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O plus E誌 2005年1月号掲載
 
 
ネバーランド
(ミラマックス・フィルムズ/ 東芝エンタテインメント配給 )
 
         
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2004年11月30日 東宝試写室(大阪)
 
  [1月15日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ピーターパン生誕の裏話は,ちょっと泣かせる物語  
   2004年は舞台劇「ピーター・パン」初演から百周年記念に当たることは,実写版『ピーター・パン』(04年4月号)の時に書いた。こちらは,劇作家ジェイムズ・マシュー・バリが「ピーター・パン」を生み出す舞台裏を描いたドラマだ。「ロミオとジュリエット」執筆夜話に当たる『恋におちたシェイクスピア』(98)の2匹目の泥鰌を狙った企画と言えようか。11月12日にわずか8館で限定公開され,徐々に上映館数を増やして行くというのは,いかにもアカデミー賞狙いの戦術だが,映画そのものに嫌みはなく,イギリス映画らしく淡々としたタッチの素直な好い映画に仕上がっている。
 監督は,ハル・ベリーをオスカー女優に就かせた『チョコレート』(01)のマーク・フォースター監督。スコットランド訛りの作家ジェイムズ・バリを演じるのは人気俳優のジョニー・デップ。『ブロウ』(01)や『パイレーツ・オブ・カリビアン』(03)とは打って変わったノーブルな2枚目役で,またファン層を拡げることだろう。4人の男児を抱える寡婦のシルヴィアには,『タイタニック』(97)のケイト・ウィンスレット。彼女の映画を観るのは久々だが,母親役が似合う年頃になった。ピーター・パンのモデルとなる三男のピーターには,『トゥー・ブラザース』(04)での演技が印象深かったフレディ・ハイモアというキャスティングだ。興行主役で名優ダスティン・ホフマンも久々に顔を出している。
 前作の興行成績が不振でスランプに陥ったバリは,公演で知り合った4人兄弟との交際の中から新しい物語の着想を得ようと没頭するあまり,世間の目も気にしない。やがて傷ついた妻メアリーは去って行く。病身のシルヴィアとのプラトニックな恋,少年ピーターに信じることを大切さを知らせる心の交流等々,本欄がこの感動の物語を語っても野暮になるだけから止めておこう。
 VFX担当は,FX Cartelと筆者のお気に入りのDouble Negativeで,主として20世紀初頭の町の様子の合成を担当しているが,幻想的なネバーランドの描写も意欲的だった。特筆すべきは,エンディングの視覚効果(写真3)だ。表題欄のポスター用カットは別テイクだろうが,
 
     
 
写真1 カメラを引きながら人物をフェードアウトして行くエンディングはVFXならではの演出  
 
     
   本編中ではカメラを引いてかつ軽くパンしながら人物のフェードアウトを演出している。多重露光でなく,ディジタル合成ゆえのVFXだ。さほど高度な技術ではないが,こういう余韻の残るシーンでの効果的な利用を観ると嬉しくなってしまった。
 ところで,筆者は昨年関西在住となって以来,主として各配給会社の大阪(関西)支社の試写室に通っている。東京の「おすぎ」に対して,関西ではタレントの浜村淳氏としばしば同席するが,試写室の主役の感がある。上映前後も賑やかで華やかな存在だが,この日この映画が終った時,同氏はずっと無言だった。気のせいか,目が少し潤んでいたように見えた。 
 
          
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