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O plus E誌 2015年11月号掲載
 
 
PAN〜ネバーランド,夢のはじまり〜』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月31日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2015年9月17日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  名作アニメの前日譚で,CGも美術班も頑張っている  
  原題は単なる『Pan』である。これだけで何の映画か分かる人は,まずいないだろう。副題中の「ネバーランド」を見て,ようやく,これはあの「ピーター・パン」の映画だと気付く人も,アニメ好きかミュージカル好きに限られるようだ。日本語では「ピーターパン」と書かれることも少なくないため,主人公の少年の姓が「パン」だと認識されていないみたいだ。
 実写映画である。当欄で取り上げる以上,CG/VFXを多用したファンタジー映画であることは言うまでもない。ファンタジー性でも,ビジュアル面の出来映えでも,最近の映画水準を十分にクリアした作品だと思うのだが,一緒に試写を観ていた記者や評論家連中の評判は余り芳しくなかった。その大半の感想は,「ピーター・パン映画としては,余りにも印象が違う」「流行に乗って,初めて実写化するからには,原作アニメにも忠実であって欲しかった」である。おいおい,一般観客でなく,映画評論家や映画欄担当記者なら,もう少し背景や過去の作品くらい覚えておけよと言いたくなった。
 1953年作のディズニー・アニメが余りにも有名かつ印象深いため,それが原典と思っている人が少なくない。この少年キャラクターを生み出したのは,スコットランドの作家ジェームス・M・バリーで,戯曲「ピーター・パンあるいは大人になりたがらない少年」の舞台初演が1904年であったことは,既に何度か書いた。その100周年記念の前後に何本かの映画が作られたが,当欄ではそのすべてをメイン欄記事で紹介している。即ち,ディズニー・アニメの続編『ピーター・パン2/ネバーランドの秘密』(03年1月号), VFX多用の実写映画『ピーター・パン』(04年4月号),ジョニー・デップが原作者を演じた誕生秘話『ネバーランド』(05年1月号)の3本である。いま読み返せば,いずれも少し無理をしながらCG/VFXの出来映えを論じている。
 という訳で,本作は初の実写映画化作品ではなく,既に2004年に登場している(さらに昔1924年にサイレント映画もあったようだ)。その二番煎じでもなく,副題中に「はじまり」とあるように,過去の作品の前日譚を描いたオリジナル脚本である。本作の前半では,孤児院育ちの少年のピーターはまだ空を飛べないし,ウェンディも登場しない。何とフック船長(ギャレット・ヘドランド)は悪役キャラではなく,ピーターに好意的な仲間であり,インディアンのタイガー・リリー(ルーニー・マーラ)はかなりの美女で,この2人が恋をする。確かに,従来作品とは登場人物のイメージが違う。
 監督は,『つぐない』(08年4月号)のジョー・ライト。筆者のお気に入り監督の1人だ。他の出演者では,海賊黒ひげを演じるヒュー・ジャックマンの存在感が大きかった。『チャッピー』(15年6月号)に続いての悪役だが,なかなかよく似合う。俳優としての格が違うので,オーディションで選ばれたピーター役の新人リーヴァイ・ミラーよりも,勿論先にクレジットされている。
 以下は,CG/VFXを中心とした見どころである。
 ■ ピーター・パンの着衣と言えば,緑一色,もしくは黄緑色と緑色のツートンカラーの服と帽子だが,本作のピーターはまだそのような服装は身に付けていない。ディズニー・アニメで印象が強いのは,空飛ぶ海賊船とティンカー・ベルのデザインだが,本作ではCGでそのイメージ通りに描いていた。とりわけ,海賊船は頻出し(写真1),時には何隻もが空を航行する(写真2)。いい出来だ。ティンカー・ベルがふりまく妖精の粉も,CGならではの表現力をいかんなく発揮していた。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 何度も登場する空飛ぶ海賊船。好い出来だ。
 
 
 
 
 
写真2 時には,同時に何隻もが空に舞う
 
 
  ■ 第2次世界大戦下の夜のロンドンもネバーランドも,しっかりCG/VFXで描かれている。ネバーランドは,岩,崖,洞窟など,CG映像がかなりのウェイトを占める。先住民の集落は実物大セットだが,カラフルでデザイン的にも素晴らしい(写真3)。この集落を空中から捉えたシーンが秀逸だ。全編で縦方向のカメラ移動が多く,3D効果の演出がうまい。とりわけ,終盤20分の攻防は迫力があり,この映画は3Dで観るべきだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 ネバーランドの先住民集落。美術班も大活躍。
(C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
 
 
  ■ 前日譚の全く知らない物語だが,先住民に加えて,ロスト・ボーイ,ワニ,人魚等,アニメでお馴染みのキャラも登場させている。ワニや人魚もCGならではの産物だが,その出来映えも上々だった。CG/VFXの主担当はSkyline VFXだが,こうした大作では珍しい。大手のFramestore, MPCを従えての主担当を引き受けるとは,最近,会社としての評価が急速に上がっているのだろう。他には,Rising Sun Pictures, Wolf & Crowが参加し,プレビズはProof社が担当していた。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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