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O plus E誌 2014年5月号掲載
 
 
ミスターGO!』
(ギャガ配給)
      (C) 2013 SHOWBOX / MEDIAPLEX AND DEXTER FILMS
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [5月24日よりシネマライズ他全国ロードショー公開予定]   2014年3月20日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  CG製のゴリラ選手が活躍する異色の野球映画  
   表題欄のメイン画像を観ただけで,ゴリラが野球選手として活躍する映画だと分かる。GOはこのゴリラの愛称で,選手登録名なんだなというところまで読み取れる。ハリウッド映画で野球を題材にした作品は多数あり,名作では『フィールド・オブ・ドリームス』(89),最近作では『マネーボール』(11年11月号)や『42〜世界を変えた男〜』(13年11月号)が記憶に新しい。フィクションのコメディでは『がんばれ!ベアーズ』(76)や『メジャーリーグ』(89)がヒットして,シリーズ化されている。チーム名やマスコットに動物は多いのに,動物が選手として登場した映画は,洋画でも邦画でも思い出せない。最近のVFX技術の進歩からすれば,どんな動物やエイリアンでも登場させられるから,選手不足のMLBもついにその決断をしたという設定なのかと想像した。ところが,本作はハリウッド製ではなく,韓国製だった。確かに,韓国も野球大国の1つだ。
 映画に限定せず,対象をコミックにまで拡げれば,筆者の世代は,クマが登場していた「スポーツマン金太郎」を思い出す。野球漫画の金字塔と言えば,「巨人の星」(原作:梶原一騎,作画:川崎のぼる,1966年連載開始)だが,同作はそれより古く,1959年の週刊少年サンデー創刊号から5年間に渡って連載されたスポーツ漫画の名作である。作者の寺田ヒロオは,藤子不二雄,つのだじろう,石ノ森章太郎,赤塚不二夫らを生み出した伝説の「トキワ荘」での兄貴分で,人気漫画家だった。たしか,野球少年の金太郎と桃太郎が巨人と西鉄ライオンズに別れて入団し,活躍する物語で,剛速球投手の金太郎の球を受けられる専用捕手として,足柄山から連れてきたクマが起用されていた。打席に立っては,ほのぼのとした味のある強打者であったと記憶している。
 前置きが長くなったが,本作を観て,すぐにこのクマ選手を思い出した次第だ。韓国球界のお荷物球団「ベアーズ」は,成績不振を打開するため,サーカス出身のゴリラ選手を大物新人として登場させるという設定である。チーム名からすると,ここでも「クマ」を起用して欲しかったところだが,それではリアリティがなさ過ぎるので,類人猿で強打者らしいゴリラにしたのだろう。他の動物は登場しない。GO選手の余りの大活躍振りに,ライバル球団が,同じくゴリラの剛速球投手ZEROSを登板させるだけである。GOが心優しきローランドゴリラであるのに対して,ZEROSは粗暴なマウンテンゴリラであるという違いくらいだ。異色選手の登場による騒動はほぼ予想通りだが,日本の巨人や中日が実名で登場し,彼の獲得合戦を繰り広げるというのが面白い。
 監督は,『カンナさん大成功です!』(06)のキム・ヨンファ監督。ゴリラ使いの少女ウェイウェイを演じるのは,シュー・チャオ。演技派だが,さして可愛くないなと思ったら,『ミラクル7号』(08年6月号)でチャウ・シンチーの息子役を演じた少女だった(写真1)。なるほど,演技派の彼女がこんなに大きくなったんだ。
 
 
 
 
 
写真1 あの時の男の子がすっかり大きくなり,今度は少女役で
 
 
  さて,当欄のお目当てであるCG/VFXはと言えば,勿論GOとZEROSはフルCGで描かれている。たった2匹で種類は少ないが,その登場シーンはほぼ全編であり,かなりのカット数に及ぶ。体毛の処理などはよくできていて,これは着ぐるみかと思わせるシーンもある(写真2)。全身が露出するシーンには,毛並みや動きに少し不自然さはあるが,ユニホーム姿の方が出来はいい。
 球場内のスタンドや大観衆もまたVFX処理の産物だ(写真3)(写真4)。Double Negativeが担当した『ラッシュ/プライドと友情』(14年2月号)の同種のシーンと比べても引けはとらない出来映えだ。スタジアムの屋根に陣取ったGOが飛来したヘリと絡むシーン,屋根の上を疾走するシーンも良く出来ている(写真5)。スパイダーカムが縦横無尽に活用されていて,躍動感がある。
 
 
 
 
 
写真2 CG製ゴリラの体毛はこれだけの本数で表現
 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 大観衆やスタンド自体のVFX加工も水準以上だ(下が完成映像)
 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 彼女を担ぎ上げる場合は,こうやって代役が介在している(下が完成映像)
 
 
 
 
 
写真5 飛来するヘリも勿論CGだが,演出は上手い
(C) 2013 SHOWBOX / MEDIAPLEX AND DEXTER FILMS ALL RIGHTS RESERVED.
 
 
   CG/VFXの担当は韓国のDexter Digitalで,インターネット上では既にVFXのメイキングビデオが公開されている。かなりの自信作である証拠だ。『キング・コング』(06年1月号) が8年も前に製作されていたことを考えると,技術的には驚くに値しないが,韓国のVFXスタジオがこのレベルに達したことを評価しておきたい。日本映画界はといえば,技術以前にこれだけの投資をする決断をしなかったことだろう。
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分を入替・追加しています)  
   
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