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O plus E誌 2003年1月号掲載
 
 
『ピーター・パン2/ネバーランドの秘密』
(ウォルト・ディズニー映画/ブエナビスタ配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2002年11月19日 ブエナビスタ試写室  
  [12月21日より全国東宝洋画系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ネバーランドは徹底した復古調のアニメで再現  
   こちらは,ハンニバル・レクター博士を知らない大人も子供も,誰でもが知っている世界的超有名キャラクター,大人にならない永遠の少年「ピーター・パン」が再登場する続編だ。子供時代に観た名作を一世代か二世代あとに再公開して,親子同伴での来場を狙うのは,ディズニー・アニメが確立した他の追随を許さないビジネス・モデルだが,こうした続編もまた,前作のビデオ販売を促進する上手い商売である。
 それにしても,なぜ今1953年製作の『ピ−ター・パン』の続編なのかと思ったら,原作者のジェームス・M・バリーが小説『白い小鳥』の中で「ピーター・パン」というキャラクターを登場させたのが,100年前の1902年だからだという。なるほど100周年記念にかこつけたわけだ。
 時代は第2次世界大戦下のロンドン。ピーター・パンたちと夢の島ネバーランドで冒険を体験した少女ウェンディも,今では大人に成長し,2人の子供の母親になっている。毎夜語り聞かせるのはネバーランドでの素晴らしい冒険の物語だが,戦争という厳しい現実の中で夢見る心を忘れた娘ジェーンは,ピーター・パンや妖精ティンカー・ベルの存在を信じようとしない。そんなある夜のこと,海賊フック船長がウェンディと間違えてジェーンをネバーランドに連れ去ってしまったことから,ネバーランドの運命が……。という設定である。
 もとより大人がストーリーを楽しむ映画ではないが,特筆すべきは,誰もが覚えているかつてのディズニー・アニメのタッチを徹底的に再現したことである。ピーター・パンもティンカー・ベルもフック船長もロスト・ボーイズたちも,昔見たあの懐かしいキャラクターそのままで登場する(写真1)。
 最近はセル調アニメといえども,3D-CGで原型を作り,それを意図的にセル・タッチの2Dキャラクターに描き直している。したがって,キャラクターは2Dっぽくても,背景は3D-CGならではのパースを効かせた構図であったり,さまざまなディジタル効果が加わっている。Disney Feature Animationは,ピクサー社と組むことによりキャラの動きやカメラワークでも,従来のキーフレーム・アニメーションでは描けなかった技法をディジタル技術で手に入れた。『ライオン・キング』あたりからその傾向が顕著になり,『ターザン』で一まず完成の域に達したことは,この映画時評で何度も述べた。
 ところが,この映画は違う。主たるキャラが昔の姿のままなら,その動きもまたかつてのキーフレーム・アニメの味を残している。これは,エンドクレジットにInbetween Animatorsという呼称で何人もの名前があったことからも分かる。これは,この映画の意図的なメッセージだろう。一方,冒頭の空の雲やロンドンの街並みは最新の3D-CGベースの見事な出来栄えで,1作目との違いを際立たせている(写真2)。それに対して,ジェーンがネバーランドに到着した頃から,背景までが徹底した復古調の単純なアニメになる。永遠に年を取らないのがネバーランドだという意味が込められているのだろう。また,昔のアニメの味など出そうと思えばいつでも出せるぞという,現代のアニメーター達の矜持が聞こえてくるような気がする。
     
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写真1 キャラクターのタッチも宿敵関係も前作を忠実に再現
(c)DISNEY Enterprises, Inc.
写真2 3D-CGで表現されたロンドンのシーン。カメラが移動すると,ロンドンの街並みが素晴らしい。
 
     
  子供にもちょっと淡泊すぎる  
 
いやー,懐かしいですね。子供の頃映画館で観た光景が,今でも目の当たりに甦って来ますね。ウェンディが窓の外を眺めているシーン,海賊船が空を飛んでいるシーン,フック船長がワニに追われているシーン……。
へぇー,1953年の公開時に劇場で観たんですか?
計算すると小学1年生だから変ですね。日本公開は少し後だったのかもしれません。でも,夢のあるとても印象的な映画だったことは覚えています。
私は多分テレビが最初で,その後ビデオを買って何度も観たのです。改めてもう一度見直しましたが,やぱり旧作の方がアニメらしくて面白いですよ。
こんな時代にも子供は夢を持ち続けようというメッセージは理解できますが,今回は物語がちょっと淡泊すぎましたかね。音楽も,復古調なのか現代風なのか,中途半端でイマイチでした。
1時間14分は短すぎるし,これじゃ子供でも物足りないです。そのうち盛り上がるだろうと思っていると終わってしまいました(笑)。
『ハリー・ポッター』が長すぎるので,それに耐えられない子供たちに配慮したんじゃないですか(笑)。
ハハハ,ディズニーらしい気配りですね。物語はつまらなくても,懐かしいキャラクターに再会できたのは嬉しくなりました。ホント,そっくりでしたね。
ネバーランドの部分も,絵のタッチは2Dアニメでも,視点移動による構図の変化はやはり3D-CGがベースだと感じるところがありました。昔のように,多層のセル画に向けて物理的にカメラを動かすだけでは,ああはなりませんから。
そんなの気にして見ている人はいませんよ(笑)。懐かしい反面,ロンドンの町,ウェンディの家のポーチ,空飛ぶ船など,最近の画風の方がキレイで,やはり技術の進歩もいいもんだなと感じました。
同じディズニー・アニメでも,最新作『リロ・アンド・スティッチ』の新しいキャラクター,スティッチの評判がいいようです。面白さと現代風味付けはそちらに期待しましょうか。
 
   
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