に注目を集め,『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)の監督に大抜擢されたことは,既に何度か述べた。そのため製作時期が重なる本作では彼は製作側に回り,監督は『ワイルド・スピード』シリーズを覚醒させたジャスティン・リンが担当するところとなった。
 カーク艦長役のクリス・パイン以下,クルー役の俳優はすべて続投している。チェコフ役のアントン・イェルチンが撮影後に急逝したので,本作が遺作となった。新登場の助演陣では,異星人ジェイラ役に『キングスマン』(15年9月号)で個性的な敵役ガゼラを演じたソフィア・ブテラ,悪人クラール役に『マンデラ 自由への長い道』(13)のイドリス・エルバが配されている。老スポック役のレナード・ニモイは昨年2月に83歳で逝去しているが,劇中では「スポック大使」が亡くなった報せが若いスポックに届き,故人を偲ぶシーンが挿入されている。トレッキアンがまたも涙する心憎い演出だ。
 時代設定は2263年で,5年間の未知の深宇宙探査ミッションの3年目である。宇宙の果てで行方不明となった探査船の救出使命を受けたUSSエンタープライズ号のチームは,謎の異星人クラールが率いる無数の敵に襲われ,名もない惑星に墜落してしまう。そこで遭遇したソフィアの力を借り,カークはクラールの野望を砕くためにヨークタウン基地に向かうが……。
 なかなか評価が難しい作品だ。後述するようにビジュアルは素晴らしいが,物語としては印象に残らない映画である。悪くはないのだが,前作を超えるとは言えず,シリーズ中期の作品作りの難しさに直面している感じと言えようか。以下,当欄の視点での感想である。
 ■ オープニング・シーケンスは,ある異星人との平和交渉とその決裂シーンで,その異星人の描写が楽しい。強大で醜悪な怪獣と思わせておいて,実は体長40cm程度の小動物なのが意表をつく。クラール率いる軍の攻撃機が,虫か鳥の群れかと思うほどの多数で,その描写も出色であり,印象に残る。CG/VFXの主担当が前2作のILMから,Double Negativeに変わっている。他には,Atomic Fiction,Kelvin Optical,プレビズはProofという布陣だ。時代の流れとはいえ,少し淋しい。
 ■ 他の大きな見どころは2つあり,USSエンタープライズNCC-1701の艦内や攻撃され墜落する場面と,宇宙基地ヨークタウンのビジュアル・デザインである。前者の艦内描写は前2作より多く,随分モダンで広い空間であることが分かる(写真1)。第1船体の円盤部(写真2)がよく登場するが,その円柱状の第2船体(機関部)があり,かなり広い居住空間があるようだ。船内の様々な小物の描写も嬉しい。無数の敵機の襲撃を受けて惑星に墜落するが(写真3),それをカプセル状の脱出ポッドからクルー達が眺めるシーンは特に印象深い(写真4)
 
 
 
 
 
 
 
写真1 船内には様々な最新情報機器も登場する
 
 
 
 
 
写真2 USSエンタープライズ号の美しい外観
 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 無数の小型敵機に襲われ,エンタープライズ号が墜落
 
 
 
 
 
 
写真4 脱出ポッドの窓から墜落シーンを見守る
 
 
  ■ 宇宙での補給場所であり,都市機能ももつヨークタウン基地のビジュアルが素晴らしい。写真5はさほどでもないが,曲面や空間を自在に使った配置が圧巻だ。他作品での既視感はあるが,これまでに見たどの未来都市よりも斬新である。エンタープライズが墜落する岩場の惑星の描写が凡庸なだけに,その差が際立っている。終盤,この都市が攻撃対象となる(写真6)。都市景観をバックにしたカークとクラールの闘いは,勿論VFX合成の産物だが,そのデザインに拍手しておこう。
 
  ()
 
 
 
 
 
 
写真5 宇宙基地ヨークタウンのビジュアルは圧巻!
 
 
 
 
 
 
 
写真6 終盤のヨークタウン襲撃はVFXのオンパレード
(C) 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc.
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next